忍者ブログ
初回の方は必ずTOPの注意事項をご確認ください。 本家はPCサイトで、こちらはSSSのみとなります。
Calendar
<< 2025/06 >>
SMTWTFS
1234 567
891011 121314
15161718 192021
22232425 262728
2930
Recent Entry
Recent Comment
Category
44   45   46   47   48   49   50   51   52   53   54  
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

心に空白があるのに気がついた。
否、おせっかいな知人に無理やり気づかされた。
けれど心にある隙間に気がついても、どうして隙間があるかまでは判らない。
そして───何が、隙間になっているのかも。
ただ判るのは何かが足りなくて、その何かが自分にとって大切だっただろうことだけだ。

仕事を纏める手を止めると、恋次は一つため息を落とす。
副隊長の仕事はもう随分と慣れて、纏め終わり積んである書類は隊長の承認を待つものだけになった。
気が進まなくとも仕事は待ってくれない。
一日の終わりに近づいた時間、報告も兼ねて書類を手にしたまま隊長室に向かう。
数度のノックの後声を掛け入った部屋は、相変わらず片付いている。
埃一つないんじゃないかと思える室内には、背筋をピンと伸ばし仕事を進める白皙の美貌の青年があり、彼に釣られるよう背筋を伸ばすと歩を進めた。

「お疲れ様です、隊長」
「───ああ」
「これ、今日の分の書類です。宜しくお願いします」
「判った」

淡々と返事をし、温度を感じさせない眼差しを向けた白哉は、そこに置けと指先で机の端を指す。
それに逆らわず黙って書類を置き、いつも通りに頭を下げて退出しようとすると、珍しくも白哉から声が掛かり動きを止める。

「明後日、確か出勤だったな」
「はい。通常勤務っすけどそれが?」
「悪いが急用が入った。私はその日午後から休みを取りたいと思うが、大丈夫か」
「・・・朽木隊長が休み?珍しいっすね」
「そうだな。それで、大丈夫なのか?」
「あ、はい。大丈夫っす」

重ねられた問いに慌てて頷けば、よしと言わんばかりに頷いた彼は書類へ視線を戻した。
そんな白哉を眺めながらも驚きで心が埋まる。
恋次が知る限り彼は滅多なことでは仕事を休まない。
私用だろうが、貴族の会合か何かだろうか。
きっとそうに違いない。
何しろ白哉はあの朽木家の当主だ。
四大貴族として役割もあるのだろう。

「貴族も大変っすね」
「・・・何がだ」
「隊長が仕事を休むってんなら大した用事なんでしょう?貴族同士の何かがあるんじゃないんすか?」
「いや、今回は私用だ。だが、貴族同士のものであるというのははずれではない」
「じゃあ、何するんすか?」
「義妹が」
「義妹さん?」
「義妹に、正式な手続きで縁談が申し込まれた」
「え・・・?」

一瞬意味が飲み込めず、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。
白哉の義妹といったら、死神の中では有名な存在で、色々な噂が立つ人物だった。
目にしたのはただの一度だけ。
艶やかな黒髪に釣り上がり気味の紫紺の瞳。
透き通るような白い肌と、気品を感じさせる立ち振る舞いが印象的な美貌の少女。
朽木の飼い猫と一部の人間に揶揄され、流魂町出身のお仕着せ貴族と嘲笑される、孤高の少女。
彼女のことは良く知らないが、本人を見た恋次からしたら、そんな愚劣な噂が何一つ似合わない存在だった。
その少女が見合いをする。
どうしてここまで衝撃を受けるのか判らないが、息の仕方も忘れるほどに恋次はショックを受けていた。
死覇装の胸の部分を掴み、何とか笑みらしき表情を浮かべ口を開く。

「縁談って・・・確か、隊長の義妹さんは俺と同じくらいの年だったっすよね。まだ早くないですか?」
「何を言う。遅いくらいだ。だが、今までは本人の希望もあり、ほとんど断ってきたのだがな。今回は相手も本気のようだし、ルキアにも悪い話ではない」
「隊長が納得される相手なんですか?」
「ああ。家柄は我が朽木家には並ばぬが一応貴族であるし、人柄も良い。何よりあれのことを良く知った男だ。年は少々離れるが、その分想いも強い。ルキアを気に掛ける男としては申し分ないだろうな」

淡々としているが、白哉の口から零れるのは相手の男に対する賞賛に近かった。
目を見開いてそれを聞く恋次は、白哉は義妹を大事にしていると話も聞いていたので、相手は余程の人物なのだろうと察した。
身分が違っても良いと思われるほどの人格者であり実力者。
空回りする脳みそで誰かを搾り出そうとし、冷静な頭が何故それを知る必要があると突っ込む。
だが理性に反し心は落ち着かず忙しなく鼓動が撥ねた。

「相手は、どんな男なんすか?」
「お前も知っている。ルキアに縁談の申し込みをした男、それは」
「・・・・・・」
「十三番隊隊長、浮竹十四郎だ」
「っ」

その優しげな面立ちを思い出し、恋次はぐぅと喉の奥で悲鳴を殺した。

拍手[7回]

PR
*ルフィたちが海賊王になる少し前の設定です。



海賊王。
そう呼ばれる男が率いる海賊団にはずば抜けた金額を持つ賞金首の幹部たちが勢ぞろいしている。
個性的で、強くて、勇敢で、信念を持っている。
誰もかもが一級品の腕を持ち、若くして名声と富を手に入れた。
だが───今から語る話は、まだ彼らがその栄誉ある称号を手に入れる少しだけ前の物語である。





「もうすぐだな、ルフィ」

背後からかけられた声に首だけを回したルフィは、今空に輝く太陽と同じ魅力を持つ笑みを浮かべる。
心底楽しくて仕方ない、とワクワクドキドキと音が聞こえそうな笑顔で、ゾロは淡く苦笑した。
右手を船の縁に掛けると、彼のお気に入りの席へと無理やり割り込む。
バランスを崩し海に落ちそうになったルフィを片手で支え、その隣に腰掛けた。
男二人で並ぶには手狭だが、彼が座る特等席は今日も心地よい風が吹いている。
昼の心地よい日差しに眠気を誘われながら、ゾロはゆったりとした気分で口を開いた。

「次の島がお前の夢を叶える場所だ。気分はどうだ、海賊王?」
「ししししっ!おれはまだ海賊王じゃねぇよ。でも、そうだな、気分は上々だっ」
「そうか」

機嫌がいいルフィに頷くと、頬を擽る潮風に身を任せ瞼を閉じる。
そうすると波の音とルフィの声しか聞こえず、世界で二人きりになったような錯覚に、自分らしくないと自嘲の笑みを浮かべた。
だがらしくないのも仕方ないと思う。
先日己の夢を叶えたばかりのゾロは、傷だらけで痛む体と昂揚したままの精神を抱えている。
ルフィの隣にいれば少しは落ち着くかと思ったが、そうはならないらしく、むしろ彼の感情に伴ってもっとテンションが上がっていくようだ。
チョッパーに禁止されているが、今すぐにでもルフィと手合わせしたいと欲求が高まり、拳を握ることで辛うじてそれを堪える。
望んだものは今やほぼゾロの手の内にあり、最後の一つももうすぐ転がり込む。
それが酷く待ち遠しく、トレーニングもそこそこに見えた赤いベストに誘われ狭い場所に身を収めている。
もしかすると、自分で思うよりもずっと、ゾロはその瞬間を待ち望んでいるのかもしれない。

「───早く、島につかねえかな」
「んー?どうした、ゾロ?お前がそんなこと言うの、珍しいな」
「そうか?」
「そうだよ。おれが言うんだから間違いない」
「そうか」

しししっといつもどおりに楽しげに笑うルフィに頷く。
彼が言うのなら、きっとそうなのだろう。
ある意味彼はゾロ以上にゾロを判っている。
ゾロが、ルフィをルフィ以上に判っているのと同じで。
この伝染する高揚感は彼と心の奥で繋がってるかもしれないなんて、やっぱりらしくないことを考え渋面し頭をがしがしと掻いた。
幾らなんでも浮かれ過ぎだろう。

そんなゾロの百面相を見て何を考えたのか、唐突に腕を振り上げたルフィは、ゾロの頭を掴んだ。
じとり、と一瞬でゾロの目が据わるが、睨まれただけで今更どうこうする付き合いじゃないルフィは動じない。
がしがしと頭をかき乱され、ぴくりと額に青筋が浮いた。

「何のつもりだ?」
「んー?何が」
「この手だ。場合によっちゃ斬り落とす」
「ははっ、怖ぇなゾロ。んな不機嫌になるなよ、誉めてんだからさ」
「誉める?」
「そう。おれはお前を誉めてんだ」

満足気に人の頭を掻き混ぜるルフィに、段々と怒りが萎えていく。
見た目だけ成長したが、中身は少しも成長していない。
精悍な顔つきに伸びた身長。
強さだってルーキーだったあの頃より桁違いなのに、中身は欠片も変わらない。
今だって誉めていると口にしたなら、本当に誉めているつもりなのだろう。
いい年した年上の男にする態度じゃないなんて、欠片も考えないに違いないのだ。
この、空気の読めない年下の青年は。

だからため息一つで怒りを流したゾロは、仕方なしに好きなままにさせてやる。
スルースキルを身につけたのは、自分が疲れないためだ。
毎度全力で突っ込んでいたら、こちらの身が持たない。
案の定暫く好きにさせていたら満足したらしいルフィは、掌を置きにししと笑う。
何がそんなに楽しいんだと聞きたいくらいにご満悦な表情をしていて、つい釣られて口元が緩んだ。
自身は意識していないが、その表情はとても柔らかで優しげで、もしこの場にサンジがいたなら徹底的にからかわれるほど油断した笑顔だった。

「宴会は開いたけど、お前の祝福したけれど、おれはまだ言ってねぇもんな」
「だから、何をだ?」
「良くやったなって。おれはまだお前を誉めてなかっただろう?折角お前が世界一になったっていうのに」

自分自身が世界一になったように、自慢げに胸を反らしたルフィがゾロに告げる。
彼の表情は縁側で日向ぼっこしている猫のように緩み、幸せそうだった。
何を言われたのかとぽかんと口を開けるゾロを無視してルフィは続ける。
いつだって彼は他人がどうしてるかを気にしない。
自分がどうしたいかを第一に持ってくるルフィらしい態度だが、現状を飲み込めないゾロは楽しげな彼が告げる言葉を理解するので精一杯だ。

「凄いぞ、ゾロ。さすが、おれが選んだ剣士だ。お前が負けるなんて欠片も思っちゃいなかったが、それでもおれは嬉しい。お前を尊敬するし、格好良いと思う。さすが、おれの相棒だ」
「っ」
「お前を選んでよかったぞ、ゾロ。一目見たときからお前が欲しかった。お前は絶対に強いって判ってたしな」
「・・・・・・」
「お前が居てくれるからおれは迷わずに居られる。いつだって何かあったとき一番に頼りにするのはお前だ。何だかんだ言って面倒見もいいし、必要な時に必要なことをしてくれる。おれが真っ直ぐに進めるのは仲間のおかげだけど、お前に一番安心して背中を任せられる。ゾロ───そんなお前が、夢を叶えて世界一になったのが凄く誇らしい。最高だ!」

一息に告げるルフィに恥じらいはない。
だが聞かされたゾロは居た堪れなさに消えてしまいたくなった。
誉め殺しなんて高度なテクニックを、いつの間に身につけたのだ、この性質の悪い男は。
掌で顔を覆って隠したが、俯いても赤らんだ耳は丸見えだろう。
ゾロの服装は上半身は肌の色が覗きやすく、体を丸めたって隠せやしない。
まして妙に鋭い部分がある嫌な男相手では、きっと意味がない。
呻き声をあげてごろごろと転がりたくなる衝動を何とか押さえ込み、真っ赤になった顔を見られないようルフィから顔をそらす。
しかし、しししと笑い声が聞こえ、お見通しかよと眉間に皺が寄るのは押さえられなかった。

「・・・何なんだよ、お前は、本当にいきなり」
「ししししっ、照れたかゾロ。顔が真っ赤だ!」
「照れてねぇよ!」

勢い込んで反論したが、その声がそもそも掠れていては迫力は薄い。
そして最悪にもルフィの言葉は図星だったので、益々顔が赤らむ。
本当に何なんだと馬鹿の一つ覚えで呟けば、ゾロにこの上ない羞恥を与えた男は頭の後ろで腕を組むと愉快そうにゾロを眺めた。

「言ったろ。誉めてんだ。ゾロが世界最強の剣士になったのを、船長として、モンキー・D・ルフィとして誉めてんだよ」
「今更だろうが。───お前に誉めてもらうために世界最強になったんじゃねぇ」
「知ってるよ。でも、たまにはいいだろ?ゾロは中々おれに誉められてくれねぇからな。結構楽しい」
「おれで遊ぶな」
「遊んでねぇよ。至って真面目だ」
「尚更性質が悪い」
「───ゾロは照れ屋だなぁ」
「うるせぇ!」

あまりな言葉に顔を上げて睨みつければ、予想外に柔らかな笑顔を浮かべたルフィと目が合い言葉が詰まった。
呑まれて黙り込んだゾロに、普段の陽気ではじける笑顔ではなく、包み込むような包容力のある笑顔を浮かべたルフィが静かに訴える。

「覚えてるか、ゾロ?おれがお前に言った言葉」
「『海賊王の仲間になるなら、世界一の剣豪くらいにはなって貰わないとおれが困る』」
「ししし、さすがだ」

頷く彼こそ覚えていたのかとゾロは驚いた。
彼の脳みそは残念な出来をしているので、ずっと昔に交わした会話など覚えていないと思い込んでいた。
例えそれを、ゾロがどれ程重く受け止めていようとも、彼は気にしないと思い込んでいた。
だが違うのだろうか。
もしかしたら、自分が思っている以上に、この言葉に篭められた意味は重いのだろうか。
そうだとしたら、それを酷く喜ぶ自分が居るのをゾロは知ってる。

「お前はお前の夢を叶えた。今度はおれの番だ。───おれは、海賊王になる男だ」

声は大きくない。
普段のように怒鳴るように世界に向けて宣言するわけでもない。
けれど酷く静かな主張は、ゾロの心の奥深くにすとんと入り込んで、とぐろを描きそこに居座る。
ゾロの魂を縛ろうとする彼の声は、出会った頃から今でも健在。

「そうだ。お前は海賊王になる男だ。そしておれは、世界最強の剣豪だ」
「ああ。お前は世界一の剣豪だ。海賊狩りのロロノア・ゾロ。そしてお前はおれの相棒でもある」
「そうだ。おれはお前の相棒だ。お前を支え隣に並び立つのは他の誰でもなくこのおれ、ロロノア・ゾロだ」
「ああ。なぁ、ゾロ」
「何だ」
「おれは海賊王になる。だからお前、ずっとおれの隣に居ろ」
「・・・・・・」
「おれは今より高みに上る。生きてる内は一生上を目指す。その欲求に果てはない。強くなりたい。誰よりも自由に海を駆ける存在であり続けたい。心のままに生きていたい」
「ああ」
「お前も同じだろう、ゾロ?世界一の称号だけでお前が満足するはずねぇ。お前もおれと同じだ。もっともっと上に行きたいはずだ。おれたちはこの程度で終わるはずがねぇもんな」
「そうだな」
「きっと、最後までおれの隣に居られるのは、お前だけだ、ゾロ。だから強くあり続けろ。他の誰かのためじゃなく、おれ自身のために。おれが間違った方向に行こうとしたらお前が止めろ。それはきっと、お前以外の誰にも出来ない。お前が出来ないなら、他の誰にも出来ない」

ルフィの言葉は酷く魅力的にゾロの耳に響く。
誰よりも高みを目指す故に、何処かに孤独を抱える男。
誰よりも自由を望み、誰よりも強さを望む。
自分が自由で居るために、強さを求めるのがルフィだ。
そして彼が言うとおりに、彼に本当の意味でついていけるのはゾロだけで、最後の最後で彼の砦になれるのもゾロだけだ。
彼が心を砕く仲間の誰にも許されぬ、ゾロだけに与えられた特権は、彼の心を内から満たす。
無意識に口端が上がると、魔獣と称されるに相応しい剣呑な雰囲気で、獲物を前にした飢えた獣みたいに哂った。

「当たり前だ。お前の横に立てるのはおれだけだ。世界一の剣豪におれはなったんだ。海賊王にくらいお前がならないとおれが困る。そうじゃなきゃ、お前はおれに並べる存在じゃねぇからな」
「ししし、言うねぇ。さすがおれのゾロだ」

凪いだ海に揺れる船の上で、ゾロの傲慢な台詞にルフィは満足したようだった。
彼の笑顔は曇りなく、いつの間にか静かな雰囲気は消えている。
腹を割った話は、ゾロとルフィが対等だからこそなされたもので、一生この関係を維持すると決めていた。

早く、時が来ればいいと願う。
もう幾日か過ぎれば、目の前の男は海賊王になるだろう。
その日が待ち遠しくて仕方ない。

何故なら。
彼の夢が叶う瞬間こそ、ゾロの野望が叶う瞬間でもある。

『海賊王になったルフィの隣に、世界最強の剣豪として肩を並べる』

いつの間にか純粋だった夢に混じりこんだ野望は、ゾロの心の内に深く根付いていた。
海賊王に上り詰めた彼は、同時に心に孤独を飼うだろう。
他の誰も辿り着けない極みに立つなら、同じ立場の人間でなければ真の意味で分かり合えない。
それを知るからこそ、ゾロはその日を願った。

海賊王に彼がなる日。
それは真の意味でゾロが彼を独占できる日でもあった。

くつりと喉を震わせて哂った彼に、ルフィも小さく笑った。
無邪気に笑う彼も、きっと心の奥底でそれを理解しているのだろう。
だからこそゾロに手を伸ばすのだ。
そうして伸ばされた手を握り締めれば、きっと自分はもうそれを放さない。

刻一刻と近づくその日は、この上ない充足感をゾロに与えるに違いない。
世界に二人だけしか感じ取れない絆を得る日が、待ち遠しくて仕方ない。

この世界に住む誰よりも、最強の名を冠する剣士こそが、海賊王の誕生を望んでいるに違いない。
自分の考えがおかしくて、やっぱりゾロも笑った。

拍手[51回]

>>朝霞夜月様

こんばんは、朝霞様!
本当に世の中にはいろいろな方がいらっしゃいますよねぇ・・・。
悪気ない行為が一番性質が悪いと思いますが、朝霞様が閉鎖を思いとどまってくれて、一ファンとしてとても嬉しいです!
頂く一言や何気ない行為って本当に些細なものでも影響されてしまいますよね。
その気持ち、本当によく判ります。
朝霞様の素敵小説がまだまだ読めるのがとても嬉しいですw

そしていつもの感想をありがとうございますw
このたび本当に久しぶりにGS3を更新したのですが、季節外れもいいとこの水着話です。
海話を書こうと思いつつ、かなり季節外れやんと自分でも突っ込みを入れちゃってます(苦笑)
でも書きたい時に書きたいものをがモットーなので、書いちゃいますw
最近はStormLoverとかを書きたいな~と思いつつ、Rがついてしまいそうなので、未だに手が出せていませんw
ワンピースもあと何週間かで再復帰するし、とても楽しみです!
またお話しましょうねw
Web拍手、ありがとうございました!


>>ぴよりん様

こんばんは、ぴよりん様!
ご無沙汰しておりますw
またコメント頂けてとても嬉しいですww

GS3の更新を読んでくださってありがとうございます!
久しぶりの更新だったので書き方を忘れかけていたのですが、ちょっぴし策士でおばかな琉夏くんがかけて楽しかったです。
ふはははは~とあほな勝利の高笑いとかしてるといいですw

ルフィも読んでくださってありがとうございます!
無邪気で我侭で傲慢なルフィは、だからこそ格好いいですよねw
少しでも彼の魅力が書ければいいのにと思いながら、力不足に涙涙です。
青キジ話は書いていて難しいです。これで何回目かになる登場ですが、未だに彼の人となりがつかめないです。
青キジといったら対照的に出したいのがロビンなんですけど、彼女の彼に対する想いも複雑ですよね。
本能に刷り込まれた恐怖と、自分を生かしある意味で見守り続けた男への畏怖。
憎んでいるのか感謝しているのか不思議だと思います。
そう言えば大海賊シリーズにはスモーカーさん出てないですよね。
いつか絶対に出してみませうw追いかけっこの鬼状態ですよね!
『まて、麦わら!』
『うわー、またケムリンかよ。いい加減しつこいなぁ、お前』
『お縄につくまで追いかけてやるよ。───お前を捕まえるのはおれだ』
『んー・・・でもおれまだ冒険したりないからな。お前のこと嫌いじゃねぇけど、捕まる気もないな』
『・・・ククっ、振られたようだなケムリ野郎。フラレ男はとっとと消えな』
『常に女に振られ続けてるお前が言うな、グル眉コック』
『あぁん?やんのか?』
『・・・やりてぇのか?』
とこんな感じでいるといいです。
いたちごっこで、同族である海賊よりもある意味分かり合ってると楽しいです!
銀魂改稿版も読んでくださってありがとうございました!
おまけもつけて今日でアップし終わりました。
あれは夢が元ネタだったんですが、連載当初はよく感想を頂き暗い内容でも好きといって頂けてとても嬉しかった記憶がありますw
全てがハッピーエンドの話ではないですが、それが一番らしいと思って書きました。
なので、気に入ってくださるととても嬉しいですw
「拝啓・・・」「抽選・・・」も感想ありがとうございますw
意外と思ってもらえると嬉しいです!
シスコン合戦は折を見て再発します(笑)
白檀様は強くて脆い人で、伽羅は彼の脆さを愛しています。
ある種残酷な子供ですよね。
あっちも頑張って更新しますw
現在はコピー本の復活未来捏造話を作成中です。
三人ずつで一冊なのですが、ザンザス、ルッスーリア、ベルフェゴール+マーモン話を作ってます。
こつこつ手作りは意外と嵌ってしまいました(笑)

また是非遊びにいらして下さい!
Web拍手、ありがとうございました!!


>>華楠様

こんばんは、華楠様!
管理人の体調まで気にしていただき、本当にありがとうございます!
絶好調とは行かないですが、現在とても元気ですw
華楠様はいかがお過ごしでしょうか?
最近は冷えてまいりましたが、体調を崩されないようにお気をつけ下さいね。

『I need you』の感想をありがとうございますw
ずっと長々放置していた作品ですが、勢いが載っている今の間に完結させたい作品です。気がつけば、結構長編ですよね、あれ・・・(汗)
一護や一角を巻き込みつつ進んでいる話ですが、次はルキア視点で兄様登場ですw
色々と想像していただけると書き手としてもとても嬉しいです!
拙い文章ですが、やる気だけはありますので、また是非続きを読んでやってください!

マイペースなさいとですが、また遊びにいらしてくださいませ!
Web拍手、ありがとうございました!

拍手[0回]

 息苦しさに魘され、はっと目が開く。うっすらとぼやけた視界は徐々に鮮明になり、見上げた先には澄んだ青空。白い雲が流れる。風の赴くままに揺れるそれを眺め、神楽は数度瞬きを繰り返した。

「漸くお目覚めか?」

 隣から聞こえてきた声に、びくりと体を震わせる。そこに居たのは良く見知った顔。片方の目を眼帯で隠した男は、口端を微かに持ち上げる。白い半そでのカッターシャツに黒のズボン。シンプルなそのいでだちは毎日見ているはずなのに、何故違和感を感じるのか。己の違和感に首を傾げ、神楽はその人の名を口にした。

「・・・晋助」

 何処かぼんやりとした声。そんな神楽に小さく笑うと、神楽のものより一回り以上大きな掌が降ってきた。目を閉じると額の上の髪をさらりと掻き上げ──ぴん、と指先で弾く。衝撃に体を揺らした神楽は、唇を尖らせ瞑っていた目を開けた。

「・・・痛いアル」
「痛いアル、じゃねえよ。いつまで寝てるつもりだ。昼休みのチャイムはとっくに鳴ったぞ」
「え?」
「次は銀八の授業だから絶対に出るっつってたのに、幾ら起こしても目を覚まさねぇし。どんだけ寝汚いんだ、お前」

 呆れを含んだ声に慌てて左手首に嵌めている時計を見れば、確かに。昼休みは十分も前に終わっていて、静かな校舎に納得がいく。舌打ちし、慌てて上半身を起こせばくらりと眩暈を起こし、見透かすように伸ばされた腕に抱えられた。

「・・・お前、日の光に弱いんだろ?腕、赤くなってるぞ」

 指差され見てみれば、頭の下で組んでいた腕は確かに赤くなりひりひりと痛んだ。足は辛うじてスカートの下に履いたジャージでガードされていたが、今日に限って上を羽織っていなかった。舌打ちしまだ少しだけくらくらする頭を宥め上体を起こす。支えるように添えられた手の力も借り何とか体を安定させ、ずれかけた眼鏡を指で押さえた。同じように日に当たっていた筈の顔は、けれど少しも痛まない。それに違和感を感じないでもないが、まぁいいかと頭を振った。

「変な夢を見てたアル」
「夢?」
「そう。夢ネ」

 本当に変な夢だった。セーラー服のプリーツを直しながら夢を思い出し首を傾げる。
 夢の中の世界は、現代と似ていたが、全く違った。言うなれば現代と江戸時代をプラスして三足して二で割ったような世界だった。そこでは神楽は十四歳の少女で、夜兎という戦闘種族の末裔だった。口調も性格も変わらないが、現実では一度も着たことないチャイナ服を着ていた。腰の近くまでスリットが入ったそれは、とりあえず神楽とは縁がなさそうなものだった。

「お前も夢に出てきたアル」
「俺が?」
「そう。お前が」

 狂気と正気を瞳に宿した青年は、今の彼よりも年上に見えたけれど。確かに彼は、何処か驚いたように瞬きを繰り返す目の前の男その人だった。退廃的な空気に、破壊衝動を纏わりつかせたその姿。唇に指先を当て暫し考え込むと、ぽんと手を打つ。その姿は、神楽が初めてこの男とあった時、彼が纏っていたものに酷似している。今では随分と緩んだが一年の時の彼は、きりきりと張り詰めた糸が切れてないのが不思議なほどに剣呑で、どこぞの歌の歌詞と同じく、ナイフみたいに尖っては触るもの皆傷つけたを体現していた。最も神楽は彼の態度がそんな状態でも気にせず話しかけていた数少ない人間の内の一人で、その姿を恐ろしいと感じたこともなかったけれど。
 あの頃が嘘のように随分と柔らかくなった雰囲気の晋助は、それでもまだ学園を統治する不良のトップを張っている。風紀委員とは敵対してるし、教師陣の覚えも悪い。極端にマイペースではあるが、誰とでも仲がいい神楽が彼とつるんでいるのを不思議に思う生徒も少なくなく、忠告された回数も片手では足りない。だが晋助との縁は細く長く続き、屋上で一緒に過ごすほどになっていた。

「どんな役だよ」
「──・・・まぁ、善人ではなかったアルな」
「だろうな。何せ俺だ」
「そうヨ。お前ネ」

 善人でなかったが、悪人とも思えなかった。口にする気がない言葉を、胸中だけでひっそり呟く。攘夷志士の過激派テロを繰り返し、歪な表情で哂っていた男。女物の着物を粋に着こなした晋助は、何かに追われるように生き急いでいた。夢の中の神楽は、彼を好きではなかったけれど、決して憎んでも居なかった。自分を利用してるだけだと知っていて、躊躇なくそれを告げるくせに、何処か優しい眼差しを向けてくる。皮肉に口の端を持ち上げて、神楽を傷つけるのに迷いはないのに、神楽が離れるのを拒絶し無理にでも引きとめようとしていた。夢の中の神楽は幼すぎて判らなかったろうが、晋助の眼差しは狂気ばかりではなかったのだ。
 黙りこんだ神楽をじっと眺めていた晋助は、不意に手を持ち上げると。びしり、と神楽の額をデコピンする。唐突な行動に目を怒らせれば、くつり、と喉を震わせた。夢の中の晋助に比べると随分と幼い表情だ。こんな顔を、彼もしていた時代があったのだろうか。

「何、ぼうっとしてやがる。じゃじゃ馬」
「・・・・・・」

 神楽をじゃじゃ馬と呼ぶ声音も酷似していた。後数年もすれば、彼に追いつく晋助は、彼と違う成長を遂げるに違いない。その時、自分たちの関係がどうなってるか判らないが、夢とは違うものだろうと断言できる。夢の中の晋助は、神楽の知る晋助と違う。神楽が見てきた晋助ではなく、酷似した別人だ。

「目開けたまま寝てんのか?それとも魂が抜けてったか?」
「・・・どちらも違うアル。失礼な男ネ」
「くくくっ。そんなの、今更だろ」
「確かに。本当に今更ネ」

 軽口を交わす距離感。同い年故の気軽な関係。加減抜きの喧嘩もするし舌戦だって繰り返す。だが自分たちは夢の中の彼らとは違い、もっと近い場所にある。顔を見合わせ笑い合い、一呼吸置くと神楽は立ち上がった。直に寝転んでいたお陰で制服についていた誇りを払うと眼鏡を指先で少し摘む。ガラス越しではない青い瞳は愉しそうに煌いて、端整な顔を隠す無粋なメガネの存在を霞めた。

「またナ、晋助」
「おう」

 屋上のドアに向かう神楽にピラピラを手を振った晋助は、にっと年相応の子供みたいな顔を見せた。




「──かーぐらちゃん」

 背後から聞こえてきた声に、びくり、と体を震わす。その声の持ち主が誰か知っているので、中々後ろを振り返れない。廊下の真ん中で固まった神楽の肩にその人物は手を置くと、ゆっくりと引いた。それほど強い力ではないが、無言の強制に逆らう術を神楽は持たない。
 ぎぎぎぎ、と音を立てそうなぎこちない仕草で振り返った神楽は、にたり、と不気味な笑みを浮かべた男を間近に見て引きつった笑みを浮かべる。くたびれた白衣に舐めすぎて煙を出すレロレロキャンディー。天然パーマがコンプレックスの死んだ魚のような目をした担任がそこにいて、居心地の悪さに頬を汗が伝った。

「・・・銀ちゃん」
「先生は」
「・・・・・・銀ちゃんセンセー」
「はい、宜しい」

 ぽん、と無造作に頭に手を置かれきゅっと瞼を瞑る。乱暴に見えて優しい仕草はくすぐったく、亀のように首を竦めて享受する。神楽は肉親に愛されていたが縁が薄く、このようにスキンシップを計る大人は銀八が初めてで、背中がむず痒くなるようなそれをとても気に入っていた。
 銀八は神楽の担任であると同時に隣人である。銀八曰く前者はともかく後者は学校にばれると拙いらしいが、高校三年になった今もその秘密は守られていた。基本的に神楽が自分の家に人を呼ぶことはなく、銀八の家にも家賃の回収以外で人は来ない。こう言えばまるで自分に友達が居ないみたいだが、それは断じて違う。交友関係が広いのか狭いのか判らない銀八とは違い、神楽の友人は数多い。だが遊びに行っても家に上げる気がないだけだ。理由は単純で、銀八と離されるのが嫌だから。その一つに限るが、天邪鬼な神楽がそれを口にする日はきっと来ないだろう。
 出席簿を片手に、もう片方の手を白衣に突っ込んだ銀八は、レロレロキャンディーをレロレロしながらやる気のない眼差しを神楽に向ける。半眼になった眼差しは怒りよりも呆れを多く含んでいた。

「それで?」
「え?」
「何で授業をサボったわけ?理由、あるなら言ってみ」
「・・・・・・」

 理由。理由はないわけではない、だが口に出すには少々勇気が要り、アンパンで作られたヒーローの頭の欠片が欲しいくらいだ。銀八の視線に含まれた意図を正確に読み取れるだけに尚更。呆れも多く含んでいるが、その目には心配も同居している。神楽は元気溌剌で運動神経もいいが、極端に体力値が少ない。抜けるように白い肌は太陽からは嫌われている。常に傘を差すほどではないが、長時間日に当たればすぐに日焼け──というよりも火傷のように肌が爛れる。それを知る銀八は、神楽が何処かで意識を飛ばしていたのではないかと案じてくれているのだろう。その銀八に向かって、言えというのか。神楽が授業に出なかった理由、それは昼休みに寝過ごしていました、などと。
 真っ直ぐに目を見返すことも出来ずに、視線がウロウロと彷徨う。不審人物さながらの行動に銀八の目も据わってきた。がしり、とアイアンクローを決められ頭を締め付けられる。加減してくれてるのだろうがその痛みは随分で、うっかり涙目になりそうだ。

「・・・神楽ちゃん?」
「・・・何アルか?」
「ちょっと俺の目を見てみなさい」
「見てるアル、見てるアル。ばっちりと見てるアルヨー」
「心眼で、とか言うなよ。幾らお前の眼鏡が分厚くても、俺が判らないと思うのか?」
「・・・すみません」

 一つため息を吐き、白旗を上げる。素直に謝罪し真っ直ぐに見上げた。どうしようか、と少しだけ躊躇して結局口を開く。

「夢を見ていたネ」
「夢ぇ?」

 尻上がりのイントネーションに彼の怒りを感じ身を竦ませる。そろそろと見上げた顔は、多大なる呆れを前面に出していた。ついっと上がった眉がぴくぴくと動く。必死に何かを堪える表情に、もう一度慌てて謝罪を繰り返した。

「夢と言っても、なんだか凄く臨場感があったアル!銀ちゃんセンセーも出てきて、本当に凄かったネ」
「ほーう。俺も、ねぇ」

 顎に手を当てた銀八は、促すように神楽に頷く。それを見て勇気付けられた神楽は、おずおずと続きを口にした。

「私は十四歳の女の子で、万事屋を営んでる銀ちゃんセンセーの家に一緒に住んでたアル。ついでにダメガネの新八も一緒だったネ。ヅラや姉御も出てきたアル」
「ふぅん」
「銀ちゃんセンセーは今と変わらないけど、他の皆は年齢も職業もばらばらで、ほとんどが着物を着てたアル。歌舞伎町は江戸にあって、天人って言う宇宙人が一緒に住んでるネ。私もその天人だったヨ。日差しに嫌われた一族で、常に傘を差してたアル」
「日差しに嫌われる、か。今よりも酷いのか?」
「うん。常に傘が手放せなくて、晴の日もずっと差してたネ。雨傘と同じくらい分厚かったアル」
「そりゃまた随分と大変だな」
「夜兎って種族だったアル。夜の兔って字を書くネ」
「へぇ・・・。月の下でしか生きれない存在ってことか。確かにお前、色だけは白いもんなぁ。兔に例えるには強暴だけどな」
「失礼な。私くらいか弱く愛らしい存在は兔に例えても全然不思議じゃないネ。──まぁ、とにかく。そんな世界で生きてる皆の話だったアル」
「そうか。──・・・嫌な夢だったのか?」
「嫌?どうしてそう思うアルか?」
「いい夢にしては、お前の表情が暗いんでな」

 先生は何でもお見通しだ、とまた髪を撫でられる。これは夢の中の彼も共通の仕草だ。与える安心感もまた然り。触れられるだけで安堵できる存在は、神楽にとって彼だけだ。体温が伝わる場所から優しさが伝染する気がするもの、銀八だけ。この人の温もりだけを何も構えず享受でき、この人の優しさには反発せずに素直になれる。
 本来表情をあまり変えない神楽に喜怒哀楽の感情を容易に浮かべさせれるのは、夢の中でも彼だけだった。

「嫌な夢とは言い難いアル」
「そうか」
「でも良い夢ではなかったネ。悲しくて寂しくて怖かったアル」
「・・・そうか」

 夢の中の十四歳だった神楽は、その言葉を口にしなかった。でも現実の神楽の傍には銀八が居てくれて、だからこそ弱音を吐ける。神楽が欲したとき、この手は躊躇なく伸ばされる。優しい言葉はないけれど、言葉以上に優しさが伝わる方法を銀八は知っていた。

「ま、夢は何処まで行っても夢だ。一日過ごす内に忘れるだろうよ」
「そうアルか?」
「おう。お前記憶力悪いしな」
「失礼アル!訴えるアル!」
「誰に何を訴えるっつうんだ、この馬鹿。そんな言葉はテストでころころ鉛筆を使わなくなってから口にしろ。──それより、ホレ」
「?何アルか?」
「授業サボったペナルティだよ。明日までに提出な」
「えー!?マジカ!?」
「マジ、マジ、大マジ。提出しなかったら補習だから」

 手渡されたプリントは、ざっと見ても十枚はある。授業をサボったペナルティにしては重過ぎないだろうか。恨みがましい瞳で見上げても、銀八は飄々とした顔を崩さない。むっと頬を膨らませ唇を尖らせれば、むにゅと片手で摘まれた。

「高杉の野郎は?」
「え?」
「一緒に居たんだろ?あいつは何処だ?」
「・・・・・・多分、まだ屋上に居るアル」

 じっとりとした眼差しに早々に白状する。脳裏に裏切り者がと睨みつける晋助の姿が過ぎったが、そんなものよりわが身の保身だ。銀八の機嫌が良くないのを肌で感じ取った今、逆らう気はまるでない。
 素直に返事をしたのが良かったのだろう。少しだけ怒気を和らげた銀八はレロレロキャンディーを口からだし、一つため息を吐いた。そのままの仕草で近寄ると、ぽそり、と小さな声で告げる。

「今日の夕飯、卵かけご飯だから。家に帰ったらすぐに飯炊いとけ」
「・・・うん!」

 お隣さん特権で招かれる夕食に、神楽は嬉しくて頷いた。




 あの夢は本当にただの夢だったのだろうか。あれから随分と時が経った今、神楽は不意に思い出す。臨場感に溢れ忘れるには印象的過ぎた、現実味に溢れるあの夢を。
 登場人物は誰もが個性を持ち、それぞれの生活を確立していた。神楽は夢の中で一年を過ごし、毎日をどのように生きていたかも覚えている。
 現実世界ではまず経験しない何かを殺めた感触も、生々しくて怖かった。拳を振るうたびに得た感情も、虚しさも寂寥も覚えている。
 あれは本当に夢だったのだろうか。
 あちらの世界では見上げることが出来なかった青空を直視する。十四歳の神楽はこの空に憧れ、太陽に焦がれていた。太陽に嫌われた一族だから、きっと尚更。
 もしかしたら。もしかしたら、あれはただの夢ではなく、パラレルワールドだったのかもしれない。口にすれば隣に眠る人に笑われるだろうから、この考えはきっと墓まで持ち越すことになるのだろう。夢の中の登場人物の一人であった彼に手を伸ばし、その前髪を掻き分ける。
 眠っていると端整な顔立ちが際立ち、起きているときと別人のように幼い。秀でた額に口付けを落とすと、彼の横に納まった。隣の温もりに手を伸ばせば、起きてるのかと疑いたくなるタイミングで体が抱きしめられる。訝しく思い視線を上げたが、規則的な呼吸は変わらない。それに小さく微笑み神楽もゆっくりと瞼を閉じた。
 視界が闇に落ちていく。
 ウサギは声帯を持たない。けれど一般的な動物と違っても、悲鳴を上げることはある。
 もしあの世界がもう一つの神楽の住まいであるならば。この穏やかな感情を与えてくれる人が、傷ついた少女の隣にあるのを心から祈る。

 

拍手[5回]

■エピローグ




 大き目の黒い服に眉根を寄せる。少し素材が硬く感じるのは、きっとこの服がまだ卸し立てだからだろう。首元に巻いたスカーフが窮屈な気がして指を突っ込んで調整する。呼吸が楽になると、ようやく一歩を踏み出した。
 和風の部屋から抜け出ると、長い廊下を只管に歩く。小さく軋みを上げる廊下にも、賑やかな話し声にもようやく慣れた。幾つか角を曲がると、目的の場所まで辿り着く。

「おはよーアル!」

 元気に声を上げて障子を開ければ、軽やかな声にざわめきが一瞬止まり。

『おはよーございます!チャイナさん!!』

 野太い合唱が大きく響いた。満面の笑みで迎えてくれるむさ苦しい男達をかき分けて自分の指定席に潜り込む。その間にも左右から伸ばされる掌が幾度も桃色の髪を撫でた。それを厭うでもなく好きにさせれば、さらさらの髪が僅かに乱れる。 
 左右の席はもう埋まっている指定席に、その姿のまま座り込んだ。

「おっせーぞ、チャイナ。朝食は7時だっていつも言ってンだろ」
「寝すぎると、ただでさえ少ない脳みそが蒸発しちゃいますぜィ」

 黒髪の硬質な顔立ちの美青年に、金茶の優男風の美男子。タイプの違う色男に両側を挟まれても神楽の表情はピクリとも動かない。自らも並び立つものが少ない美貌を動かすことなく、神楽はひょいと肩を竦めた。首を越すくらいの短さになり、随分と軽くなった頭を振ってにたりと笑う。愛らしい容姿に似合わない表情は、なのに不思議なほど少女には似合う。

「やれやれ。乙女は身支度に時間がかかるのは常識アル。これだからもてない男は」

 首を振ると、左隣の金茶の髪の男と同程度の長さの桃色の髪が頬を掠めた。神楽の皮肉にスッと一瞬目を細めた沖田は、やはり無表情なままに応戦する。

「乙女?乙女なんて此処にいましたかィ?仮にも武装警察真選組の屯所に?悪いけど一度もここで女なんか見たことないねィ」
「ああん?私のどこを見ると女以外の何かにみえるって言うんですか、コノヤロー」

 額を押し付け合い、ギリギリと睨みあう二人は、一見すれば人形のように端整な面立ちの似合いのカップルに見えなくもないのに、小憎らしい表情で互いを貶める日課に予断はない。毎日の恒例とも言える遣り取りに土方はため息を漏らし、正面に座る近藤は高らかに笑い声を上げた。それは聞くものを不快にさせるものではなく、思わず和んでしまうほど裏表がない快活さを持ち、毒気を抜かれた二人は眼垂れあいながらも額を離す。

「まあまあ、二人とも。朝飯ぐらいは仲良く食おうや」
「チッ、ウルセーゴリラが」
「もてない男筆頭のゴリラが」
「え?オレを責めるの?オレ、何か悪い事した!?」

 先ほどまで喧嘩していたとは思えない息の合い方をする二人に、近藤は戸惑ったような声を上げる。相性最悪と常々豪語する二人は、時に他の追随を許さぬコンビネーションを見せる瞬間があった。苛立ち混じりに舌打ちした素直じゃない二人が、何だかんだ言いつつも言う事を聞くのは目の前の男の言葉だからだ。何もかもを包み込む器を持った近藤を、彼らは密かに尊敬している。
 神楽の為そうとした望みは叶わなかったけど、代わりに得たものもある。以前と違う環境に場所。復讐は果たせなかったけど、それでも神楽は満足だ。燻る火種は胸の奥に仕舞い、きっと二度と顔を出さない。
 真選組の人間は鷹揚だった。全員神楽自身が殺しかけたのに、わだかまりの『わ』の字も出さない。馬鹿な奴らだ、と思う。馬鹿で、馬鹿で大馬鹿で、でも大馬鹿だけど気持ちがいい奴らだ。
 鬼の副長は無言でご飯にマヨネーズを只管練って、マイペースなサド王子は神楽の後ろから土方にちょっかいを出す。鈍感な局長は、それを見て呵呵大笑。釣られた隊士も呵呵大笑。
 居心地のいい場所。もう戻れないと思っていた陽だまりの中神楽は笑う。それは、本当に奇跡だ。



 あの日、神楽は一人で死ぬつもりだった。江戸の象徴を全てを破壊しつくして、それを道連れに終わる気だった。なのに、この馬鹿な男達はその身をもって全力で止めた。
 手加減なんか一切していない。振るう傘に迷いはなく、目的の為に躊躇もなかった。負ける要素はなかったはずの戦いで、それでも非力なはずの人間に夜兎である神楽は敗れ去った。
 どうしようもない程強引な手管。彼らを気絶させた後、向かうはずだった江戸城の仕掛けが爆発し、炎上した柱に巻かれ長かった髪は短くなった。
 罪が消え去ったわけではない。汚した手は一生血に濡れたまま。それでも、監視という名目で彼らは神楽を懐にしまいこんだ。これから先、一生を真選組で過ごさなくてはいけない。犯罪者のレッテルも消えない。罪を償えと近藤は言い、守ってやると宣言した。自由を失い鎖で繋がれる。篭に閉じ込められたと同様の一生が神楽を待っているが、幸せは沢山転がっていた。万事屋のメンバーにも会いたいだけ会えるし、休日だってないわけじゃない。闇に沈むのではなく、傘を差して陽の下を歩ける。
 悲しんでいる時間は終わった。復讐したくても、自分は彼らに止められてしまう。全てを捨てても果たしたい願いだったのに、──自分が止まる、言い訳が出来た。それにどうしようもない程安堵した自分がいた。
 大丈夫。
 喧騒に包まれた食堂で、顔を俯ける。拳を開いて手に色がついてないのに微笑んだ。

(私はもう、大丈夫アル。パピー)

 穏やかな気持ちは表情に出る。何も知らないフリしてその安らかな顔を真選組の隊士が覗いてるのに、神楽は気づかない。それほどに彼らに心を許していた。
 大丈夫。
 もう一度だけ心の中で囁くと、思い出の中の父親が穏やかに笑ったような気がした。

拍手[2回]

フリーエリア
Template & Icon by kura07 / Photo by Abundant Shine
Powered by [PR]
/ 忍者ブログ