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朽木の当主からの直々の勅命を漸くこなし、数日ぶりに帰還した家で恋次はおかしな光景を見た。
「・・・何やってんだ、お前」
そこに居たのは不貞腐れた飼い猫のように尻尾を膨らませびたんびたんと床に叩きつける豹系の魔獣。
ヴーヴーと不機嫌に喉を鳴らす様子から、誇り高き魔獣のプライドは見受けられずひっそりと眉根を寄せた。
そもそも彼が不機嫌にいる場所が場所だ。
何ゆえルキアの部屋の前で扉に向かい不機嫌に唸っているのか。
不機嫌な声を出し続ける一護の脇に手を差し込むと、ひょいと体を抱き上げる。
だらんと伸びた体は意外と長く、恋次の視線の高さに持ち上げても尻尾は床を叩いていた。
悔しげに眉を顰めた一護からはそれでも抵抗はない。普段ならとっくに噛まれてるだろうにと首を傾げながらドアノブに手を掛けると。
「っ!?いてぇ!!」
手が触れたと思った瞬間、ばちり、と弾かれた。
電流が走ったような衝撃に掌を見ると、軽く火傷が出来ている。
恋次は訝しげに眉を顰めた。
彼が回復の魔法を会得できないと理解しつつ、ルキアがこんな攻撃的な術を張るだろうか。
意識を切り替えて見てみると、ルキアの部屋を囲むように精巧な結界が出来ていて、対象者には容赦なく電撃を流す仕組み。
静電気をもっと強力にしたものだと考えればいい。
「・・・お前、何したんだ」
眉間に皺を刻み、腕の中で猫化している魔獣を睨む。
「ヴにャぁ」
不細工な声でないた一護に、恋次は気づいた。気づいてしまった。
彼は好きで魔獣の姿でいるのではないことに。
意識を切り替えてみれば幾重にも巻かれる呪縛の力。
魔力を削り、言葉を奪い、動きを制限し、さらに呪縛の力を隠すそれらを器用に組み立ててある。
そんな複雑な魔法を作れる相手は、恋次は一人しか知らない。
「浦原さんか」
「おやおやぁ、気づくのが随分と遅かったっすねぇ阿散井さん。気が緩んでるんじゃないんですか?」
唐突に背後に気配が生まれ一護の毛が逆立つ。
一つため息を吐き振り返ると、私服の遠い異国の服ではなく見慣れた執事服姿の浦原が紅茶のセットを押していた。
カップの数を数えて首を傾げる。
二つ並んだ繊細なそれは、人間国宝と呼ばれるものが作り出した高級品。
ルキアが好んで使うものとは違い来客専用のものだと恋次は知っていた。
「客か?」
「はい。お嬢様の賓客であり、朽木家のもてなす相手であります」
「・・・珍しいな、ルキアが部屋に入れるなんて」
社交はこなすが人見知りが激しいルキアの自室に呼ばれるのは、彼女の兄や勤め先の上司である貴族、そして豪快な彼の契約魔獣。
例外的に動物と認知された生き物の中に、恋次の先輩の姿もあるが、次はないので除外する。
だが思い浮かべた人物の中に、結界を張らなくてはいけない相手は存在しなく、不思議そうに首を傾げると、珍しく判りやすくも嘲笑に似た表情を浮かべた。
「躾けの最中ですよ。お嬢様はどうにも甘くなりすぎる。お嬢様へのお仕置きも兼ね、現在この部屋は魔獣立ち入り禁止区域です」
「あんたも魔獣だろ」
「それ以前に私はこの家の執事ですから。お嬢様の教育係でもありますしね」
「・・・お前何したんだよ、一護」
「お嬢様の客の前で失礼な態度を取ったんですよ。───朽木家令嬢の契約魔獣として、品格が問われます。魔獣の品格は主の品格。そのくらい、少し考えれば判るでしょうに」
漸く得心がいった。
浦原はとても静かに激怒している。
恋次の気配も、一護の気配も何もかもルキアに届かぬよう、そして人には感知できぬ精巧な力を使ってしまうほどに。
はぁ、と一つため息を吐いた。
彼の怒りの理由はとても単純で簡潔。
自分の育てる最愛のお嬢様を、他人に侮らせる切欠を作ったこと。
それが最大で唯一の怒りの理由だろう。
浦原は飄々としているがああ見えてルキアにとても手をかけている。
恋次と方法は違うし許容できない部分もあるが、厳しさも含めて彼女を特別に扱った。
おかげで今やルキアはどこに出ても恥ずかしくない令嬢であるし、彼女を養子と侮る輩も随分と減ってきた。
それは朽木の当主の力であり、浦原の力だろう。
「お前が悪い、一護」
「・・・ぶにゃ」
「浦原さんが判断したなら、ルキアにとってその相手は本当に賓客だ。お前が知らぬ、他人だったとしてもな」
「ぶにー・・・」
「俺だって巻き込まれてんだ、お前は少し反省しろ」
耳を垂れたままばしばしと尻尾を振る一護は、拗ねたように瞳孔を立てに開いた。
だがわずかばかりに漂う気まずさは、彼だって本当は判っているということなのだろう。
やれやれと首を振り、その場を後にしようとしたら、不意に後ろから声を掛けられた。
「あなたも最近緩みすぎです。お嬢さまの魔獣として恥ずかしくない礼儀作法を叩き込んで差し上げますから私の執務室で待っていなさい」
「ええ!?何で・・・」
「その結界、ノックをすれば解除できるようになってます。親しき仲にも礼儀ありと理解なさい。人の姿を取っているときは、人の礼儀を守るもんです」
長い前髪の下から目を輝かせた彼が、ぱちりと指打ちしただけで恋次も本性に強制的に戻らされる。
腕がなくなり必然的に落下する事になった一護は、身を捻り器用に着地した。
「きっちりとした作法が身につくまで、お嬢さまの前に出れないと思いなさい」
もう一度指が鳴らされると、小さな結界が張り巡らせる。
力を圧縮させ作られたそこから、恋次と一護が出るのは不可能だ。
しかも丁度ドアを開けた場所から見えない死角になっていて、彼の用意周到さに少しだけ泣きたくなった。
「失礼します、お嬢さま」
ノック四回の後、部屋の主の了承を貰った彼はポーカーフェイスで室内に消える。
開いた隙間から聞こえ漏れる主の声に、ぱたり、と力なく尻尾を振った。
「・・・何やってんだ、お前」
そこに居たのは不貞腐れた飼い猫のように尻尾を膨らませびたんびたんと床に叩きつける豹系の魔獣。
ヴーヴーと不機嫌に喉を鳴らす様子から、誇り高き魔獣のプライドは見受けられずひっそりと眉根を寄せた。
そもそも彼が不機嫌にいる場所が場所だ。
何ゆえルキアの部屋の前で扉に向かい不機嫌に唸っているのか。
不機嫌な声を出し続ける一護の脇に手を差し込むと、ひょいと体を抱き上げる。
だらんと伸びた体は意外と長く、恋次の視線の高さに持ち上げても尻尾は床を叩いていた。
悔しげに眉を顰めた一護からはそれでも抵抗はない。普段ならとっくに噛まれてるだろうにと首を傾げながらドアノブに手を掛けると。
「っ!?いてぇ!!」
手が触れたと思った瞬間、ばちり、と弾かれた。
電流が走ったような衝撃に掌を見ると、軽く火傷が出来ている。
恋次は訝しげに眉を顰めた。
彼が回復の魔法を会得できないと理解しつつ、ルキアがこんな攻撃的な術を張るだろうか。
意識を切り替えて見てみると、ルキアの部屋を囲むように精巧な結界が出来ていて、対象者には容赦なく電撃を流す仕組み。
静電気をもっと強力にしたものだと考えればいい。
「・・・お前、何したんだ」
眉間に皺を刻み、腕の中で猫化している魔獣を睨む。
「ヴにャぁ」
不細工な声でないた一護に、恋次は気づいた。気づいてしまった。
彼は好きで魔獣の姿でいるのではないことに。
意識を切り替えてみれば幾重にも巻かれる呪縛の力。
魔力を削り、言葉を奪い、動きを制限し、さらに呪縛の力を隠すそれらを器用に組み立ててある。
そんな複雑な魔法を作れる相手は、恋次は一人しか知らない。
「浦原さんか」
「おやおやぁ、気づくのが随分と遅かったっすねぇ阿散井さん。気が緩んでるんじゃないんですか?」
唐突に背後に気配が生まれ一護の毛が逆立つ。
一つため息を吐き振り返ると、私服の遠い異国の服ではなく見慣れた執事服姿の浦原が紅茶のセットを押していた。
カップの数を数えて首を傾げる。
二つ並んだ繊細なそれは、人間国宝と呼ばれるものが作り出した高級品。
ルキアが好んで使うものとは違い来客専用のものだと恋次は知っていた。
「客か?」
「はい。お嬢様の賓客であり、朽木家のもてなす相手であります」
「・・・珍しいな、ルキアが部屋に入れるなんて」
社交はこなすが人見知りが激しいルキアの自室に呼ばれるのは、彼女の兄や勤め先の上司である貴族、そして豪快な彼の契約魔獣。
例外的に動物と認知された生き物の中に、恋次の先輩の姿もあるが、次はないので除外する。
だが思い浮かべた人物の中に、結界を張らなくてはいけない相手は存在しなく、不思議そうに首を傾げると、珍しく判りやすくも嘲笑に似た表情を浮かべた。
「躾けの最中ですよ。お嬢様はどうにも甘くなりすぎる。お嬢様へのお仕置きも兼ね、現在この部屋は魔獣立ち入り禁止区域です」
「あんたも魔獣だろ」
「それ以前に私はこの家の執事ですから。お嬢様の教育係でもありますしね」
「・・・お前何したんだよ、一護」
「お嬢様の客の前で失礼な態度を取ったんですよ。───朽木家令嬢の契約魔獣として、品格が問われます。魔獣の品格は主の品格。そのくらい、少し考えれば判るでしょうに」
漸く得心がいった。
浦原はとても静かに激怒している。
恋次の気配も、一護の気配も何もかもルキアに届かぬよう、そして人には感知できぬ精巧な力を使ってしまうほどに。
はぁ、と一つため息を吐いた。
彼の怒りの理由はとても単純で簡潔。
自分の育てる最愛のお嬢様を、他人に侮らせる切欠を作ったこと。
それが最大で唯一の怒りの理由だろう。
浦原は飄々としているがああ見えてルキアにとても手をかけている。
恋次と方法は違うし許容できない部分もあるが、厳しさも含めて彼女を特別に扱った。
おかげで今やルキアはどこに出ても恥ずかしくない令嬢であるし、彼女を養子と侮る輩も随分と減ってきた。
それは朽木の当主の力であり、浦原の力だろう。
「お前が悪い、一護」
「・・・ぶにゃ」
「浦原さんが判断したなら、ルキアにとってその相手は本当に賓客だ。お前が知らぬ、他人だったとしてもな」
「ぶにー・・・」
「俺だって巻き込まれてんだ、お前は少し反省しろ」
耳を垂れたままばしばしと尻尾を振る一護は、拗ねたように瞳孔を立てに開いた。
だがわずかばかりに漂う気まずさは、彼だって本当は判っているということなのだろう。
やれやれと首を振り、その場を後にしようとしたら、不意に後ろから声を掛けられた。
「あなたも最近緩みすぎです。お嬢さまの魔獣として恥ずかしくない礼儀作法を叩き込んで差し上げますから私の執務室で待っていなさい」
「ええ!?何で・・・」
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長い前髪の下から目を輝かせた彼が、ぱちりと指打ちしただけで恋次も本性に強制的に戻らされる。
腕がなくなり必然的に落下する事になった一護は、身を捻り器用に着地した。
「きっちりとした作法が身につくまで、お嬢さまの前に出れないと思いなさい」
もう一度指が鳴らされると、小さな結界が張り巡らせる。
力を圧縮させ作られたそこから、恋次と一護が出るのは不可能だ。
しかも丁度ドアを開けた場所から見えない死角になっていて、彼の用意周到さに少しだけ泣きたくなった。
「失礼します、お嬢さま」
ノック四回の後、部屋の主の了承を貰った彼はポーカーフェイスで室内に消える。
開いた隙間から聞こえ漏れる主の声に、ぱたり、と力なく尻尾を振った。
PR
>>ぴよりん様
こんばんは、ぴよりん様w
コメントのお返事が空いてしまってごめんなさい。
それにも関わらずいつも丁寧にありがとうございますw
実はどうしてもサイト内掲載のジャンルが書けなくて、少し浮気をしておりました(苦笑)
とある別サイトで一次創作を展開し現在よぼよぼ連載中です。
地味にスランプ状態が続いてて・・・。一応次回トライアングル。ラブは未来篇更新予定でネタも決まってるんですけど、もうちょっとだけ待ってくださいね(涙)
嵐と旬平のトライアングル、読んでくださってありがとうございますw
銀魂の「そして、兔は・・・」のシリーズを読んだあとならさぞかしほのぼのして見えたと思います。
あの話、徹底的にシリアスで、人によっては死にネタありの最後までシリアスですからねぇ。
ちなみに一番人気は真選組エピでした。高杉さんや銀さんも人気があったのですが、真選組はリクエストを頂き書いた文コメントを沢山いただけました。
わんにゃんランドは私も絶対に桜井兄弟ではなく柔道部コンビと行きたいです。冷めた反応でしたよね、あの場所(涙)
犬好きとしては猛烈に悲しかったです・・・。
「ウェディングベル・・」も読んでくださってありがとうございますw
私も銀ちゃん大好きなので一番に書いたし、余裕のない土方さんも楽しんでかけました。
ですが意外にもあれは新八君が人気があり驚きでした。将来の新八かっこいいと頂き嬉しかったのを覚えてます。
丁寧に読んでくださってありがとうございますw
昨日アップのトライアングル。ラブの過去篇も読んでくださってありがとうございますw
過去捏造篇は一歩下がった琥一と、それを引っ張る二人がモットーです!
そして捏造で出してしまった母親は書いていて楽しいです。
主人公の家を知っているので絶対に一度は行ったことがあるはず・・・と私の脳内で構築されているので、いつか冬姫の家サイドも書いてみたいですw
他の創作も読んでくださってありがとうございます。
ぴよりん様からの感想、どきどきしながらも凄く楽しみなので幸せです。
元・フリーの『どこまでもそらは』はこの間までアップしていた35万打のフリー創作と対になってます。どこまでも・・・が守護者篇で、もう一つのはアルコバレーノとXANXUS、スクアーロ、ディーノの大人篇です。
どちらも書いてて楽しかったですが、やはり守護者篇の方が筆が進みましたw
GS1も受け入れてくださって嬉しいです。実はあの話の過去出会い篇を珪とまどかと和馬で書いたんですが、和馬篇以外はどこかへ消えてしまい深い失望を覚えてます。探しても見つからないんですよね・・・。
遙か1の大団円シリーズは、3の大団円シリーズ後に書いたのですけど鬼と地の白虎の対決が書いてて面白いです。3の方の番外編でも戦ってますが、彼らは相性問題で常にVS体制です。アクラムは絶対に1の主人公ちゃんとくっつくべきだとの個人的主張で、私の創作に基本2は出てきません(汗)
海賊達の姫君も近々更新予定なので頑張りたいです。
ついにワンピまで読んでくださると聞き、今からドキドキです。ワンピは禁断の女体ネタがあるので・・・っ。
気に入ってくださるといいなぁ、と思いつつまた感想をいただけたら幸いです。
あと、もしお時間ございましたら私が一次創作を展開しているアドレスをお教えするので是非遊びにいらして下さいw
http://ncode.syosetu.com/n9022m/ ですw
また是非遊びにいらして下さい!
Web拍手、ありがとうございました!
>>朝霞様
こんばんはー、朝霞様w
また足跡残してくださってありがとうございますw
私の方こそ日参しているにも関わらず、足跡残せないヘタレですみません。
トライアングル・ラブ、高校生篇まで進めてくださってありがとうごいますw
あの話を書いたのは本当にGS3の2作目だったのでキャラが掴み切れてないですけど、むはむはと萌えだけで突っ走りました(笑)
乗ってるときは妄想を膨らませ、話がさくさく進みますよねw
虎兄相手にチョップをするつわものはきっと女では主人公だけだといいです。
私はまだ今週のWJを読んでないんですよ(涙)
朝霞様の感想聞いて猛烈に読みたいのに、コンビニに行く余裕がなくて・・・。
銀魂、ぱっつぁんネタですか!?眼鏡なら彼ですよね!?うわ、凄く気になるっ!!
リボーンはエンマ君消えてしまったのですね・・・。
そちらも相当気になります。明日には、明日には絶対に今週号を読みにいきますっ!!
また是非遊びにいらしてくださいませw
Web拍手、ありがとうございました!!
>>あいみ様
こんばんは、あいみ様w
また遊びに来てくださってありがとうございます!
大海賊な彼らシリーズ、ずっと前に王女篇のリクエストを頂いたとき鯨篇もリクエストを頂いたのですが、その時にはどうしてもイメージがつかめなくて書けなかったものが今漸く形に出来ました。
多分、先回のブルックの番外編を書いて、自分の中で色々整理がついたからだと思います。
五十年越しの約束って、絶対に軽くないですね。
一つのことを思い続ける、信じ続けるのは楽じゃないです。
諦めるのは簡単で、忘れたフリは楽チンです。
でもそれを選ばなかった彼らって本当に凄いと思います。
自分の中でイメージを膨らませて書きましたが、私も本編で再会する彼らを見たいです。
きっと、絶対に感動して読みながら泣くに違いないです(苦笑)
大海賊なシリーズでエース篇を書いたときも半泣きで書きましたが、それとはまた違う意味で涙します。
その日がとでも楽しみです。
また是非遊びにいらして下さいw
Web拍手、ありがとうございました!
こんばんは、ぴよりん様w
コメントのお返事が空いてしまってごめんなさい。
それにも関わらずいつも丁寧にありがとうございますw
実はどうしてもサイト内掲載のジャンルが書けなくて、少し浮気をしておりました(苦笑)
とある別サイトで一次創作を展開し現在よぼよぼ連載中です。
地味にスランプ状態が続いてて・・・。一応次回トライアングル。ラブは未来篇更新予定でネタも決まってるんですけど、もうちょっとだけ待ってくださいね(涙)
嵐と旬平のトライアングル、読んでくださってありがとうございますw
銀魂の「そして、兔は・・・」のシリーズを読んだあとならさぞかしほのぼのして見えたと思います。
あの話、徹底的にシリアスで、人によっては死にネタありの最後までシリアスですからねぇ。
ちなみに一番人気は真選組エピでした。高杉さんや銀さんも人気があったのですが、真選組はリクエストを頂き書いた文コメントを沢山いただけました。
わんにゃんランドは私も絶対に桜井兄弟ではなく柔道部コンビと行きたいです。冷めた反応でしたよね、あの場所(涙)
犬好きとしては猛烈に悲しかったです・・・。
「ウェディングベル・・」も読んでくださってありがとうございますw
私も銀ちゃん大好きなので一番に書いたし、余裕のない土方さんも楽しんでかけました。
ですが意外にもあれは新八君が人気があり驚きでした。将来の新八かっこいいと頂き嬉しかったのを覚えてます。
丁寧に読んでくださってありがとうございますw
昨日アップのトライアングル。ラブの過去篇も読んでくださってありがとうございますw
過去捏造篇は一歩下がった琥一と、それを引っ張る二人がモットーです!
そして捏造で出してしまった母親は書いていて楽しいです。
主人公の家を知っているので絶対に一度は行ったことがあるはず・・・と私の脳内で構築されているので、いつか冬姫の家サイドも書いてみたいですw
他の創作も読んでくださってありがとうございます。
ぴよりん様からの感想、どきどきしながらも凄く楽しみなので幸せです。
元・フリーの『どこまでもそらは』はこの間までアップしていた35万打のフリー創作と対になってます。どこまでも・・・が守護者篇で、もう一つのはアルコバレーノとXANXUS、スクアーロ、ディーノの大人篇です。
どちらも書いてて楽しかったですが、やはり守護者篇の方が筆が進みましたw
GS1も受け入れてくださって嬉しいです。実はあの話の過去出会い篇を珪とまどかと和馬で書いたんですが、和馬篇以外はどこかへ消えてしまい深い失望を覚えてます。探しても見つからないんですよね・・・。
遙か1の大団円シリーズは、3の大団円シリーズ後に書いたのですけど鬼と地の白虎の対決が書いてて面白いです。3の方の番外編でも戦ってますが、彼らは相性問題で常にVS体制です。アクラムは絶対に1の主人公ちゃんとくっつくべきだとの個人的主張で、私の創作に基本2は出てきません(汗)
海賊達の姫君も近々更新予定なので頑張りたいです。
ついにワンピまで読んでくださると聞き、今からドキドキです。ワンピは禁断の女体ネタがあるので・・・っ。
気に入ってくださるといいなぁ、と思いつつまた感想をいただけたら幸いです。
あと、もしお時間ございましたら私が一次創作を展開しているアドレスをお教えするので是非遊びにいらして下さいw
http://ncode.syosetu.com/n9022m/ ですw
また是非遊びにいらして下さい!
Web拍手、ありがとうございました!
>>朝霞様
こんばんはー、朝霞様w
また足跡残してくださってありがとうございますw
私の方こそ日参しているにも関わらず、足跡残せないヘタレですみません。
トライアングル・ラブ、高校生篇まで進めてくださってありがとうごいますw
あの話を書いたのは本当にGS3の2作目だったのでキャラが掴み切れてないですけど、むはむはと萌えだけで突っ走りました(笑)
乗ってるときは妄想を膨らませ、話がさくさく進みますよねw
虎兄相手にチョップをするつわものはきっと女では主人公だけだといいです。
私はまだ今週のWJを読んでないんですよ(涙)
朝霞様の感想聞いて猛烈に読みたいのに、コンビニに行く余裕がなくて・・・。
銀魂、ぱっつぁんネタですか!?眼鏡なら彼ですよね!?うわ、凄く気になるっ!!
リボーンはエンマ君消えてしまったのですね・・・。
そちらも相当気になります。明日には、明日には絶対に今週号を読みにいきますっ!!
また是非遊びにいらしてくださいませw
Web拍手、ありがとうございました!!
>>あいみ様
こんばんは、あいみ様w
また遊びに来てくださってありがとうございます!
大海賊な彼らシリーズ、ずっと前に王女篇のリクエストを頂いたとき鯨篇もリクエストを頂いたのですが、その時にはどうしてもイメージがつかめなくて書けなかったものが今漸く形に出来ました。
多分、先回のブルックの番外編を書いて、自分の中で色々整理がついたからだと思います。
五十年越しの約束って、絶対に軽くないですね。
一つのことを思い続ける、信じ続けるのは楽じゃないです。
諦めるのは簡単で、忘れたフリは楽チンです。
でもそれを選ばなかった彼らって本当に凄いと思います。
自分の中でイメージを膨らませて書きましたが、私も本編で再会する彼らを見たいです。
きっと、絶対に感動して読みながら泣くに違いないです(苦笑)
大海賊なシリーズでエース篇を書いたときも半泣きで書きましたが、それとはまた違う意味で涙します。
その日がとでも楽しみです。
また是非遊びにいらして下さいw
Web拍手、ありがとうございました!
初めて女を家に連れて帰った。
少なくとも琥一が物心ついてから自発的に連れてきたのは初めてのはずだ。
「あらあらあらあら、まあまあまあまあ」
両頬に手を当て微かに頬を紅潮させた母親に、苦虫を噛み潰す。
琉夏と琥一の間に挟まれた冬姫は、大きな黒目がちの瞳をきょとりと彼女に向けた。
ちなみに今日の彼女の服装は白いワンピースに麦藁帽子。細い肩紐の右側に黒のリボンが縫い付けられたその装いは、以前母親に見せられた名作らしいアニメに登場した高原の少女。
琉夏は母親の変貌にこてりと首を傾げ不思議そうにしているが、彼より長い付き合いがある琥一は彼女の心が手に取るように見えた。
「何て可愛いのかしら」
ほう、と吐息混じりに呟くと冬姫の手を取り家の中へと招く。
戸惑うように二人を見た彼女に、食われないから大丈夫だと嘯けば頭を一つ殴られた。
痛む箇所を押さえ蹲っている間にとっとと彼女は拉致される。
「・・・母さんどうしたの?」
普段と些か様子の違う母親の姿に首を傾げたままの琉夏に、琥一は教えてやった。
「母さんはな、女の子が欲しいんだ」
それも、冬姫みたいないかにも可愛らしい女の子が。
うんざりと呟けば、琉夏もそう言えばと相槌を打った。
「母さん、可愛い子が好きだもんね」
「・・・ああ」
言葉を交わしながら慣れた様子で靴を脱ぐとそのままリビングへと入る。
絨毯の敷かれた床の上でクッションに座る冬姫は、行儀良く姿勢を正し正座していた。
その姿に蕩けるような微笑みを浮かべた母親は、お盆片手にすぐさま奥続きになっているキッチンから顔を覗かす。
今日友人を連れて行くのは告げていたので、きっちりと三人分用意されたケーキと四人分のコップにオレンジジュース。
勘のいい琥一は気づいてしまった。
この母親が自分たちに混じる気満々であるのに。
嫌そうな顔をしている琥一に気づかないはずないのに、さっさと冬姫の隣にと腰掛けた彼女は琉夏と琥一も座らせた。
そしていただきますと手を合わせケーキを口に運んだ冬姫に、爆弾を投下した。
「それで冬姫ちゃんはどっちが好きなの?」
飲んでいたオレンジジュースを思い切りよく噴出すと、隣にいた琉夏が嫌そうに眉を顰める。
それでも差し出されたティッシュで口元を拭うと、布巾で机を拭いた。
「どっちが?」
「そうよ。琥一と琉夏、どっちが好き?」
「・・・二人とも大好きです」
幾度か目を瞬きした冬姫は、当然の如くそう告げる。
それに内心で盛大に胸を撫で下ろした琥一は、隣に座る弟が少しも取り乱していないのに驚いた。
彼女に対し人並みはずれた独占欲を有する彼なら、絶対に自分を好きだろうと主張するかと思ったのに。
困ったように眉を下げた母親は、さらに追撃の手を進めた。
「んー・・・そういう意味じゃなくてね。どちらのお嫁さんになりたいの?っていう意味よ」
先程より噛み砕いたつもりらしい母親の言葉に、琥一は顔を赤く染めた。
怒りと羞恥が理由だが、口を挟むことも出来ないのは、彼女がどう応えるか気になったからだ。
息を詰めて待っていると、琉夏を見て、それから琥一を見た冬姫は、ふわりと満面の笑みを浮かべる。
愛くるしい笑顔にぼうっと見惚れると、母親が笑ったのが視界の端に映り慌てて顔を逸らした。
「冬姫は俺のお嫁さんになるんだ。ね、冬姫」
「うん」
「あら。琥一の負けか。やっぱりね」
断言した琉夏と冬姫、そして母親の言葉に密かに傷つきながら唇を噛み締める。
だがそれも長く続かなかった。
「それでコウくんとも結婚するの」
「俺たち三人でずっと一緒なんだ」
「・・・・・・あらあら」
驚きと喜びで息が詰まり思わず顔を上げるとこちらを見ていた二人と目が合う。
嬉しそうに笑う彼らに嘘はなく、胸に暖かな想いがこみ上げた。
だから。
「ね、コウくん」
「ずっと一緒だよな」
「・・・ああ」
照れくささを押さえ込み、何とかかんとか返事をする。
また顔が熱くなり赤面してるのが判るが、止められないから仕方ない。
思わず微笑んでしまいたくなる可愛らしい風景を見ながら、彼らの母親は苦笑した。
「これは将来苦労するわね」
息子は二人。彼女は一人。
子供である今は折り合いがつけれても、大人になれば違うだろう。
だがそれでも、今はこのままでいいのかもしれない。
初めて見せる穏やかで優しげな表情を少女に向ける息子達に、こうして大人になっていくのねと彼女は少しだけ感傷的に思った。
少なくとも琥一が物心ついてから自発的に連れてきたのは初めてのはずだ。
「あらあらあらあら、まあまあまあまあ」
両頬に手を当て微かに頬を紅潮させた母親に、苦虫を噛み潰す。
琉夏と琥一の間に挟まれた冬姫は、大きな黒目がちの瞳をきょとりと彼女に向けた。
ちなみに今日の彼女の服装は白いワンピースに麦藁帽子。細い肩紐の右側に黒のリボンが縫い付けられたその装いは、以前母親に見せられた名作らしいアニメに登場した高原の少女。
琉夏は母親の変貌にこてりと首を傾げ不思議そうにしているが、彼より長い付き合いがある琥一は彼女の心が手に取るように見えた。
「何て可愛いのかしら」
ほう、と吐息混じりに呟くと冬姫の手を取り家の中へと招く。
戸惑うように二人を見た彼女に、食われないから大丈夫だと嘯けば頭を一つ殴られた。
痛む箇所を押さえ蹲っている間にとっとと彼女は拉致される。
「・・・母さんどうしたの?」
普段と些か様子の違う母親の姿に首を傾げたままの琉夏に、琥一は教えてやった。
「母さんはな、女の子が欲しいんだ」
それも、冬姫みたいないかにも可愛らしい女の子が。
うんざりと呟けば、琉夏もそう言えばと相槌を打った。
「母さん、可愛い子が好きだもんね」
「・・・ああ」
言葉を交わしながら慣れた様子で靴を脱ぐとそのままリビングへと入る。
絨毯の敷かれた床の上でクッションに座る冬姫は、行儀良く姿勢を正し正座していた。
その姿に蕩けるような微笑みを浮かべた母親は、お盆片手にすぐさま奥続きになっているキッチンから顔を覗かす。
今日友人を連れて行くのは告げていたので、きっちりと三人分用意されたケーキと四人分のコップにオレンジジュース。
勘のいい琥一は気づいてしまった。
この母親が自分たちに混じる気満々であるのに。
嫌そうな顔をしている琥一に気づかないはずないのに、さっさと冬姫の隣にと腰掛けた彼女は琉夏と琥一も座らせた。
そしていただきますと手を合わせケーキを口に運んだ冬姫に、爆弾を投下した。
「それで冬姫ちゃんはどっちが好きなの?」
飲んでいたオレンジジュースを思い切りよく噴出すと、隣にいた琉夏が嫌そうに眉を顰める。
それでも差し出されたティッシュで口元を拭うと、布巾で机を拭いた。
「どっちが?」
「そうよ。琥一と琉夏、どっちが好き?」
「・・・二人とも大好きです」
幾度か目を瞬きした冬姫は、当然の如くそう告げる。
それに内心で盛大に胸を撫で下ろした琥一は、隣に座る弟が少しも取り乱していないのに驚いた。
彼女に対し人並みはずれた独占欲を有する彼なら、絶対に自分を好きだろうと主張するかと思ったのに。
困ったように眉を下げた母親は、さらに追撃の手を進めた。
「んー・・・そういう意味じゃなくてね。どちらのお嫁さんになりたいの?っていう意味よ」
先程より噛み砕いたつもりらしい母親の言葉に、琥一は顔を赤く染めた。
怒りと羞恥が理由だが、口を挟むことも出来ないのは、彼女がどう応えるか気になったからだ。
息を詰めて待っていると、琉夏を見て、それから琥一を見た冬姫は、ふわりと満面の笑みを浮かべる。
愛くるしい笑顔にぼうっと見惚れると、母親が笑ったのが視界の端に映り慌てて顔を逸らした。
「冬姫は俺のお嫁さんになるんだ。ね、冬姫」
「うん」
「あら。琥一の負けか。やっぱりね」
断言した琉夏と冬姫、そして母親の言葉に密かに傷つきながら唇を噛み締める。
だがそれも長く続かなかった。
「それでコウくんとも結婚するの」
「俺たち三人でずっと一緒なんだ」
「・・・・・・あらあら」
驚きと喜びで息が詰まり思わず顔を上げるとこちらを見ていた二人と目が合う。
嬉しそうに笑う彼らに嘘はなく、胸に暖かな想いがこみ上げた。
だから。
「ね、コウくん」
「ずっと一緒だよな」
「・・・ああ」
照れくささを押さえ込み、何とかかんとか返事をする。
また顔が熱くなり赤面してるのが判るが、止められないから仕方ない。
思わず微笑んでしまいたくなる可愛らしい風景を見ながら、彼らの母親は苦笑した。
「これは将来苦労するわね」
息子は二人。彼女は一人。
子供である今は折り合いがつけれても、大人になれば違うだろう。
だがそれでも、今はこのままでいいのかもしれない。
初めて見せる穏やかで優しげな表情を少女に向ける息子達に、こうして大人になっていくのねと彼女は少しだけ感傷的に思った。
*ルフィたちが海賊王になった後の設定です。
海賊王。
そう呼ばれる男が率いる海賊団にはずば抜けた金額を持つ賞金首の幹部たちが勢ぞろいしている。
個性的で、強くて、勇敢で、信念を持っている。
誰もかもが一級品の腕を持ち、若くして名声と富を手に入れた。
最弱の海と世界でも名高い東の海。
そこから偉大なる海に入る航路の一つに、彼らはひっそりと住んでいた。否、ひっそりというにはその存在はあまりに堂々としすぎていたが。
海に聳え立つ山と間違える巨体を揺らす鯨に、双子岬の灯台守であり医者の肩書きを持つ老人は瞳を細めた。鯨を見るその眼差しは慈しみに溢れており、気の合う友人を見詰めるそれだ。
彼らの付き合いは軽く五十年を超え、その長き時間を共有してきた。
だからこそ彼には判った。鯨が普段よりも浮き足立ち、偉大なる航路をじっと大きな瞳で見詰めていたのに。
「どうしたラブーン?」
そわそわと体を揺らし、世界を別つ『赤い土の大陸』に一心に意識を集中する。何かを待つように静かに霧で途切れた先を見詰める彼に、クロッカスは眉を顰めた。
嘗てのラブーンはこの壁を憎むあまりに頭を打ち付けるという悪癖を有していた。幾度も幾度も自身の体を痛めつけながら体当たりする様は痛々しく、そして同時に腹立たしかった。
だがここ数年でその悪癖はなりを顰め、近くの海で遊ぶ術すら覚えたのに、一体何があるのだろうか。
訝しげに首を傾げると、ラブーンがゆっくりと口を開いた。
「ブオオオオオオオオオっ」
久しぶりに聞く雄たけび。彼の声に波は揺れ、灯台へと海水が押し寄せる。
激しいそれにまた発作が起こったのかと慌てて鎮痛剤を探しに走ろうとしたところでもう一度声が響く。
「クオオオオオオオオぅっ、クオオオっ」
彼は歌っていた。大きな体を左右に揺らし、喜びに瞳を輝かせ、鯨の歌を歌っていた。
嘗て聞いた悲痛な声ではなく、彼がまだ子鯨だった頃良く聞いた泣き声は、クロッカスに唐突に気づかせた。
「来たのか、ラブーン」
「クオオぅ、ブオオオオっ」
波が高くなり海水が灯台まで押し寄せる。建物に縄で自分の体を結ぶと、偉大な航路へと身を乗り出した。
波飛沫は掛かるし海に飲み込まれればひとたまりもない。それでもそうせずに居られなかった。
初めに見えたのは太陽みたいなマーク。よくよく見てみると顔があり、間の抜けた動物みたいに見えた。全体的な船のイメージも大きさも全く違ったが、クロッカスにはそれが誰の船か良く判った。
彼の掲げる海賊旗は髑髏に麦わら。
それは鯨の顔に描かれた歪なものと同じだった。
「おーいっ!ラブーン!!」
船のマストに腕をぐるぐる巻きにし、少し精悍になった顔を笑顔で染め上げた彼は新聞を賑わせる常連であり、クロッカスにも見覚えがあるものだ。
あの日と同じ真っ赤なベストにデニムのハーフパンツ。そして首に下げる麦藁帽子。よく通る声は波の音にも負けず、真っ直ぐに耳に入り込む。
「帰ってきたぞー!お前との約束、果たしに来たぞ!」
「ブオオオオオオゥ」
一層高い声でラブーンが鳴く。彼が歌うは喜びの歌、歓喜で掠れる幸せの歌。
麦藁帽子に髑髏の旗印。それは海賊の中の海賊、現・海賊王が掲げる海賊旗。
彼はラブーンとの約束を守り帰ってきた。数十年前に彼を捨てた海賊と違い、ラブーンとの約束を果たしたのだ。
喜ぶラブーンの上に飛び乗ると、あの日と欠片も変わらぬ太陽を具現化した笑顔で盛大に笑う。
胡坐を掻いた彼を落とさぬように、ラブーンは幾度も海を回った。
暫く遊んでいる彼らを置き、船が灯台へと寄せられる。
「よ、じいさん」
「久しぶりだな。まだ生きてたか」
「ちょっとゾロ!───元気そうで良かったわ、クロッカスさん」
「またエレファント・ホンマグロ調理してやるよ、じじい」
世界一周を成し遂げた無謀な若者たちは、苦難を乗り越えたものだけが持ちえる自信と力を身につけていた。その感覚が懐かしく瞳を細める。嘗てのクロッカスも、世界を旅した日があった。
鼻の長い青年はバンダナを巻いた髪を揺らし笑いかけ、不機嫌そうに見える剣士はぶっきらぼうに声を掛ける。その彼の頭を叩いたオレンジ髪のキュートな美女は取り成すように微笑み、彼女の後ろから現れた金髪は咥えタバコでにかりと笑う。
船から下りてきたのは見覚えのある彼らだけではなかった。
「これが前の海賊王の船医か?おれに医学書見せてくれるか?」
「ふふふ、チョッパー。頼んでみたら?」
「ふーん。この灯台、このおれさまがもっとスーパーに改造してやろうか?」
小さな鹿か狸か判らぬ生物は桜色の帽子とリュックを持っており、そんな彼を勇気付けるようになでたオリエンタルな美女はアルカイックスマイルと浮かべる。彼女の後ろから現れた男は何故か海パンポーズを決めた。
そして更にその後ろ。
怯えるように船の後ろに隠れていた長身の誰かが姿を見せる。
骸骨にアフロ。異色の取り合わせの彼は、シルクハットに燕尾服を着てクロッカスの心に違和感が浮かぶ。その姿はいつかどこかで見た誰かに似ている気がし、彼の持つステッキで彼が誰か判った。
震える声は見ている相手が誰か信じられないからだ。
「もしや、お前は・・・」
指を突きつければ表筋もないのに苦笑したように見えた表情豊かな骸骨は、シルクハットを取り紳士の礼をした。
気障で優雅なその仕草にクロッカスは確信する。
「ブルック、か?」
「ご無沙汰しております、クロッカスさん。恥ずかしながら、このような姿で失礼致します。何しろ冥府より戻ってから魂が迷子になりましてね。ヨホホホ」
「貴様、よくもおめおめと顔を出せたものだな」
彼の笑い声を遮るように口が開く。意識せず飛び出た言葉に誰より驚いたのはクロッカス本人だろう。
握った拳は震え睨みつける眼光は鋭くなる。
「ラブーンとの約束を破っておきながら、何を今更しに来たと言うのだ」
「おい、おっさん。その言い方はねえだろ。こいつにはこいつの事情ってもんが───」
「いえ、いいのですウソップさん。クロッカスさんの仰ることは正論です。私たちは彼との約束を護れなかったのですから」
間に入ろうとしたウソップを腕で制し、彼はクロッカスへと近寄る。
生前と同じ仕草は相変わらず余裕があり優雅だった。彼の出身を考えれば納得できるが崩れぬ余裕が苛立たしい。
歯噛みしさらに口を開こうとした瞬間。クロッカスの前に彼は膝をつき。
深々と、土下座をした。
「我々海賊団は五十年前偉大なる海で全滅いたしました。ヨミヨミの身で蘇りながら、私はずっと海を抜け出せず長い間漂っておりました。実際ルフィさんが来てくださらなかったら私は今でも一人で海を漂い続けたでしょう」
「・・・・・・」
「恥知らずと理解しながらこの岬へ訪れたのは、どうしても彼に届けたいものがあったからです。双子岬で再会を誓った我々の仲間に、どうしても届けなくてはならないものがあった。無念の中偉大なる海を後にした船長のために、そして戦いの後に命を落とした仲間のために。どうか、どうかお願いします。仲間の想いをラブーンへと届けさせてください」
地面に額を額づけるブルックに、クロッカスは無言になる。
五十年前に彼は全滅したと言った。五十年の長い時を一人で漂ったと。
ラブーンには自分が居たが、彼は正真正銘一人きりで海を彷徨い仲間の想いを届けようと努力したと言うのか。ラブーンとの約束を守ろうとしたと言うのか。
ゆっくりと息を吸い吐き出す。
荒れた感情は凪ぎ、土下座し続ける骸骨を静かに見下ろした。
「約束を」
「え?」
「約束を忘れた日が、一日でもあったか?」
「───いいえ。私がこんな姿でも生に執着したのは彼との約束があったからです。そうでなければとうに命を絶っていたでしょう」
「なら、いい」
顔を上げた彼と一瞬だけ目を合わし、くるりと背を向ける。
「ラブーンが忘れなかった約束を、お前が今果たすのなら。それは喜ばしいことなのだろう」
「クロッカスさん。・・・ありがとうございます」
深い謝意と感謝の込められた礼は、クロッカスに真っ直ぐ届いた。
ならばきっと、ラブーンに届かぬはずがない。
再会の約束は果たされた。
その日、もう無くなった仲間の声を聴いて、ラブーンは喜びに身を震わせた。
大きな瞳からぽろぽろと涙を零し、幾度も幾度も音楽を請う。
骸骨アフロは強請られるままにヴァイオリンを奏で陽気な海賊は昼夜を明かし宴会を繰り広げた。
空に吸い込まれる大音量の『ビンクスの酒』に、滲む視界を瞼を押さえることでなんとか堪える。
五十余年の長き約束は、確かに報われたものだった。
海賊王。
そう呼ばれる男が率いる海賊団にはずば抜けた金額を持つ賞金首の幹部たちが勢ぞろいしている。
個性的で、強くて、勇敢で、信念を持っている。
誰もかもが一級品の腕を持ち、若くして名声と富を手に入れた。
最弱の海と世界でも名高い東の海。
そこから偉大なる海に入る航路の一つに、彼らはひっそりと住んでいた。否、ひっそりというにはその存在はあまりに堂々としすぎていたが。
海に聳え立つ山と間違える巨体を揺らす鯨に、双子岬の灯台守であり医者の肩書きを持つ老人は瞳を細めた。鯨を見るその眼差しは慈しみに溢れており、気の合う友人を見詰めるそれだ。
彼らの付き合いは軽く五十年を超え、その長き時間を共有してきた。
だからこそ彼には判った。鯨が普段よりも浮き足立ち、偉大なる航路をじっと大きな瞳で見詰めていたのに。
「どうしたラブーン?」
そわそわと体を揺らし、世界を別つ『赤い土の大陸』に一心に意識を集中する。何かを待つように静かに霧で途切れた先を見詰める彼に、クロッカスは眉を顰めた。
嘗てのラブーンはこの壁を憎むあまりに頭を打ち付けるという悪癖を有していた。幾度も幾度も自身の体を痛めつけながら体当たりする様は痛々しく、そして同時に腹立たしかった。
だがここ数年でその悪癖はなりを顰め、近くの海で遊ぶ術すら覚えたのに、一体何があるのだろうか。
訝しげに首を傾げると、ラブーンがゆっくりと口を開いた。
「ブオオオオオオオオオっ」
久しぶりに聞く雄たけび。彼の声に波は揺れ、灯台へと海水が押し寄せる。
激しいそれにまた発作が起こったのかと慌てて鎮痛剤を探しに走ろうとしたところでもう一度声が響く。
「クオオオオオオオオぅっ、クオオオっ」
彼は歌っていた。大きな体を左右に揺らし、喜びに瞳を輝かせ、鯨の歌を歌っていた。
嘗て聞いた悲痛な声ではなく、彼がまだ子鯨だった頃良く聞いた泣き声は、クロッカスに唐突に気づかせた。
「来たのか、ラブーン」
「クオオぅ、ブオオオオっ」
波が高くなり海水が灯台まで押し寄せる。建物に縄で自分の体を結ぶと、偉大な航路へと身を乗り出した。
波飛沫は掛かるし海に飲み込まれればひとたまりもない。それでもそうせずに居られなかった。
初めに見えたのは太陽みたいなマーク。よくよく見てみると顔があり、間の抜けた動物みたいに見えた。全体的な船のイメージも大きさも全く違ったが、クロッカスにはそれが誰の船か良く判った。
彼の掲げる海賊旗は髑髏に麦わら。
それは鯨の顔に描かれた歪なものと同じだった。
「おーいっ!ラブーン!!」
船のマストに腕をぐるぐる巻きにし、少し精悍になった顔を笑顔で染め上げた彼は新聞を賑わせる常連であり、クロッカスにも見覚えがあるものだ。
あの日と同じ真っ赤なベストにデニムのハーフパンツ。そして首に下げる麦藁帽子。よく通る声は波の音にも負けず、真っ直ぐに耳に入り込む。
「帰ってきたぞー!お前との約束、果たしに来たぞ!」
「ブオオオオオオゥ」
一層高い声でラブーンが鳴く。彼が歌うは喜びの歌、歓喜で掠れる幸せの歌。
麦藁帽子に髑髏の旗印。それは海賊の中の海賊、現・海賊王が掲げる海賊旗。
彼はラブーンとの約束を守り帰ってきた。数十年前に彼を捨てた海賊と違い、ラブーンとの約束を果たしたのだ。
喜ぶラブーンの上に飛び乗ると、あの日と欠片も変わらぬ太陽を具現化した笑顔で盛大に笑う。
胡坐を掻いた彼を落とさぬように、ラブーンは幾度も海を回った。
暫く遊んでいる彼らを置き、船が灯台へと寄せられる。
「よ、じいさん」
「久しぶりだな。まだ生きてたか」
「ちょっとゾロ!───元気そうで良かったわ、クロッカスさん」
「またエレファント・ホンマグロ調理してやるよ、じじい」
世界一周を成し遂げた無謀な若者たちは、苦難を乗り越えたものだけが持ちえる自信と力を身につけていた。その感覚が懐かしく瞳を細める。嘗てのクロッカスも、世界を旅した日があった。
鼻の長い青年はバンダナを巻いた髪を揺らし笑いかけ、不機嫌そうに見える剣士はぶっきらぼうに声を掛ける。その彼の頭を叩いたオレンジ髪のキュートな美女は取り成すように微笑み、彼女の後ろから現れた金髪は咥えタバコでにかりと笑う。
船から下りてきたのは見覚えのある彼らだけではなかった。
「これが前の海賊王の船医か?おれに医学書見せてくれるか?」
「ふふふ、チョッパー。頼んでみたら?」
「ふーん。この灯台、このおれさまがもっとスーパーに改造してやろうか?」
小さな鹿か狸か判らぬ生物は桜色の帽子とリュックを持っており、そんな彼を勇気付けるようになでたオリエンタルな美女はアルカイックスマイルと浮かべる。彼女の後ろから現れた男は何故か海パンポーズを決めた。
そして更にその後ろ。
怯えるように船の後ろに隠れていた長身の誰かが姿を見せる。
骸骨にアフロ。異色の取り合わせの彼は、シルクハットに燕尾服を着てクロッカスの心に違和感が浮かぶ。その姿はいつかどこかで見た誰かに似ている気がし、彼の持つステッキで彼が誰か判った。
震える声は見ている相手が誰か信じられないからだ。
「もしや、お前は・・・」
指を突きつければ表筋もないのに苦笑したように見えた表情豊かな骸骨は、シルクハットを取り紳士の礼をした。
気障で優雅なその仕草にクロッカスは確信する。
「ブルック、か?」
「ご無沙汰しております、クロッカスさん。恥ずかしながら、このような姿で失礼致します。何しろ冥府より戻ってから魂が迷子になりましてね。ヨホホホ」
「貴様、よくもおめおめと顔を出せたものだな」
彼の笑い声を遮るように口が開く。意識せず飛び出た言葉に誰より驚いたのはクロッカス本人だろう。
握った拳は震え睨みつける眼光は鋭くなる。
「ラブーンとの約束を破っておきながら、何を今更しに来たと言うのだ」
「おい、おっさん。その言い方はねえだろ。こいつにはこいつの事情ってもんが───」
「いえ、いいのですウソップさん。クロッカスさんの仰ることは正論です。私たちは彼との約束を護れなかったのですから」
間に入ろうとしたウソップを腕で制し、彼はクロッカスへと近寄る。
生前と同じ仕草は相変わらず余裕があり優雅だった。彼の出身を考えれば納得できるが崩れぬ余裕が苛立たしい。
歯噛みしさらに口を開こうとした瞬間。クロッカスの前に彼は膝をつき。
深々と、土下座をした。
「我々海賊団は五十年前偉大なる海で全滅いたしました。ヨミヨミの身で蘇りながら、私はずっと海を抜け出せず長い間漂っておりました。実際ルフィさんが来てくださらなかったら私は今でも一人で海を漂い続けたでしょう」
「・・・・・・」
「恥知らずと理解しながらこの岬へ訪れたのは、どうしても彼に届けたいものがあったからです。双子岬で再会を誓った我々の仲間に、どうしても届けなくてはならないものがあった。無念の中偉大なる海を後にした船長のために、そして戦いの後に命を落とした仲間のために。どうか、どうかお願いします。仲間の想いをラブーンへと届けさせてください」
地面に額を額づけるブルックに、クロッカスは無言になる。
五十年前に彼は全滅したと言った。五十年の長い時を一人で漂ったと。
ラブーンには自分が居たが、彼は正真正銘一人きりで海を彷徨い仲間の想いを届けようと努力したと言うのか。ラブーンとの約束を守ろうとしたと言うのか。
ゆっくりと息を吸い吐き出す。
荒れた感情は凪ぎ、土下座し続ける骸骨を静かに見下ろした。
「約束を」
「え?」
「約束を忘れた日が、一日でもあったか?」
「───いいえ。私がこんな姿でも生に執着したのは彼との約束があったからです。そうでなければとうに命を絶っていたでしょう」
「なら、いい」
顔を上げた彼と一瞬だけ目を合わし、くるりと背を向ける。
「ラブーンが忘れなかった約束を、お前が今果たすのなら。それは喜ばしいことなのだろう」
「クロッカスさん。・・・ありがとうございます」
深い謝意と感謝の込められた礼は、クロッカスに真っ直ぐ届いた。
ならばきっと、ラブーンに届かぬはずがない。
再会の約束は果たされた。
その日、もう無くなった仲間の声を聴いて、ラブーンは喜びに身を震わせた。
大きな瞳からぽろぽろと涙を零し、幾度も幾度も音楽を請う。
骸骨アフロは強請られるままにヴァイオリンを奏で陽気な海賊は昼夜を明かし宴会を繰り広げた。
空に吸い込まれる大音量の『ビンクスの酒』に、滲む視界を瞼を押さえることでなんとか堪える。
五十余年の長き約束は、確かに報われたものだった。
>>立花様
こんばんは、立花様。
また遊びに来てくださってとても嬉しいです。
丁寧なコメントをありがとうございます。
私の方こそきつい言い方をしてないかとても不安だったので、立花様がコメントを下さってホッとしています。
それに読み手の方の感想をいただけるのは嬉しいことなので、そんなに気になさらないで下さいませ。
ストレートに疑問を聞いて下さった内容に悪意はないと感じましたので、私も出来るだけストレートにお返事しました。
立花様が誠実にコメントを入れてくださり、信じてよかったと心から思っています。
本当にありがとうございます。
私の方こそ言葉足らずで不躾な部分があったと思いますが、寛容な心でお許しいただけると幸いです。
立花様が色々と疑問を持った上でも私の創作の雰囲気を好きだと言ってくださり、嬉しいです。
やはり、好みがあると判っていても嫌われるよりは好かれると嬉しいですから。
色々と考える部分はおありでしょうが、宜しければまた遊びに来てください。
私好みの私の妄想で埋まっているサイトですが、受け入れてくださると嬉しいです。
言葉の端々まで気を使った丁寧なコメント、本当にありがとうございました!
Web拍手、ありがとうございました!
こんばんは、立花様。
また遊びに来てくださってとても嬉しいです。
丁寧なコメントをありがとうございます。
私の方こそきつい言い方をしてないかとても不安だったので、立花様がコメントを下さってホッとしています。
それに読み手の方の感想をいただけるのは嬉しいことなので、そんなに気になさらないで下さいませ。
ストレートに疑問を聞いて下さった内容に悪意はないと感じましたので、私も出来るだけストレートにお返事しました。
立花様が誠実にコメントを入れてくださり、信じてよかったと心から思っています。
本当にありがとうございます。
私の方こそ言葉足らずで不躾な部分があったと思いますが、寛容な心でお許しいただけると幸いです。
立花様が色々と疑問を持った上でも私の創作の雰囲気を好きだと言ってくださり、嬉しいです。
やはり、好みがあると判っていても嫌われるよりは好かれると嬉しいですから。
色々と考える部分はおありでしょうが、宜しければまた遊びに来てください。
私好みの私の妄想で埋まっているサイトですが、受け入れてくださると嬉しいです。
言葉の端々まで気を使った丁寧なコメント、本当にありがとうございました!
Web拍手、ありがとうございました!
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