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「もう、いいかい」

「まーだだよ」

「もういいかい」

「もういいよ」


クスクスと笑いあう声が何処からともなく聞こえる。
視線でひと撫でしても声の主たちの姿は見当たらず、琥一はふうと一つ息を吐き出した。
どうやら今日も彼らは上手く隠れたらしい。
教会の向こうで夕日が沈みかけている。きっと、これは今日最後のかくれんぼ。
そしてその結末がどうあるかも琥一は知っていた。

彼の弟と、妹のような幼馴染は最後にはいつも二人で手を繋いで隠れている。
見つけるのは容易ではないが、それでも決して難しくない。
時々琥一は思う。もしかしたら、二人は見つかるために隠れているのではないかと。
可愛らし容姿をした二人は、琥一よりも余程兄弟に見えた。

少女が来れば琥一と琉夏の遊びは何時だってかくれんぼに変わる。
正義のヒーローごっこも、カンフーアクションも、映画のヒーローにもなれない。
それが琥一には少し不満だが、琉夏はそれでも良いと笑う。

「おーい。どこだ」

態と声を張り上げれば、また何処かでクスクスと笑い声。
近くだとわかっているのに、やはり彼らの姿は見えない。
きっといつもと同じで、中途半端に隠れた少女の手を引いた琉夏と額をつき合わせて笑っているのだろう。
それに混じりたいと琥一は思わない。
隠れるのは彼らで、見つけるのは琥一の役目。
彼らは二人でいることが、琥一にとって意味があった。

「みーつけた」

案の定それほど離れていない場所で、サクラソウに囲まれてしゃがんでいた二人を見つけると、彼らはやはり顔を見合わせて微笑みあった。
しっかりと繋がれた掌。

そんな二人を見て、琥一もゆっくりと顔中に笑顔を浮かべた。

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