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彼女は綺麗だと思う。
学校内でも有名な少女達とつるんで自称キューティー3を名乗っているが(それは主に一人の主張で冬姫の意思ではないと彼は知らない)、それに異論を唱える人間が居ないくらいに可愛らしい。
小柄で小動物のようなくりくりしたどんぐり眼の宇賀神みよ。
長身で宝塚の男役のように涼やかな容姿を誇る花椿カレン。
その中間に位置する華奢でありながらもスタイル抜群な茅田冬姫。
一年生の中でも話題の上級生三人は、けれど意外と隙がなく接点も見つけにくい。
所謂高嶺の華と呼ばれる相手だったが、幸か不幸か旬平はその中の二人と割と親しい間柄であった。
「・・・冬姫ちゃん、きつい」
全身を汗まみれにして、ぐでりと畳の上に倒れこむ。
腕立て伏せのセットを漸く終わらしたばかりだが、基礎体力がまだまだ未熟な旬平にとってこの後のスクワットや腹筋は恐ろしい。
知らず知らず嵐との追いかけっこで体力はついていたらしいが、やはり
彼との差はまだ大きい。
事実旬平と同じ量をこなし終えたばかりの嵐は、汗は掻いているがそれほど呼吸に乱れもなく、余裕の表情で差し出されたタオルで顔を拭っている。
化け物と呟いたら、お前がなまってるんだと淡々と突っ込まれた。
へにょりと眉を下げた旬平を哀れに思ったのか、苦笑した冬姫がドリンクを差し出してくれた。
常温より少し冷たいそれは、暑さの篭る部室で飲むには絶好のものだ。
以前この美味しさは風呂上りの牛乳に共通するものがあると訴えたら、先輩二人は顔を見合わせて首を傾げた。
何言ってると声に出さずに問う彼らに、僅かに肩身が狭くなった気がしたものだ。
「・・・あ。また見学者が来てる」
ぽつり、と呟かれた声に視線をやれば、クラスメイトでよく馬鹿をやる友達が、開け放たれたドアの外から中の様子を伺っていた。
ひそひそと話しながら好奇心で目を輝かせる彼らに、暢気なもんだぜと内心で唸る。
彼らの目的が柔道でないのは知っている。
彼らは柔道部の紅一点であり、学校でも上位に入る美少女の冬姫を見に来てるのだ。
普段は桜井兄弟の監視の目が強く中々近寄れない彼女に、接近できるチャンスはとても少ない。
何しろ勇気を持って話しかければ、暫くして必ず兄弟のどちらかが現れるという過保護ぶり。
何処かからか監視してるんじゃないかと思わせるタイミングに、冷や汗を流した男子生徒は一人や二人じゃないだろう。
鉄壁を誇る双璧のお陰で冬姫へ近寄る男は基本皆無だ。
むしろ一年男子からすれば、廊下で擦れ違い様挨拶が出来ればその日一日ラッキーと臆面なくクラスメイトに自慢できるレベルになる。
そんな桜井兄弟の監視の目が唯一緩むのは兄弟がバイトで居ない放課後で、嵐と部活に勤しむ時間だった。
嵐自身最初は近寄り難い人物だが話してみれば気のいい先輩だし、部活の見学に来てくれていると思い込んでる冬姫も、柔道部を除く後輩には優しい。
きっと桜井兄弟からしてみれば、嵐を信頼して冬姫を置いていっているのだろうけど、恋愛面では彼の防御は余り当てにならない。
本人無意識で独占宣言をかます瞬間はあるが、柔道部の見学という建前があれば嵐も自然と甘くなる。
鉄壁を誇る彼らの唯一の盲点が、この柔道部で過ごす時間だといえた。
「中に入ってもらうように言う?嵐くん」
「そうだな。もし興味があるなら嬉しいしな」
暢気に笑顔を交わす彼らに一言忠告してやりたい。
あいつらの目的は柔道ではなく、そこの鈍いお姫様だと。
クラスメイトは気のいい奴が多いが、最近は僅かに鬱陶しくなっていた。
口を開けば冬姫を紹介しろだの、冬姫との合コンをセッティングしろだの不健全極まりない。
去年までナンパ三昧だった自分を棚に挙げ、旬平は上級生二人に見えないように頬を膨らます。
冬姫を誘おうとする輩に腹を立ててるのも事実だが、それと同じくらい柔道を口実に使おうとする彼らに腹が立った。
二人にとってこの柔道部には特別な思い入れがあり、たった二人で部室がないところからスタートさせたものだったから。
それを汚されるのは、とてもとても腹立たしい。
少しずつ息が納まる中で、冬姫に声をかけられ狂喜するクラスメイトを睥睨する。
そして不意に思いついた口実に、にっと口角を持ち上げた。
「嵐さん、嵐さん」
「ん?何だ?」
「あいつら、一回乱取りをやってみたいっていってました。今日は胴着に予備があったスよね?あれ貸してやって、部活動に参加させてやったらどうっスか?」
「そうなのか?・・・そうだな、折角興味を持ってくれたんだし、そうしよう。おーい、マネージャー」
「ん?何?」
くるりと振り返った冬姫の髪が扇状にふわりと広がり、また元の位置へと落ち着く。
その姿にうっとりと見惚れる馬鹿な輩に、旬平は内心で高らかと哂った。
後日、筋肉痛と出来立ての痣に唸るクラスメイトに、一人ぴんぴんした旬平は、無邪気を装いスキンシップしまくった。
触れるたびに奇声を上げた姿に、その先まさか彼らが柔道に味をしめるなんてこの時はまだ想像もしていなかった。
学校内でも有名な少女達とつるんで自称キューティー3を名乗っているが(それは主に一人の主張で冬姫の意思ではないと彼は知らない)、それに異論を唱える人間が居ないくらいに可愛らしい。
小柄で小動物のようなくりくりしたどんぐり眼の宇賀神みよ。
長身で宝塚の男役のように涼やかな容姿を誇る花椿カレン。
その中間に位置する華奢でありながらもスタイル抜群な茅田冬姫。
一年生の中でも話題の上級生三人は、けれど意外と隙がなく接点も見つけにくい。
所謂高嶺の華と呼ばれる相手だったが、幸か不幸か旬平はその中の二人と割と親しい間柄であった。
「・・・冬姫ちゃん、きつい」
全身を汗まみれにして、ぐでりと畳の上に倒れこむ。
腕立て伏せのセットを漸く終わらしたばかりだが、基礎体力がまだまだ未熟な旬平にとってこの後のスクワットや腹筋は恐ろしい。
知らず知らず嵐との追いかけっこで体力はついていたらしいが、やはり
彼との差はまだ大きい。
事実旬平と同じ量をこなし終えたばかりの嵐は、汗は掻いているがそれほど呼吸に乱れもなく、余裕の表情で差し出されたタオルで顔を拭っている。
化け物と呟いたら、お前がなまってるんだと淡々と突っ込まれた。
へにょりと眉を下げた旬平を哀れに思ったのか、苦笑した冬姫がドリンクを差し出してくれた。
常温より少し冷たいそれは、暑さの篭る部室で飲むには絶好のものだ。
以前この美味しさは風呂上りの牛乳に共通するものがあると訴えたら、先輩二人は顔を見合わせて首を傾げた。
何言ってると声に出さずに問う彼らに、僅かに肩身が狭くなった気がしたものだ。
「・・・あ。また見学者が来てる」
ぽつり、と呟かれた声に視線をやれば、クラスメイトでよく馬鹿をやる友達が、開け放たれたドアの外から中の様子を伺っていた。
ひそひそと話しながら好奇心で目を輝かせる彼らに、暢気なもんだぜと内心で唸る。
彼らの目的が柔道でないのは知っている。
彼らは柔道部の紅一点であり、学校でも上位に入る美少女の冬姫を見に来てるのだ。
普段は桜井兄弟の監視の目が強く中々近寄れない彼女に、接近できるチャンスはとても少ない。
何しろ勇気を持って話しかければ、暫くして必ず兄弟のどちらかが現れるという過保護ぶり。
何処かからか監視してるんじゃないかと思わせるタイミングに、冷や汗を流した男子生徒は一人や二人じゃないだろう。
鉄壁を誇る双璧のお陰で冬姫へ近寄る男は基本皆無だ。
むしろ一年男子からすれば、廊下で擦れ違い様挨拶が出来ればその日一日ラッキーと臆面なくクラスメイトに自慢できるレベルになる。
そんな桜井兄弟の監視の目が唯一緩むのは兄弟がバイトで居ない放課後で、嵐と部活に勤しむ時間だった。
嵐自身最初は近寄り難い人物だが話してみれば気のいい先輩だし、部活の見学に来てくれていると思い込んでる冬姫も、柔道部を除く後輩には優しい。
きっと桜井兄弟からしてみれば、嵐を信頼して冬姫を置いていっているのだろうけど、恋愛面では彼の防御は余り当てにならない。
本人無意識で独占宣言をかます瞬間はあるが、柔道部の見学という建前があれば嵐も自然と甘くなる。
鉄壁を誇る彼らの唯一の盲点が、この柔道部で過ごす時間だといえた。
「中に入ってもらうように言う?嵐くん」
「そうだな。もし興味があるなら嬉しいしな」
暢気に笑顔を交わす彼らに一言忠告してやりたい。
あいつらの目的は柔道ではなく、そこの鈍いお姫様だと。
クラスメイトは気のいい奴が多いが、最近は僅かに鬱陶しくなっていた。
口を開けば冬姫を紹介しろだの、冬姫との合コンをセッティングしろだの不健全極まりない。
去年までナンパ三昧だった自分を棚に挙げ、旬平は上級生二人に見えないように頬を膨らます。
冬姫を誘おうとする輩に腹を立ててるのも事実だが、それと同じくらい柔道を口実に使おうとする彼らに腹が立った。
二人にとってこの柔道部には特別な思い入れがあり、たった二人で部室がないところからスタートさせたものだったから。
それを汚されるのは、とてもとても腹立たしい。
少しずつ息が納まる中で、冬姫に声をかけられ狂喜するクラスメイトを睥睨する。
そして不意に思いついた口実に、にっと口角を持ち上げた。
「嵐さん、嵐さん」
「ん?何だ?」
「あいつら、一回乱取りをやってみたいっていってました。今日は胴着に予備があったスよね?あれ貸してやって、部活動に参加させてやったらどうっスか?」
「そうなのか?・・・そうだな、折角興味を持ってくれたんだし、そうしよう。おーい、マネージャー」
「ん?何?」
くるりと振り返った冬姫の髪が扇状にふわりと広がり、また元の位置へと落ち着く。
その姿にうっとりと見惚れる馬鹿な輩に、旬平は内心で高らかと哂った。
後日、筋肉痛と出来立ての痣に唸るクラスメイトに、一人ぴんぴんした旬平は、無邪気を装いスキンシップしまくった。
触れるたびに奇声を上げた姿に、その先まさか彼らが柔道に味をしめるなんてこの時はまだ想像もしていなかった。
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