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青嵐
--お題サイト:afaikさまより--
「お前ってさ」
「はい」
「案外、魔性の女だよな」
「はぁ?」
修兵の言葉に、目の前で暢気に白玉を頬張っていた少女が瞬きを繰り返す。
非番で重要な予定があるわけじゃないと言ったルキアの腕を引いて入った甘味処。
何となく近場の暖簾を潜ったが、そう言えばこうして日が昇る内に共に行動するのは初めてかと気がついてしまった。
夜勤明けの体を押した甲斐がある。連日の徹夜で身体的には疲れが出てるが、精神面では回復は著しい。
きょとりとつり上がり気味の瞳で瞬きを繰り返すさまは、初めて目にしたときから変わらぬあどけなさを残している。
何も知らぬ子供のような顔をしているが、彼女がどれだけ妖艶な様を見せるか知っていた。
昼と夜の差を知るものなど修兵と関係を持ってからほとんどいないだろうが、たまに隠し切れない色気を醸し出す瞬間があり気が気じゃない。
現に口元を指先で拭う仕草すらちらりと覗く艶に胸が騒ぐのに、ルキアときたらてんで無関心だ。
振り回している自覚すらない彼女は、ちゃんと修兵が告白したのを覚えているのだろうか。
ふうっと嘆息すると、白玉に齧り付くルキアにすっと顔を近づけた。
「!!?」
「───なんだ、結構美味いな」
「ひ、檜佐木副隊長殿!?」
口の端についていた善哉を舐め取ると、色白の肌を真っ赤に染め上げて睨んで来るルキアに、獲物を見つけた狼のように瞳を煌かせて笑った。
猫、猫、子猫。
小さな黒猫。
こっちを向いてと強請ってだめなら、無理やりにでも構うだけ。
--お題サイト:afaikさまより--
「お前ってさ」
「はい」
「案外、魔性の女だよな」
「はぁ?」
修兵の言葉に、目の前で暢気に白玉を頬張っていた少女が瞬きを繰り返す。
非番で重要な予定があるわけじゃないと言ったルキアの腕を引いて入った甘味処。
何となく近場の暖簾を潜ったが、そう言えばこうして日が昇る内に共に行動するのは初めてかと気がついてしまった。
夜勤明けの体を押した甲斐がある。連日の徹夜で身体的には疲れが出てるが、精神面では回復は著しい。
きょとりとつり上がり気味の瞳で瞬きを繰り返すさまは、初めて目にしたときから変わらぬあどけなさを残している。
何も知らぬ子供のような顔をしているが、彼女がどれだけ妖艶な様を見せるか知っていた。
昼と夜の差を知るものなど修兵と関係を持ってからほとんどいないだろうが、たまに隠し切れない色気を醸し出す瞬間があり気が気じゃない。
現に口元を指先で拭う仕草すらちらりと覗く艶に胸が騒ぐのに、ルキアときたらてんで無関心だ。
振り回している自覚すらない彼女は、ちゃんと修兵が告白したのを覚えているのだろうか。
ふうっと嘆息すると、白玉に齧り付くルキアにすっと顔を近づけた。
「!!?」
「───なんだ、結構美味いな」
「ひ、檜佐木副隊長殿!?」
口の端についていた善哉を舐め取ると、色白の肌を真っ赤に染め上げて睨んで来るルキアに、獲物を見つけた狼のように瞳を煌かせて笑った。
猫、猫、子猫。
小さな黒猫。
こっちを向いてと強請ってだめなら、無理やりにでも構うだけ。
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取材陣に捕まったチームメイトの隙間を抜けて一人戻った控え室。
迷わずに『私服』に着替え終えると、黒縁眼鏡を掛けなおし顔を隠すように深々とキャスケットを被る。
赤いTシャツの上から黒のジャケットを羽織り、鞄から携帯を取り出した。
不在着信が一件。誰かは確認しなくてもわかる。
嘆息しポケットに仕舞うと、丁度のタイミングで室内にノックが響いた。
「守ー、開けるよー」
「おう、いいぞー」
軽い声に返事をすると、間髪いれず勢い良くドアが開く。
凄いスピードだなと呆れ半分感心半分で見ていると、要領よく室内に入った一之瀬の後ろにいた土門の顔面に音を立ててドアがヒットした。
無言で鼻を押さえて蹲りながら悶絶する親友へ目もくれずに入室した一之瀬が、円堂を見て小首を傾げる。
訝しげに眉が寄せられ、じとりとした瞳を向けた。
「雷門に帰るんじゃないの?」
「帰るぞ」
「なら、どうして着替えてるのさ。皆と帰るなら着替えは必要ないだろ。インタビューや雑誌の撮影は?」
「俺の立場で出れるわけねぇだろ。ってか、お前土門少しは心配してやれよ。声もなく悶絶してるぞ」
チワワのように噛み付く一之瀬の頭を撫でると、彼の後ろで蹲る土門の傍にしゃがみ込む。
涙目で見上げた彼の鼻は真っ赤で、思わず笑ってしまったら、恨めしそうな顔で睨まれた。
「えーんーどーうー」
「いや、ごめんって!涙目になってるのが予想外に可愛くてさ」
「笑って謝っても誠意は感じない」
「んじゃ、痛くなくなるおまじないでもしてやろうか?」
「・・・・・・嫌な予感がするからいい」
「何だよ、こんなに可愛い女の子からチューしてもらえるのに嫌なのか?」
「っ!?お前は!もう少し恥じらいを持て!!」
冗談だったのだが、顔を真っ赤にして勢い良く後ずさる土門の反応がツボにはまる。
痛めた鼻を押さえたままで全力で後ろに下がったので、壁に当たって結構いい音がした。
可哀想に無駄に怪我を増やして痛みを堪えながらも、こちらを警戒する眼差しは止まなくて、くつくつと喉を震わしていたらこちらも背中に衝撃が走った。
ちらり、と視線だけ向けると面白くなさそうに頬をぱんぱんに膨らませた一之瀬がいて、手を伸ばして頭を撫でる。
この二年間できっちりと癖になった仕草だが、目を細めて心地よさげにしている様子は子猫のようだ。
最も、彼の本質はもっと骨太で芯が通った猛獣のほうが近いだろうけど。
「ほら離れろ一哉。俺、待ち合わせに遅れちゃうよ」
「───一人で、どこかに行ったら嫌だ」
「一哉・・・、大丈夫、ちゃんと帰ってくるよ」
「約束できる?」
「出来るよ」
差し出された小指に、苦笑しながら小指を絡める。
幼い仕草で指を振る彼の瞳は真剣そのもので、嘘を許さない妥協のない心が伝わった。
本当は、こんな約束に意味はない。
誰よりも理解しながらも、一之瀬に笑顔で頷いて見せた。
円堂の行為に安堵したように息を漏らした一之瀬は、ゆっくりと顔を近づける。
背中に負ぶさったまま近づく顔を瞬きせずに眺めていると、不意に彼の姿が消えた。
「土門?」
「いきなり発情するなよ、一之瀬。俺も居るんだからな」
「・・・親友だったら空気を読んでよ」
「親友だから犯罪に走らないように止めてやったんだろ。っていうか、お前も早く準備しろよ。西垣が待ってる」
不満を訴える一之瀬を、猫の子を捕らえるように襟首を掴んでぶらぶらと吊り下げながら呆れたように嘆息した土門は、視線をこちらに向けた。
一之瀬ほどあからさまじゃないけれど、一之瀬より余程警戒している視線に苦笑する。
土門は他人の感情の機微を読むのがとても上手い。まだ隠していることがあるのにも気づいているだろうし、それを不満に思いつつさらに心配してくれている。
彼はきっと、雷門サッカー部の中で一番精神的に大人なのだろう。
距離を取る術や、さりげなくフォローするのがとても上手い。けれど半面、子供らしく無邪気に甘えて我侭は言えない。
正反対の一之瀬と比べると差は余計に顕著で、要領が良さそうなのに悪い奴だなぁと微笑ましくなる。
円堂からしたら、一之瀬も土門も可愛い年下でしかないのに。
「他のやつらには消えるの言っておいたのか?」
「ああ、一応。豪炎寺の背中に張り紙つけといた。『所用があるからインタビューはお願いね(はぁと)』って」
「・・・・・・・・・お前ね」
「でもそれだけだと足りないと怒られそうだから、染岡の背中にも張っておいた。『家の事情で早退します。キャプテンマークは風丸へ☆』って」
「時々お前の図太さを呆れればいいのか感心すればいいのか迷うよ、俺は。豪炎寺はともかく、あの染岡に良くやるなぁ」
「ふはははは、真っ赤になって怒るのが目に浮かぶよな。あんまりマスコミの前に顔を出したくないんだ、俺。一応風丸にはきちんと理由を話しておいたから大丈夫」
「・・・鬼道さんには何も言ってないのか?」
「まあね。色々と都合があるんだよ、俺にも」
ぱちりとウィンクをしたら渋い表情で首を振られた。
大方厄介な話を聞いてしまったと思っているのだろうが、一度耳にした言葉は消えない。
これ以上突っ込むのならお前も同罪だと遠まわしに訴えれば、ため息一つで諦めたのかひょいと肩を竦めた。
物分りのいい年下の少年に微笑むと、彼らの格好に気がつき笑う。
この時間にここに居るということは、目の前の二人もインタビューを抜けてきたということだろう、
ならば考えられる相手などひとりしか居ない。
「西垣に会ったらさ、今度また一緒にサッカーしようって誘っといて。いっそ、木戸川清修と練習試合でもいいかもなぁ。あいつら上手いし、武方三兄弟だって実力は一級だ。それに、コント見てるみたいで面白いし」
「───後半は省いて伝えとくよ。多分、喜ぶ。西垣、円堂のサッカーが好きみたいだからな」
「ははっ、そりゃ嬉しいねぇ。俺もあいつのサッカー好きだよ。・・・それじゃ、そろそろ俺は行くな。もう時間がない」
ジャケットのポケットから取り出した懐中時計を開けると、待ち合わせの時間は十分後だった。
それまでに記者に見つからないよう出口まで辿り着かなければならない。
ぱっとみのイメージは変えているが、マスコミは中々侮れない。
万が一にでも過去を放送されるのは困る。今の段階で予定に入っていないのだから。
ずれてしまった帽子のつばを握ると、丁度いい角度に調整した。
鞄も学校指定のものではなく、手ごろなサイズのボストンバックに変えてある。
ギンガムチェックのそれを肩から提げると、部屋の中から見送る二人に手を上げた。
「そんじゃ、一哉、土門。Ciao. Ciao,Ciao,Ciao!」
ひらひらと手を振ってウィンクすると、チャオを言い過ぎと突っ込みながら土門は苦笑し、一之瀬は同じようにチャオを繰り返した。
陽気なイタリア人の挨拶を真似たものだが、ここまで連呼するのは久し振りで少し笑ってしまう。
もしかすると、思っているよりも優勝したことでテンションが上がっているのかもしれない。
服の襟を正しながら廊下を歩きつつ、日本に帰ってからの時間を回想すると、短いながらも濃密で印象深いと気がついた。
雷門に来てから数ヶ月しかたってないのに、もう何年もサッカー部の面々と付き合いがある気がする。
心を許しサッカーをプレイする楽しさは、やはり自分の心の核だと実感してしまった。
仲間とプレイするサッカー。勝つことだけではなく、楽しむサッカー。
サッカーこそが『守』の基準で、心と同じ部分にある。
どうしても捨てられない。生れ落ちた瞬間から魂に刷り込まれているのかもしれない。
だとしたら何という皮肉だろう。
命を懸けてもいいと欲するものにこそ、本当に命を削り取られている。
自分ひとりで生きてきたと言うほど傲慢じゃない。
自分が死んでも誰も悲しまないというほど薄情じゃない。
それでも選びたいものが決まっていて、だからこそ馬鹿になる自分を知っている。
「やっぱ、お嬢様育ちが悪いのかね?それとも生まれ持った貪欲さかな?俺は───欲しいものは全部欲しいんだ」
最高の仲間と最高のサッカーをして死ぬのなら、絶対に悔いは残らない。
短い人生でも、笑って幸せだったと死ねるだろう。
『守』は、そうやって死にたい。
「来たか、守。相変わらず五分前行動を心がけているようだな」
「はい、父さん。時間に遅れるのは好きじゃないんです。無駄に過ごしたくはありませんから」
「───そうか。私との約束を覚えているか?」
「ええ。私が試合に出る代わりに、勝っても負けてもひと段落着いたら絶対に検査を受ける。父さんの力添えもあり、私は無事に試合に出場を果たし優勝を収めることが出来ました。ありがとうございます」
「ならば、私の条件に異論はないな?」
「勿論です」
「検査は近くの国立病院で行う。心臓病の権威の医者がドイツから帰ってきているからな。結果次第では、暫く通院をしてもらう」
「はい。ですが」
「サッカーは止めない。判っている。お前は、そういう頑固な子だ」
泣き出しそうな顔で笑う父に、『守』は笑顔を返した。
自分こそ今にも涙が零れそうな顔で居るのに、強がりな少女は気づかない。
迷わずに『私服』に着替え終えると、黒縁眼鏡を掛けなおし顔を隠すように深々とキャスケットを被る。
赤いTシャツの上から黒のジャケットを羽織り、鞄から携帯を取り出した。
不在着信が一件。誰かは確認しなくてもわかる。
嘆息しポケットに仕舞うと、丁度のタイミングで室内にノックが響いた。
「守ー、開けるよー」
「おう、いいぞー」
軽い声に返事をすると、間髪いれず勢い良くドアが開く。
凄いスピードだなと呆れ半分感心半分で見ていると、要領よく室内に入った一之瀬の後ろにいた土門の顔面に音を立ててドアがヒットした。
無言で鼻を押さえて蹲りながら悶絶する親友へ目もくれずに入室した一之瀬が、円堂を見て小首を傾げる。
訝しげに眉が寄せられ、じとりとした瞳を向けた。
「雷門に帰るんじゃないの?」
「帰るぞ」
「なら、どうして着替えてるのさ。皆と帰るなら着替えは必要ないだろ。インタビューや雑誌の撮影は?」
「俺の立場で出れるわけねぇだろ。ってか、お前土門少しは心配してやれよ。声もなく悶絶してるぞ」
チワワのように噛み付く一之瀬の頭を撫でると、彼の後ろで蹲る土門の傍にしゃがみ込む。
涙目で見上げた彼の鼻は真っ赤で、思わず笑ってしまったら、恨めしそうな顔で睨まれた。
「えーんーどーうー」
「いや、ごめんって!涙目になってるのが予想外に可愛くてさ」
「笑って謝っても誠意は感じない」
「んじゃ、痛くなくなるおまじないでもしてやろうか?」
「・・・・・・嫌な予感がするからいい」
「何だよ、こんなに可愛い女の子からチューしてもらえるのに嫌なのか?」
「っ!?お前は!もう少し恥じらいを持て!!」
冗談だったのだが、顔を真っ赤にして勢い良く後ずさる土門の反応がツボにはまる。
痛めた鼻を押さえたままで全力で後ろに下がったので、壁に当たって結構いい音がした。
可哀想に無駄に怪我を増やして痛みを堪えながらも、こちらを警戒する眼差しは止まなくて、くつくつと喉を震わしていたらこちらも背中に衝撃が走った。
ちらり、と視線だけ向けると面白くなさそうに頬をぱんぱんに膨らませた一之瀬がいて、手を伸ばして頭を撫でる。
この二年間できっちりと癖になった仕草だが、目を細めて心地よさげにしている様子は子猫のようだ。
最も、彼の本質はもっと骨太で芯が通った猛獣のほうが近いだろうけど。
「ほら離れろ一哉。俺、待ち合わせに遅れちゃうよ」
「───一人で、どこかに行ったら嫌だ」
「一哉・・・、大丈夫、ちゃんと帰ってくるよ」
「約束できる?」
「出来るよ」
差し出された小指に、苦笑しながら小指を絡める。
幼い仕草で指を振る彼の瞳は真剣そのもので、嘘を許さない妥協のない心が伝わった。
本当は、こんな約束に意味はない。
誰よりも理解しながらも、一之瀬に笑顔で頷いて見せた。
円堂の行為に安堵したように息を漏らした一之瀬は、ゆっくりと顔を近づける。
背中に負ぶさったまま近づく顔を瞬きせずに眺めていると、不意に彼の姿が消えた。
「土門?」
「いきなり発情するなよ、一之瀬。俺も居るんだからな」
「・・・親友だったら空気を読んでよ」
「親友だから犯罪に走らないように止めてやったんだろ。っていうか、お前も早く準備しろよ。西垣が待ってる」
不満を訴える一之瀬を、猫の子を捕らえるように襟首を掴んでぶらぶらと吊り下げながら呆れたように嘆息した土門は、視線をこちらに向けた。
一之瀬ほどあからさまじゃないけれど、一之瀬より余程警戒している視線に苦笑する。
土門は他人の感情の機微を読むのがとても上手い。まだ隠していることがあるのにも気づいているだろうし、それを不満に思いつつさらに心配してくれている。
彼はきっと、雷門サッカー部の中で一番精神的に大人なのだろう。
距離を取る術や、さりげなくフォローするのがとても上手い。けれど半面、子供らしく無邪気に甘えて我侭は言えない。
正反対の一之瀬と比べると差は余計に顕著で、要領が良さそうなのに悪い奴だなぁと微笑ましくなる。
円堂からしたら、一之瀬も土門も可愛い年下でしかないのに。
「他のやつらには消えるの言っておいたのか?」
「ああ、一応。豪炎寺の背中に張り紙つけといた。『所用があるからインタビューはお願いね(はぁと)』って」
「・・・・・・・・・お前ね」
「でもそれだけだと足りないと怒られそうだから、染岡の背中にも張っておいた。『家の事情で早退します。キャプテンマークは風丸へ☆』って」
「時々お前の図太さを呆れればいいのか感心すればいいのか迷うよ、俺は。豪炎寺はともかく、あの染岡に良くやるなぁ」
「ふはははは、真っ赤になって怒るのが目に浮かぶよな。あんまりマスコミの前に顔を出したくないんだ、俺。一応風丸にはきちんと理由を話しておいたから大丈夫」
「・・・鬼道さんには何も言ってないのか?」
「まあね。色々と都合があるんだよ、俺にも」
ぱちりとウィンクをしたら渋い表情で首を振られた。
大方厄介な話を聞いてしまったと思っているのだろうが、一度耳にした言葉は消えない。
これ以上突っ込むのならお前も同罪だと遠まわしに訴えれば、ため息一つで諦めたのかひょいと肩を竦めた。
物分りのいい年下の少年に微笑むと、彼らの格好に気がつき笑う。
この時間にここに居るということは、目の前の二人もインタビューを抜けてきたということだろう、
ならば考えられる相手などひとりしか居ない。
「西垣に会ったらさ、今度また一緒にサッカーしようって誘っといて。いっそ、木戸川清修と練習試合でもいいかもなぁ。あいつら上手いし、武方三兄弟だって実力は一級だ。それに、コント見てるみたいで面白いし」
「───後半は省いて伝えとくよ。多分、喜ぶ。西垣、円堂のサッカーが好きみたいだからな」
「ははっ、そりゃ嬉しいねぇ。俺もあいつのサッカー好きだよ。・・・それじゃ、そろそろ俺は行くな。もう時間がない」
ジャケットのポケットから取り出した懐中時計を開けると、待ち合わせの時間は十分後だった。
それまでに記者に見つからないよう出口まで辿り着かなければならない。
ぱっとみのイメージは変えているが、マスコミは中々侮れない。
万が一にでも過去を放送されるのは困る。今の段階で予定に入っていないのだから。
ずれてしまった帽子のつばを握ると、丁度いい角度に調整した。
鞄も学校指定のものではなく、手ごろなサイズのボストンバックに変えてある。
ギンガムチェックのそれを肩から提げると、部屋の中から見送る二人に手を上げた。
「そんじゃ、一哉、土門。Ciao. Ciao,Ciao,Ciao!」
ひらひらと手を振ってウィンクすると、チャオを言い過ぎと突っ込みながら土門は苦笑し、一之瀬は同じようにチャオを繰り返した。
陽気なイタリア人の挨拶を真似たものだが、ここまで連呼するのは久し振りで少し笑ってしまう。
もしかすると、思っているよりも優勝したことでテンションが上がっているのかもしれない。
服の襟を正しながら廊下を歩きつつ、日本に帰ってからの時間を回想すると、短いながらも濃密で印象深いと気がついた。
雷門に来てから数ヶ月しかたってないのに、もう何年もサッカー部の面々と付き合いがある気がする。
心を許しサッカーをプレイする楽しさは、やはり自分の心の核だと実感してしまった。
仲間とプレイするサッカー。勝つことだけではなく、楽しむサッカー。
サッカーこそが『守』の基準で、心と同じ部分にある。
どうしても捨てられない。生れ落ちた瞬間から魂に刷り込まれているのかもしれない。
だとしたら何という皮肉だろう。
命を懸けてもいいと欲するものにこそ、本当に命を削り取られている。
自分ひとりで生きてきたと言うほど傲慢じゃない。
自分が死んでも誰も悲しまないというほど薄情じゃない。
それでも選びたいものが決まっていて、だからこそ馬鹿になる自分を知っている。
「やっぱ、お嬢様育ちが悪いのかね?それとも生まれ持った貪欲さかな?俺は───欲しいものは全部欲しいんだ」
最高の仲間と最高のサッカーをして死ぬのなら、絶対に悔いは残らない。
短い人生でも、笑って幸せだったと死ねるだろう。
『守』は、そうやって死にたい。
「来たか、守。相変わらず五分前行動を心がけているようだな」
「はい、父さん。時間に遅れるのは好きじゃないんです。無駄に過ごしたくはありませんから」
「───そうか。私との約束を覚えているか?」
「ええ。私が試合に出る代わりに、勝っても負けてもひと段落着いたら絶対に検査を受ける。父さんの力添えもあり、私は無事に試合に出場を果たし優勝を収めることが出来ました。ありがとうございます」
「ならば、私の条件に異論はないな?」
「勿論です」
「検査は近くの国立病院で行う。心臓病の権威の医者がドイツから帰ってきているからな。結果次第では、暫く通院をしてもらう」
「はい。ですが」
「サッカーは止めない。判っている。お前は、そういう頑固な子だ」
泣き出しそうな顔で笑う父に、『守』は笑顔を返した。
自分こそ今にも涙が零れそうな顔で居るのに、強がりな少女は気づかない。
太陽が中天に昇る時間帯、一郎太は鉄塔の麓に座り空を見上げる。
商店街にクリスマスイルミネーションが着き始めた季節、身を刺すような冷たい風に体をふるりと震わせた。
少しだけ小さくなった青色のミトンの手袋をすり合わせ、同色のマフラーに顔を埋める。
左端だけ白い毛糸が使われてアクセントになっている、ミトンと同じ毛糸で作られたそれは一郎太の宝物だ。
大好きな幼馴染のお姉ちゃんが作ってくれたプレゼント。去年のクリスマス時期に貰ったのだが、『カシミアの毛糸』とやらで編まれたミトンとマフラーは肌触りも良く心地いい。
何よりも、一郎太のために作られた気持ちが嬉しかった。
大好きなお姉ちゃんとあまり会えないのは寂しいが、その分手紙を良くもらえる。
大きくなったら迎えに行くと決めているし、それまでの我慢だ。
寒さだけではなく赤らむ頬に目を伏せ、きょろきょろと周りを見る。
約束の時間まであと五分。時間を過ぎてもこないようなら待たずに家に帰るという約束だが、今まで一度も間に合わなかったことはなかったから心配していない。
地べたに体育座りをして町並みを眺めていると、頬に暖かい何かが当てられた。
びくり、と条件反射で体が震え顔を上げる。切れ長の瞳が見開かれ、徐々に綻んだ。
「まも姉!!」
「よっす、ちろた。久し振り。元気でいい子にしてたか?」
「うん!」
紺色のダッフルコートを着てキャスケットの中に長い髪を纏めている少女は、栗色の綺麗な瞳を猫のように細める。
コートの下から伸びるのは黒のパンツで、同色のブーツもきっちりと履きこなしていた。長いマフラーが風に揺れると、胸元に収まる。
お洒落な格好で悪戯っぽく微笑んでいる幼馴染に伸び上がって抱きつくと、ぎゅっと抱きしめ返された。
先回会ったのはまだひぐらしが鳴いていた頃なので、もう三ヶ月近くぶりに顔を見て話すことになる。
手紙はよく貰うが吐息を感じる距離がやっぱり嬉しい。守の両親が生きていた頃は毎日のように一緒に遊んだのに、それを思うと少しだけ不満だ。
けど、あのときの彼女を覚えているから、笑ってくれている今が大切だった。
寂しいけれど、笑顔で居てくれる方がずっとずっと大事だったから。
「んー?前に会った時より背が伸びたか?」
「2cm伸びた!俺、成長期なんだ!まも姉なんかすぐに抜いちゃうよ」
「そっか、ちろたは成長期か。そりゃ俺も頑張って背を伸ばさなきゃな」
「それじゃ追いつけないじゃないか。まも姉は伸びなくていいんだ」
「ははっ、それだと俺も困るだろ。チビのまんまじゃサッカーが上手くなれない」
「・・・でも、大きくなったら俺が追いつけないよ」
頬を指先で擽られ、首を竦めて上目遣いに訴える。
追いつけなかったら『お嫁さんになって』といつまで経っても言えない。
一郎太の夢は、いつか守よりも大きくなって、彼女を守れるくらいに強くなって、結婚してずっと一緒に暮らすこと。
守が遠くに行ってしまい毎日泣いていた自分に、『お嫁さんになってもらえばずっと一緒に居られる』と教えてくれたのは、娘が欲しいと言っていた母だ。
お気に入りの守が来てくれれば、きっと喜んでくれるに違いない。
「まも姉は、俺よりサッカーが大事なんだ」
「───あのな、比べれるようなもんじゃないだろ。サッカーはサッカー、ちろたはちろた。俺にとってはどっちも大事だ」
「嘘だ。だって、まも姉前よりも会いに来てくれなくなった。弟が出来たから、俺はいらなくなったんだ」
「ちろた」
「まも姉はずっと俺だけのお姉ちゃんだったのに、ずるい」
目の前のコートを握り唇を噛んで俯く。肩口に額を乗せると、優しい手が伸びてきてゆっくりと髪を梳かれた。
懐かしい感覚に瞳を細めて甘やかされた猫のようにうっとりとする。本物の猫だったら、きっとごろごろと喉を鳴らしていただろう。
苛立ちや不安や、とげとげしい気持ちが解けていく。
本当は嫌な部分なんて見せたくない。覚えていて欲しいのは笑顔の自分だ。
鬼道家の娘である彼女から手紙をもらえるだけで特別だと母に教えられた。
今の守は昔の近所に住んでいたただの幼馴染じゃなく、世界に名を響かせる財閥のお嬢様で、稽古や付き合いや色々と制限があって忙しいのだと。
昔から賢く、教えれば何でも出来た守だが、どんなに優れていたとしても一日の時間は増やせない。
会いに来てくれるだけで我慢しなくてはいけないのに、時折どうしても苦しくて仕方なくなる。
本当ならずっと傍に居たのは一郎太のはずなのに、どうして自分じゃない誰かが守の傍に居るのだろうか。
視界がゆらゆらと揺れ、ぽろりと涙が零れ落ちる。
冷えた頬を伝ったそれは、地面に痕を残してく。
「泣くなよ、ちろた。なあ、頼むから」
「うっ、・・・ふ」
「寂しがらせてごめんな。傍に居てやれなくてごめんな。それでも、お前のことを忘れたわけじゃないよ。ちゃんとお前は、俺の大切な幼馴染だよ」
「うー・・・」
「綺麗な髪。俺の大好きなさらさらなこの髪が、肩につくほど伸びる前にまた会いに来る。約束するから」
「本当?俺の髪が伸びる前に、きっと会いに来てくれる?」
「ああ。可愛いちろたの髪が伸びたら、女の俺より可愛くなっちまうからな」
「可愛いって言うな。俺は男だ」
「判ってるよ、ちーろた」
こつりと額を突き合わせ、自分より高い位置にある栗色の瞳と目を合わせる。
綺麗な瞳に嘘はないか、探るように見詰めてこくりと頷く。
抱きついていた体から距離を取ると、すっと右手を差し出した。
「約束」
「ん、リョーカイ。約束だ」
「ゆーびきりげんまん嘘ついたら針千本のーます」
「指切った」
昔、よく繰り返した約束の方法。
夕日が沈むたびにまだ遊びたいとぐずる一郎太にこれを教えたのは守だ。
涙で引きつる顔に笑みを浮かべると、嬉しそうに守も笑った。
「そうだ!これ、プレゼントだ。手袋と、あと今年は帽子。マフラーはまだ使えるだろうから、これにしたんだ」
守の目の色と同じ栗色のミトンの手袋を手渡され、両手でぎゅっと握りこむ。
瞳を輝かせた一郎太の頭に同色の帽子を被せるとよく似合うと守は笑った。
「やっぱちろたには垂れた犬耳だな。可愛い可愛い」
何を言っているのか良く判らなかったが、褒められているので頬を染めて照れると、ぎゅうっと力いっぱい抱きしめられた。
「まも姉、苦しい」
「ふふふ、我慢しろ。会えない分だけチャージしなきゃな」
「チャージ?」
「ちろたをいっぱい記憶しておくの。そしたら離れててもすぐに思い出せるだろう?」
「うん!じゃあ、俺もいっぱいまも姉をチャージする」
「おう、しろしろ」
ぎゅうぎゅうに抱きしめあうと、冬の日でも寒くない。
心も体も温かくて、誕生日よりクリスマスより、ずっとずっと楽しくて嬉しい。
どんなプレゼントよりも、彼女の存在が一番の贈り物。
「さあ、ちろた、聞かせてくれよ。俺が居ない間に、お前はどんな風に暮らしてたんだ?学校はどうだ?楽しいか?」
「あのね───」
守のロングマフラーに二人で包まると、伝えたかったことを拙いながらも必死に口にする。
いつだって受け取るばかりの一方通行の言葉が重なるこの時間は、一郎太の宝物だった。
商店街にクリスマスイルミネーションが着き始めた季節、身を刺すような冷たい風に体をふるりと震わせた。
少しだけ小さくなった青色のミトンの手袋をすり合わせ、同色のマフラーに顔を埋める。
左端だけ白い毛糸が使われてアクセントになっている、ミトンと同じ毛糸で作られたそれは一郎太の宝物だ。
大好きな幼馴染のお姉ちゃんが作ってくれたプレゼント。去年のクリスマス時期に貰ったのだが、『カシミアの毛糸』とやらで編まれたミトンとマフラーは肌触りも良く心地いい。
何よりも、一郎太のために作られた気持ちが嬉しかった。
大好きなお姉ちゃんとあまり会えないのは寂しいが、その分手紙を良くもらえる。
大きくなったら迎えに行くと決めているし、それまでの我慢だ。
寒さだけではなく赤らむ頬に目を伏せ、きょろきょろと周りを見る。
約束の時間まであと五分。時間を過ぎてもこないようなら待たずに家に帰るという約束だが、今まで一度も間に合わなかったことはなかったから心配していない。
地べたに体育座りをして町並みを眺めていると、頬に暖かい何かが当てられた。
びくり、と条件反射で体が震え顔を上げる。切れ長の瞳が見開かれ、徐々に綻んだ。
「まも姉!!」
「よっす、ちろた。久し振り。元気でいい子にしてたか?」
「うん!」
紺色のダッフルコートを着てキャスケットの中に長い髪を纏めている少女は、栗色の綺麗な瞳を猫のように細める。
コートの下から伸びるのは黒のパンツで、同色のブーツもきっちりと履きこなしていた。長いマフラーが風に揺れると、胸元に収まる。
お洒落な格好で悪戯っぽく微笑んでいる幼馴染に伸び上がって抱きつくと、ぎゅっと抱きしめ返された。
先回会ったのはまだひぐらしが鳴いていた頃なので、もう三ヶ月近くぶりに顔を見て話すことになる。
手紙はよく貰うが吐息を感じる距離がやっぱり嬉しい。守の両親が生きていた頃は毎日のように一緒に遊んだのに、それを思うと少しだけ不満だ。
けど、あのときの彼女を覚えているから、笑ってくれている今が大切だった。
寂しいけれど、笑顔で居てくれる方がずっとずっと大事だったから。
「んー?前に会った時より背が伸びたか?」
「2cm伸びた!俺、成長期なんだ!まも姉なんかすぐに抜いちゃうよ」
「そっか、ちろたは成長期か。そりゃ俺も頑張って背を伸ばさなきゃな」
「それじゃ追いつけないじゃないか。まも姉は伸びなくていいんだ」
「ははっ、それだと俺も困るだろ。チビのまんまじゃサッカーが上手くなれない」
「・・・でも、大きくなったら俺が追いつけないよ」
頬を指先で擽られ、首を竦めて上目遣いに訴える。
追いつけなかったら『お嫁さんになって』といつまで経っても言えない。
一郎太の夢は、いつか守よりも大きくなって、彼女を守れるくらいに強くなって、結婚してずっと一緒に暮らすこと。
守が遠くに行ってしまい毎日泣いていた自分に、『お嫁さんになってもらえばずっと一緒に居られる』と教えてくれたのは、娘が欲しいと言っていた母だ。
お気に入りの守が来てくれれば、きっと喜んでくれるに違いない。
「まも姉は、俺よりサッカーが大事なんだ」
「───あのな、比べれるようなもんじゃないだろ。サッカーはサッカー、ちろたはちろた。俺にとってはどっちも大事だ」
「嘘だ。だって、まも姉前よりも会いに来てくれなくなった。弟が出来たから、俺はいらなくなったんだ」
「ちろた」
「まも姉はずっと俺だけのお姉ちゃんだったのに、ずるい」
目の前のコートを握り唇を噛んで俯く。肩口に額を乗せると、優しい手が伸びてきてゆっくりと髪を梳かれた。
懐かしい感覚に瞳を細めて甘やかされた猫のようにうっとりとする。本物の猫だったら、きっとごろごろと喉を鳴らしていただろう。
苛立ちや不安や、とげとげしい気持ちが解けていく。
本当は嫌な部分なんて見せたくない。覚えていて欲しいのは笑顔の自分だ。
鬼道家の娘である彼女から手紙をもらえるだけで特別だと母に教えられた。
今の守は昔の近所に住んでいたただの幼馴染じゃなく、世界に名を響かせる財閥のお嬢様で、稽古や付き合いや色々と制限があって忙しいのだと。
昔から賢く、教えれば何でも出来た守だが、どんなに優れていたとしても一日の時間は増やせない。
会いに来てくれるだけで我慢しなくてはいけないのに、時折どうしても苦しくて仕方なくなる。
本当ならずっと傍に居たのは一郎太のはずなのに、どうして自分じゃない誰かが守の傍に居るのだろうか。
視界がゆらゆらと揺れ、ぽろりと涙が零れ落ちる。
冷えた頬を伝ったそれは、地面に痕を残してく。
「泣くなよ、ちろた。なあ、頼むから」
「うっ、・・・ふ」
「寂しがらせてごめんな。傍に居てやれなくてごめんな。それでも、お前のことを忘れたわけじゃないよ。ちゃんとお前は、俺の大切な幼馴染だよ」
「うー・・・」
「綺麗な髪。俺の大好きなさらさらなこの髪が、肩につくほど伸びる前にまた会いに来る。約束するから」
「本当?俺の髪が伸びる前に、きっと会いに来てくれる?」
「ああ。可愛いちろたの髪が伸びたら、女の俺より可愛くなっちまうからな」
「可愛いって言うな。俺は男だ」
「判ってるよ、ちーろた」
こつりと額を突き合わせ、自分より高い位置にある栗色の瞳と目を合わせる。
綺麗な瞳に嘘はないか、探るように見詰めてこくりと頷く。
抱きついていた体から距離を取ると、すっと右手を差し出した。
「約束」
「ん、リョーカイ。約束だ」
「ゆーびきりげんまん嘘ついたら針千本のーます」
「指切った」
昔、よく繰り返した約束の方法。
夕日が沈むたびにまだ遊びたいとぐずる一郎太にこれを教えたのは守だ。
涙で引きつる顔に笑みを浮かべると、嬉しそうに守も笑った。
「そうだ!これ、プレゼントだ。手袋と、あと今年は帽子。マフラーはまだ使えるだろうから、これにしたんだ」
守の目の色と同じ栗色のミトンの手袋を手渡され、両手でぎゅっと握りこむ。
瞳を輝かせた一郎太の頭に同色の帽子を被せるとよく似合うと守は笑った。
「やっぱちろたには垂れた犬耳だな。可愛い可愛い」
何を言っているのか良く判らなかったが、褒められているので頬を染めて照れると、ぎゅうっと力いっぱい抱きしめられた。
「まも姉、苦しい」
「ふふふ、我慢しろ。会えない分だけチャージしなきゃな」
「チャージ?」
「ちろたをいっぱい記憶しておくの。そしたら離れててもすぐに思い出せるだろう?」
「うん!じゃあ、俺もいっぱいまも姉をチャージする」
「おう、しろしろ」
ぎゅうぎゅうに抱きしめあうと、冬の日でも寒くない。
心も体も温かくて、誕生日よりクリスマスより、ずっとずっと楽しくて嬉しい。
どんなプレゼントよりも、彼女の存在が一番の贈り物。
「さあ、ちろた、聞かせてくれよ。俺が居ない間に、お前はどんな風に暮らしてたんだ?学校はどうだ?楽しいか?」
「あのね───」
守のロングマフラーに二人で包まると、伝えたかったことを拙いながらも必死に口にする。
いつだって受け取るばかりの一方通行の言葉が重なるこの時間は、一郎太の宝物だった。
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