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*ルフィたちが海賊王になった後の設定です。



海賊王。
そう呼ばれる男が率いる海賊団にはずば抜けた金額を持つ賞金首の幹部たちが勢ぞろいしている。
個性的で、強くて、勇敢で、信念を持っている。
誰もかもが一級品の腕を持ち、若くして名声と富を手に入れた。





「お前って」
「?」
「ルフィのことが大概好きだよな」
「はぁ?」

珍しく二人きりで船の上で留守番している最中に、唐突に告げられた言葉にナミは嫌そうに顔を顰める。
久しぶりに寄った島で買出し中のメンバーにナミが混ざっていないのは、今日は海図を纏めると決めたからで、ゾロが残ったのは昼寝していて出遅れたからだ。
ちなみに勝手に船を降りようとしたゾロを全力でナミが止めたのは言うまでもない。
チョッパーか誰かが居ればいいのだが、そうでなければ方向音痴のゾロは今日中に船に帰ってこないだろう。
船舶予定は三日なので今日帰ってこなくてもいいが、彼の場合は三日過ぎても帰ってこないに決まっている。
そうしたらログが書き換えられてしまい、次の島へ進めない。
容易に想像できる未来だが、彼を説得するのは簡単じゃなかった。
自分が方向音痴だといい加減に認めればいい。
ルーキーと呼ばれる頃から酷いもんだったが、益々磨きのかかった現在、下手したら『海賊王の相棒、遭難し死亡』なんて記事が出るかもしれない。そんな恥ずかしい噂を背負って生きていくのは嫌だ。
拳を使った説得で何とか引き止めたのは良かったが、午前中寝すぎて眠気が襲ってこないらしい剣士は珍しくナミに話かけて来た。
それが前頭の台詞だったけれど。

「あんた、今更何言ってるわけ?」
「いや。今唐突にお前見てて思ったからよ」
「何で?」
「その海図。描く時の顔がルフィ見てるときとそっくりだった」
「・・・・・・あんたそんなに私を見てるの?うざっ」
「見てねえよ!視界に入ってくるだけだ!」
「ちょっと勘弁してよ。勝手に見るならお金取るわよ」
「大概守銭奴だよな、テメェはよ」
「仕方ないでしょう?海賊王の船だってのに、どうして貧乏生活を送ってるのよ私達。海賊王って海賊の中の海賊でしょ?それが赤貧生活って何?」
「んなことおれに聞くな」

勢い込んだナミに、うんざりと息を吐く。
確かに彼女が言うとおり、自分たちの旅は豪華絢爛とは行かない。むしろルーキー時代から何も変わってない気がする。
いや、だがルフィと二人で旅をしていた頃よりはマシだろう。
あの時は船の上で自分たちを餌に見立てて襲ってくる魚を食べていた。今はグル眉のコックが食糧管理及び朝昼晩プラスおやつを管理してくれている。しかもナミとは違って無料だ。
何かにつけて気に入らない男だが、料理の腕だけは認めているゾロとしては、また以前の食生活に戻るのは嫌だと思わないでもない。
自分から話しかけておいて思考の渦に嵌ったゾロに、ナミはふうと一つため息を落とす。

「あんただって」
「あ?」
「ルフィのこと大好きじゃない」
「はぁ?」

どうなのとばかりに告げたナミは、どこか呆れを含んだ眼差しだった。
だがゾロからしてみればナミの言い分は気色が悪い、その一点に尽きる。
感情のままに渋い表情で眉を寄せれば、違うの?と可愛らしく泥棒猫は首を傾げた。彼女のファンから見ればさぞ魅力的だろうが、本性を知ってるゾロとしては今更何とも思わない。

「まあ、好きか嫌いかって言やぁ嫌いじゃねぇけどな。んな気色悪い感情を考えたこともねぇな」
「そうなの?」
「何だよ、その意外と言わんばかりの表情は」
「だって意外じゃない。あんたのルフィに対する執着心とか顕示欲とか忠誠心を考えると、そうとしか思えないわ」
「これだから女って言うのは・・・。世の中は好きと嫌いで分かれてるわけじゃねぇんだぞ」
「そりゃそうかもしれないけど。でもルフィはあんたが好きよ」
「───なんだ、焼き餅か?」
「誰が」

口調こそ涼やかだがナミの目元は赤く染まっている。
年よりも幼い少女めいた仕草は、ルフィに関連することばかりだ。
いつもこうなら可愛いと思わなくもないが、それはそれで気色悪いかもしれない。
にたり、と意地悪く笑ったゾロに、今度こそ眉を吊り上げたナミは、遠慮なく頭を拳で殴った。
がつんとした衝撃は脳髄を揺らし、相変わらず女の癖にいい拳を持っている。

「何よ、悪い!?」
「別に悪いなんて言ってねえよ」

がなりたてるナミをかわし、ゾロは肩を竦めた。
別に馬鹿にしている気はないのだ。これっぽちも。
ただ女だからこそ持ちえる感情を不思議に思い、もしかしたらそれを羨んでいるのかもしれない。

「なぁ、ナミ」
「何よ!!」
「おれはな、ルフィを『大好き』なんて気色悪い感情は持ち合わせちゃいないが」
「いないが?」
「あいつに惚れてるよ」

ぽかんと口を開けた間抜け面がおかしくて、ククッと喉を震わせた。
何故女はこんなに簡単なことが判らないのだろうか。
ゾロがルフィに持つ感情は、恋だの愛だの軽薄なものではない。
もっと深く、根本の部分から湧き出る執着と独占。船長としての彼への尊敬と、唯一自分の上に立つ男への畏敬。
それらがゾロを複雑に作り上げていて、薄い言葉で簡単にこの想いを言い表せない。
大好きなんて感情で括れないほど、ゾロはルフィを絶対としているのだ。
彼はある意味、ゾロの支配者でもある。

「男が男に惚れるときはな、女が男に惚れるよりも厄介かもしれねぇぞ」
「どういう意味よ、それ」
「それくらい自分で考えろ」

親友への誓いは、いつしか自分の認めた男への誓いにもなっていた。
隣に並び立つために常に努力し続け、最強であり続けると誓った。
誰かに敗れ、敗北を晒すくらいなら、彼への誓いを破るくらいなら死んだ方がマシだと心から思う。
意地とプライドにかけて、首だけになってでも彼の道を切り開くと決めたのは、もう随分と昔だった。
夢半ばでも自分自身より彼を選べる。
何故ならゾロが選んだルフィという男は、海賊王でいるべき男だから。

誰よりも自由で、誰よりも強い。
そんな彼の右腕でいるのがゾロの誇りで、そしてきっとそんな彼の船を進めるのがナミの誇りだ。
自分と似て非なる感情を持つこの女が、ゾロは嫌いではなかった。

「敢えて、一つだけ言うなら」
「何よ」
「おれの立ち位置は一生誰にも奪えねぇってとこだな」

自信満々に告げた台詞に一瞬目を丸めた泥棒猫は、悔しそうに唇を噛み締めた。
自他共に認める海賊王の右腕であり、世界最強の剣豪は、上機嫌な獣がそうするように瞳を細め満足気に息を吐き出した。

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