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ぱっちりとした二重の大きな黒目がちの瞳。
綺麗な曲線を描いた頬はマシュマロのように柔らかくいつも淡く色づいている。
琉夏よりも真っ直ぐなさらさらの髪を肩口で切りそろえ、小首を傾げるたびに揺れるそれを眺めるのが大好きだった。
一人きりで泣いてるところを見つけた少女は、まるで自分のために存在するただ一人のお姫様。
寂しくて悲しくて、けど新しく家族になった人には何も言えなくて、学校には友達一人居なくって、誰にも胸の内を曝け出せなかったから神様がこの子をくれたのだと思った。
教会の端にあるサクラソウの絨毯の上で、ほろほろと涙を零していた少女が、琉夏を見てふわりと嬉しそうに涙を止めて微笑んだ瞬間から。
───この子は自分のものだと、自分を判ってくれる存在だと、自分を好きになってくれると、奇妙なまでに確信した。
「冬姫」
「ルカくん」
息を切らして走って行けば、嬉しそうに少女は瞳を細める。
琉夏が近寄っても学校の皆みたいに嫌がらないし、嫌な言葉を吐いたりしない。
冬姫は琉夏を何も知らない。
ただ会いに来るたびに嬉しそうに花が綻ぶように綺麗に笑うから、その度に琉夏の胸はドキドキして、その喜びに息が詰まった。
一週間前に知り合ったばかりの少女は、とても可愛い女の子だった。
レースが幾重にも重ねられた白いワンピースを着た冬姫は絵本から飛び出たお姫様そのもので、初めて見つけた時に琉夏は鼓動が早くなった。
何故って言えばお姫様が待っているのは何時だって王子様と決まっていて、もしかしたら自分が彼女の王子様なのかもしれないと思ったから。
緊張しながら眺めていたら、琉夏を見つけただけで少女はゆっくりと嬉しそうに微笑んだ。
いつの間にか握っていた拳を開いて手を差し伸べれば、彼女は躊躇なく手を握ってくれた。
転校してから無条件に手を握ってくれる相手なんて新しい家族以外居なかったから、琉夏は飛び跳ねそうなくらいに嬉しかった。
それから毎日この場所に通った。
毎日会えるわけではなかったけれど、それでも琉夏は毎日通った。
訝しげにこちらを見る琥一を宥め、一人でこの場所まで走った。
新しい家に移ってから一人で行動するのは初めてで、それもまたとても新鮮だった。
「ねぇ、今日は何をして遊ぶ?」
「そうだな・・・花が一杯咲いてるし、花冠を作ろうか?冬姫にきっと似合うよ」
「ルカくんにも絶対に似合うよ。ルカくん、可愛いもん」
「・・・男に可愛いはないだろ」
「でも可愛い。私よりずっと綺麗」
「そんなことない。冬姫の方がずっと可愛い。冬姫はお姫様だもん」
「・・・お姫様?」
「うん。サクラソウの花園の中で見つけた、俺の大事なお姫様。俺が願ったから冬姫は来てくれたんだ」
へらり、と微笑みかければ、戸惑うように眉を寄せる。
そんな様子すら可愛くて、出来上がった花冠をふわりとかぶせた。
白い肌と対比して色とりどりの花が栄える。
やっぱり可愛いと呟けば照れて視線を外し、むっと唇を尖らせた。
「俺、冬姫が居てくれて嬉しい」
「・・・私も。ルカくんが居てくれて嬉しいよ」
眉尻を下げ微笑んでくれる姿がとても大事だ。
彼女は琉夏の宝物。
いそいそと花を摘み、どんどんと連ねていく。
二人きりの遊びに刺激はないが、とても優しく穏やかだ。
「今度さ」
「ん?」
「コウを紹介するね」
「コウ?」
「うん。コウは俺の特別。きっと、冬姫も気に入る」
「そっか。ルカくんに似てる?」
「全然。いっつもこーんな顔してる。コウはガキ大将だから」
目を指で吊り上げれば、ぷっと小さく冬姫が笑った。
その可愛らしい声に琉夏も笑う。
「コウは心配性だから、ガキ大将だけど凄く優しい」
「ふーん。じゃ、やっぱりルカくんに似てるね」
「どうして?俺はコウみたいに強くないよ」
「ふふふ。ルカくんはとっても優しいもの」
くすくすと微笑んだ少女は出来上がった花冠を琉夏の頭にひょいと乗せる。
やっぱり、ルカくんも可愛い。
嬉しげに告げる冬姫に、眩いものを見たみたいに目を細めた。
「コウには俺たちが知り合いなのは内緒な」
「どうして?」
「仲間はずれみたいに感じるかもしれないから。言ったろ、コウは心配性なんだ」
「ふーん。判った」
本当はまだ少し迷っている。
琥一であれ、琉夏の特別を取られるかもしれないのは怖い。
でも冬姫なら大丈夫だろうと、琉夏は信じてみる事にした。
きっと少女なら自分と琥一を比較し、どちらかを選ぶなんてしないと。
こくり、と頷いた冬姫に、最高の兄で親友の琥一を紹介するのは数日後。
初めて見た少女の姿に、風邪薬を飲むときと同様に渋い顔をした琥一の姿は、予想通り過ぎて笑えた。
三人の遊びが『かくれんぼ』に固定され、難しい顔をした鬼がむすっと唇を尖らせて隠れた子を探しに来る日はもうすぐそこだった。
綺麗な曲線を描いた頬はマシュマロのように柔らかくいつも淡く色づいている。
琉夏よりも真っ直ぐなさらさらの髪を肩口で切りそろえ、小首を傾げるたびに揺れるそれを眺めるのが大好きだった。
一人きりで泣いてるところを見つけた少女は、まるで自分のために存在するただ一人のお姫様。
寂しくて悲しくて、けど新しく家族になった人には何も言えなくて、学校には友達一人居なくって、誰にも胸の内を曝け出せなかったから神様がこの子をくれたのだと思った。
教会の端にあるサクラソウの絨毯の上で、ほろほろと涙を零していた少女が、琉夏を見てふわりと嬉しそうに涙を止めて微笑んだ瞬間から。
───この子は自分のものだと、自分を判ってくれる存在だと、自分を好きになってくれると、奇妙なまでに確信した。
「冬姫」
「ルカくん」
息を切らして走って行けば、嬉しそうに少女は瞳を細める。
琉夏が近寄っても学校の皆みたいに嫌がらないし、嫌な言葉を吐いたりしない。
冬姫は琉夏を何も知らない。
ただ会いに来るたびに嬉しそうに花が綻ぶように綺麗に笑うから、その度に琉夏の胸はドキドキして、その喜びに息が詰まった。
一週間前に知り合ったばかりの少女は、とても可愛い女の子だった。
レースが幾重にも重ねられた白いワンピースを着た冬姫は絵本から飛び出たお姫様そのもので、初めて見つけた時に琉夏は鼓動が早くなった。
何故って言えばお姫様が待っているのは何時だって王子様と決まっていて、もしかしたら自分が彼女の王子様なのかもしれないと思ったから。
緊張しながら眺めていたら、琉夏を見つけただけで少女はゆっくりと嬉しそうに微笑んだ。
いつの間にか握っていた拳を開いて手を差し伸べれば、彼女は躊躇なく手を握ってくれた。
転校してから無条件に手を握ってくれる相手なんて新しい家族以外居なかったから、琉夏は飛び跳ねそうなくらいに嬉しかった。
それから毎日この場所に通った。
毎日会えるわけではなかったけれど、それでも琉夏は毎日通った。
訝しげにこちらを見る琥一を宥め、一人でこの場所まで走った。
新しい家に移ってから一人で行動するのは初めてで、それもまたとても新鮮だった。
「ねぇ、今日は何をして遊ぶ?」
「そうだな・・・花が一杯咲いてるし、花冠を作ろうか?冬姫にきっと似合うよ」
「ルカくんにも絶対に似合うよ。ルカくん、可愛いもん」
「・・・男に可愛いはないだろ」
「でも可愛い。私よりずっと綺麗」
「そんなことない。冬姫の方がずっと可愛い。冬姫はお姫様だもん」
「・・・お姫様?」
「うん。サクラソウの花園の中で見つけた、俺の大事なお姫様。俺が願ったから冬姫は来てくれたんだ」
へらり、と微笑みかければ、戸惑うように眉を寄せる。
そんな様子すら可愛くて、出来上がった花冠をふわりとかぶせた。
白い肌と対比して色とりどりの花が栄える。
やっぱり可愛いと呟けば照れて視線を外し、むっと唇を尖らせた。
「俺、冬姫が居てくれて嬉しい」
「・・・私も。ルカくんが居てくれて嬉しいよ」
眉尻を下げ微笑んでくれる姿がとても大事だ。
彼女は琉夏の宝物。
いそいそと花を摘み、どんどんと連ねていく。
二人きりの遊びに刺激はないが、とても優しく穏やかだ。
「今度さ」
「ん?」
「コウを紹介するね」
「コウ?」
「うん。コウは俺の特別。きっと、冬姫も気に入る」
「そっか。ルカくんに似てる?」
「全然。いっつもこーんな顔してる。コウはガキ大将だから」
目を指で吊り上げれば、ぷっと小さく冬姫が笑った。
その可愛らしい声に琉夏も笑う。
「コウは心配性だから、ガキ大将だけど凄く優しい」
「ふーん。じゃ、やっぱりルカくんに似てるね」
「どうして?俺はコウみたいに強くないよ」
「ふふふ。ルカくんはとっても優しいもの」
くすくすと微笑んだ少女は出来上がった花冠を琉夏の頭にひょいと乗せる。
やっぱり、ルカくんも可愛い。
嬉しげに告げる冬姫に、眩いものを見たみたいに目を細めた。
「コウには俺たちが知り合いなのは内緒な」
「どうして?」
「仲間はずれみたいに感じるかもしれないから。言ったろ、コウは心配性なんだ」
「ふーん。判った」
本当はまだ少し迷っている。
琥一であれ、琉夏の特別を取られるかもしれないのは怖い。
でも冬姫なら大丈夫だろうと、琉夏は信じてみる事にした。
きっと少女なら自分と琥一を比較し、どちらかを選ぶなんてしないと。
こくり、と頷いた冬姫に、最高の兄で親友の琥一を紹介するのは数日後。
初めて見た少女の姿に、風邪薬を飲むときと同様に渋い顔をした琥一の姿は、予想通り過ぎて笑えた。
三人の遊びが『かくれんぼ』に固定され、難しい顔をした鬼がむすっと唇を尖らせて隠れた子を探しに来る日はもうすぐそこだった。
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(04/07)
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(03/30)
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(03/30)
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(03/25)
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