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【私が私であるために】
*の元フリー創作【本気の恋をしています】、【そのとき世界の切っ先が見えた】の続編です。
*注:パラレル設定です。望美が年上で銀・重衡は別人格の双子です。
生まれる前から決まっていた。
あなたは、私のただ一人の人。
「望美」
名を呼ばれ振り返る。
圧倒的な存在感を誇示されなくとも、望美は声をかけて来た人物が誰か判った。
名門高校の制服を着崩した、ワイルドでありながらも端整な貴族的な顔立ちの男。
気だるげに持ち上げられた唇にうっとりとしたため息を漏らす女性との数は知れない。
掛けてい伊達眼鏡のつるを指の腹で持ち上げると、望美は僅かに頭を下げる。
彼の名は平知盛。
名門平家の御曹司であり、将来は平家一門の一端を担うのを定められた人でもある。
望美はその彼の腹心となるべく教育され、将来は右腕になることを約束されている。
それに疑問を抱いた記憶はないし、きっとこれからも疑問は抱かない。
「───どうかなさいましたか、知盛様」
一歩控えた有能な秘書のように淡々と返事をした。
普段の望美は友人相手なら冗談も言うし朗らかな表情もする。
だが知盛の前では違う。
例え学校という同年代の友人が集う場所でも、彼と対等であると態度では示せない。
親しい友人が傍にいたとしても、だ。
先ほどまで望美と発売されたばかりの雑誌の内容を話していた親友は、またねと小さく声をかけ去って行った。
それは気を使ったのともう一つ別に理由があるのに気づいていたが、望美はそれを言及する気はなかった。
「仕事が入った。早退するぞ」
「はい」
廊下の真ん中で対面した主の一言に躊躇なく頷く。
まだ授業は二時間目までしか終わっていなかったし、学生の本分を妨げる結果になるのは理解しているが
それは優先順位が高いものではない。
望美は彼の補助をするために存在する。
高校に入学してから徐々に仕事を任されるようになった知盛は、現在支社を数社任されている。
学校側もそれを理解していて大体を多めに見てくれた。
当然だ。
二人の通う学校は文武両道の一貫教育で有名だったが、それ以前に平家の運営しているものでもある。
親族経営の強みで融通は利いた。
知盛の言葉に頷いた望美は、携帯電話を取り出すと徐に電話を掛ける。
お付の運転手に連絡を取ると、置いてあるスーツを取りに知盛名義で作った部室の部屋に入る。
後からゆっくり来るだろう主のために掛けてあった濃い色のスーツを取り出し、それに見合う
Yシャツとネクタイを準備する。
箱から革靴を取り出したところでがらりと部屋のドアが開いた。
「知盛様」
「今は二人だ。知盛でいい」
「そう。じゃあ知盛。着替えは置いておいたから早く着替えて」
先ほどまでの素っ気無いほど淡々とした態度を捨てるとカーテンを閉める。
準備しておいた服に手を掛けるのを確認してから、自身もツイードのスーツを取り出した。
部屋は閉まっているのでその場で服を脱ぐ。
今更知盛の前で恥じらいを感じる筈がなく、手早く下着になるとシャツを着る。
スカートのホックを締め上着を着れば大体の準備は完了だ。
つ、と振り返れば予想通り。
お坊ちゃま育ちの知盛はYシャツに手を通し始めたところだった。
暫し考え全身鏡の前に行くと近くに置いておいた鞄からブラシとバレッタを取り出し髪をアップに上げる。
さらにポーチを取り出しファンデーションから順にごく薄い化粧を施した。
口紅を塗った唇を合わせると全体の出来を確認する。
合格の判断を下し振り返れば、案の定ネクタイで詰まった知盛がいた。
「お願いだからネクタイくらい一人で結べるようになって」
「───お前が居るから必要ない」
「いつでも私が居られるわけじゃないでしょう?」
「くっ・・・俺がお前を手放すはずがないだろう?」
くつくつと喉を震わして上機嫌に瞳を細めた知盛が言う。
あっけらかんとした、当然だとでも言うような声音に望美は情けなく眉を下げた。
知盛の言葉は幼馴染としても育った自分たちの関係に相応しいかもしれないが、主従として
成り立つ自分たちには相応しくない。
だが泣きたくなる感情に気づかないふりをして望美は精一杯に微笑んだ。
「我侭なご主人様だね」
「仕え甲斐があるだろう?」
「ものは言いようだよ。───はい、出来た」
ぽん、と胸を叩き上着を着るように促すと彼は素直に従った。
彼の分の鞄も取り出口へと近づきドアを開け放つ。
このドアを開ければ二人は再び主従へ戻る。
「行きましょう、知盛様」
「ああ」
望美の手渡した黒ぶち眼鏡を掛けた知盛に微笑みかけると、進み出た彼の後に続く。
彼にどんな感情を抱こうと、彼は生まれる前から定められた望美の自慢の主であった。
*の元フリー創作【本気の恋をしています】、【そのとき世界の切っ先が見えた】の続編です。
*注:パラレル設定です。望美が年上で銀・重衡は別人格の双子です。
生まれる前から決まっていた。
あなたは、私のただ一人の人。
「望美」
名を呼ばれ振り返る。
圧倒的な存在感を誇示されなくとも、望美は声をかけて来た人物が誰か判った。
名門高校の制服を着崩した、ワイルドでありながらも端整な貴族的な顔立ちの男。
気だるげに持ち上げられた唇にうっとりとしたため息を漏らす女性との数は知れない。
掛けてい伊達眼鏡のつるを指の腹で持ち上げると、望美は僅かに頭を下げる。
彼の名は平知盛。
名門平家の御曹司であり、将来は平家一門の一端を担うのを定められた人でもある。
望美はその彼の腹心となるべく教育され、将来は右腕になることを約束されている。
それに疑問を抱いた記憶はないし、きっとこれからも疑問は抱かない。
「───どうかなさいましたか、知盛様」
一歩控えた有能な秘書のように淡々と返事をした。
普段の望美は友人相手なら冗談も言うし朗らかな表情もする。
だが知盛の前では違う。
例え学校という同年代の友人が集う場所でも、彼と対等であると態度では示せない。
親しい友人が傍にいたとしても、だ。
先ほどまで望美と発売されたばかりの雑誌の内容を話していた親友は、またねと小さく声をかけ去って行った。
それは気を使ったのともう一つ別に理由があるのに気づいていたが、望美はそれを言及する気はなかった。
「仕事が入った。早退するぞ」
「はい」
廊下の真ん中で対面した主の一言に躊躇なく頷く。
まだ授業は二時間目までしか終わっていなかったし、学生の本分を妨げる結果になるのは理解しているが
それは優先順位が高いものではない。
望美は彼の補助をするために存在する。
高校に入学してから徐々に仕事を任されるようになった知盛は、現在支社を数社任されている。
学校側もそれを理解していて大体を多めに見てくれた。
当然だ。
二人の通う学校は文武両道の一貫教育で有名だったが、それ以前に平家の運営しているものでもある。
親族経営の強みで融通は利いた。
知盛の言葉に頷いた望美は、携帯電話を取り出すと徐に電話を掛ける。
お付の運転手に連絡を取ると、置いてあるスーツを取りに知盛名義で作った部室の部屋に入る。
後からゆっくり来るだろう主のために掛けてあった濃い色のスーツを取り出し、それに見合う
Yシャツとネクタイを準備する。
箱から革靴を取り出したところでがらりと部屋のドアが開いた。
「知盛様」
「今は二人だ。知盛でいい」
「そう。じゃあ知盛。着替えは置いておいたから早く着替えて」
先ほどまでの素っ気無いほど淡々とした態度を捨てるとカーテンを閉める。
準備しておいた服に手を掛けるのを確認してから、自身もツイードのスーツを取り出した。
部屋は閉まっているのでその場で服を脱ぐ。
今更知盛の前で恥じらいを感じる筈がなく、手早く下着になるとシャツを着る。
スカートのホックを締め上着を着れば大体の準備は完了だ。
つ、と振り返れば予想通り。
お坊ちゃま育ちの知盛はYシャツに手を通し始めたところだった。
暫し考え全身鏡の前に行くと近くに置いておいた鞄からブラシとバレッタを取り出し髪をアップに上げる。
さらにポーチを取り出しファンデーションから順にごく薄い化粧を施した。
口紅を塗った唇を合わせると全体の出来を確認する。
合格の判断を下し振り返れば、案の定ネクタイで詰まった知盛がいた。
「お願いだからネクタイくらい一人で結べるようになって」
「───お前が居るから必要ない」
「いつでも私が居られるわけじゃないでしょう?」
「くっ・・・俺がお前を手放すはずがないだろう?」
くつくつと喉を震わして上機嫌に瞳を細めた知盛が言う。
あっけらかんとした、当然だとでも言うような声音に望美は情けなく眉を下げた。
知盛の言葉は幼馴染としても育った自分たちの関係に相応しいかもしれないが、主従として
成り立つ自分たちには相応しくない。
だが泣きたくなる感情に気づかないふりをして望美は精一杯に微笑んだ。
「我侭なご主人様だね」
「仕え甲斐があるだろう?」
「ものは言いようだよ。───はい、出来た」
ぽん、と胸を叩き上着を着るように促すと彼は素直に従った。
彼の分の鞄も取り出口へと近づきドアを開け放つ。
このドアを開ければ二人は再び主従へ戻る。
「行きましょう、知盛様」
「ああ」
望美の手渡した黒ぶち眼鏡を掛けた知盛に微笑みかけると、進み出た彼の後に続く。
彼にどんな感情を抱こうと、彼は生まれる前から定められた望美の自慢の主であった。
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(03/25)
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