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突然姿を現した人物の内、一人は鬼道の想定内だった。
だがもう一人はデータになく、全くの未知数の人物の登場に訝る。
このタイミングで入ってくるということは、先ほどまでの試合を見ていたはずだ。
それなのに姿を現した人物は、雷門中のゴールキーパーのユニフォームを身に着けていた。
先ほどまで全く同じユニフォームを着ていた相手は背を向けて逃げ出したので、きっとあれは予備のものなのだろう。
体格がよかった先ほどまでの相手に比べると、随分と華奢な印象がある。
しかしながら先ほどまでのキーパーよりも随分と余裕があった。

短い栗色の髪にオレンジ色のバンダナ。顔を覆う黒縁の眼鏡の所為でその表情は窺えない。
だがどこかで見たようなデジャヴを感じ、瞳を眇めてから首を振った。
先ほどあの人物の名前を雷門中のキャプテンが叫んでいた。
相手の名前が『円堂』なら、鬼道の知るその人と違うはずだ。
あのシュートを見て怯まないなら、きっと肝の据わった少年なのだろう。

無名の選手一人よりも必要なのは豪炎寺の情報だ。
赤いマントを翻すと、仲間たちに気合を入れなおす。


「俺たちの目的は豪炎寺だ。他は無視していい」
『はい!』


返事をしたチームメイトがそれぞれのポジションについたのを確認し前を向く。
視線が自然とキーパーに向けられ、相手の反応に瞳が丸くなった。
ゴーグル越しでは鬼道の視線を追うのは難しいはずなのに、確かに相手が微笑んだように見えたのだ。


「よっし、みんなとにかく一点だ!ゴールは俺が守る!だから全力でプレイしろ!」
「・・・っ、円堂の言葉を信じろ!あいつなら絶対にゴールを守ってくれる!行くぞ、みんな!」
『おう!!』


雰囲気の変わった彼らに目を見張り、ゲームの再開の合図に慌てて自分のポジションに着く。
そしてゲームは再開した。




「ゴッドハンド!!」


確かに決まったと思えたシュートが、キーパーの手により捕らえられる。
空中に大きな掌が現れたかと思うとそのまま吸い込まれるように寺門の百烈ショットが取られた。
弾くならまだ偶然だと思えただろう、しかし完全に奪われた。

信じられない。
帝国のシュートがこれほど格下の相手に取られるなどあり得ない。
だが驚く鬼道たちに構わず、ゴールキーパーはそのままボールを投げた。
たった一球。
けれどそれを受けたのは件の豪炎寺だった。

飛んできたボールに、鬼道は確かに笑った豪炎寺を見た気がした。

ふわり、と重力を感じさせない動きで豪炎寺が飛ぶ。
体を回転させながら流れるような動きでその足がボールを捉えた。


「ファイアトルネード!!」
「パワーシールド!!」


源田が必殺技を利用し阻止しようとしたが、圧倒的威力を誇るシュートはそのままゴールに突き刺さった。
源田とて名の知れたゴールキーパーだが豪炎寺の名が広まるのも伊達ではないということだろう。
面白い、と唇が自然と孤を描く。
久しぶりに手ごたえのある相手と出会った感覚に気分が高揚した。

視線をそのまま後ろに逸らし、豪炎寺へとボールを与えたキーパーを見やる。
やはり何処かで会った気がするが、記憶の先をすり抜けるようにイメージが抜けていった。
軽く頭痛がし頭を振る。
心配そうに寄ってきた佐久間を手で制するとすっと背筋を伸ばした。


「豪炎寺も凄いが、あのキーパーも面白い。まさか、シュートを止められる奴がいるとはな」
「はい。ですが鬼道さん、点差は詰めれないでしょう」
「ああ。だが今日はこれでお終いだ。俺たちの目的は達成された」
「はい」


頷く佐久間から視線をもう一度キーパーへと向けた。
確か名前は『円堂』。
これも調べてみる価値があるかもしれないと脳裏にしっかりと焼き付ける。


「我々はここで棄権させてもらう。試合はお前らの勝ちでいい」


一人一人を瞳に収め、豪炎寺を見る。
ついっと眉を上げた彼に唇だけで笑った。


「覚えておく、お前らのこと」


踵を返す瞬間に、もう一度だけキーパーを視線をやる。
違和感を訴える感覚を押さえ込み、そのまま雷門中を後にした。

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