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どうしてそこに足が向いてしまったか判らない。
もうサッカーは捨てたはず、それなのに隠れるようにして見ているのはもしかしたら未練なのかもしれない。
きゅっと拳を握り締め一方的な試合を眺める。
否、あれは試合というよりは、一方的な暴力にも近いものだった。

ふと気がつけば彼らの仲間であるはずの一人が、ユニフォームを脱ぎ捨て走って行くのが見えた。
エースナンバーの10番。それを背負った相手の情けない行動に、ぎゅっと強く拳を握った。


「夕香・・・お兄ちゃんにもう一度だけチャンスをくれないか?」


ユニフォームを握り締め、脳裏に浮かぶ人物に懺悔するよう囁く。


「覚悟は決めたか、ヒーローさん」
「っ!?お前は・・・」
「さっさと行けよ。お前を待ってるんだぜ」


気がつけば隣に人が立っており僅かに息を呑む。
目深にフードを被っているが、あの日と同じパーカー姿の人物だと豪炎寺は気づいた。
促される響きに頷くと、ユニフォーム片手に豪炎寺は駆け出した。





「さぁて、俺も準備するか」


走り去る豪炎寺を見送った後、頭の後ろで手を組んでいた円堂は手に持っていた袋を振りながら校舎へと向かう。
ちらり、と視線をグランドにやり目的の人物を視界に納めると僅かに肩を竦める。
ゴーグルに赤いマント。
覚えている頃と随分と趣味が変わってしまったらしい人物に、円堂は苦笑した。


「───そろそろ、目を覚ます時間だぜ。鬼道有人」


ひたり、と視線を定め一瞬だけ寂しげな笑みを浮かべて円堂はもう一度歩き始めた。





「選手交代だ」
「っ・・・お前は、豪炎寺!来てくれたのか!」


ぱっと顔を輝かせた風丸に豪炎寺は目を細める。
彼女は雷門サッカー部のキャプテンの幼馴染だと言っていた。
それなら風丸なら彼女が誰だか知っているのだろうか。

すっと目を細めて眺めると、瞬きを繰り返し不思議そうな視線を返してくる。
どちらにせよ今追及することではないかと踵を返そうとした時に、その声は響いた。


「キャプテン。もう一人、選手交代だぜ」
「?」
「・・・お前は、円堂!?」


聞いたばかりの声に驚いて振り返ると、そこには先ほどまでパーカー姿だったはずの彼女がいた。
しかしその姿は豪炎寺が記憶していたものと少し様変わりしている。
長かったはずの栗色の髪は短く切られ、頭にはオレンジ色のバンダナ、そして顔を覆い隠すようにスポーツ用のバンドがつけられた黒縁のお洒落眼鏡が掛けられていた。
体型のわからないパーカーと違い体にぴたりとした雷門中のゴールキーパーののユニフォームを着ているが、その体に女性らしい曲線は見当たらない。
ぱっと見たら別人のようだが、豪炎寺には彼女が『彼女』だと判った。


「よ、風丸。助っ人さんじょー!」
「助っ人って・・・お前、学校が違うんじゃ」
「いや、さっき付けで雷門中の生徒。ユニフォームは失敬させてもらったけどな。さて、そこのゴールキーパーの少年。俺と交代してくれるか?それ以上あいつらのボール受けたくないだろ」


優しげにも聞こえる声に頷いたキーパーは、彼女の言葉に首が千切れんばかりに頷くとさっさと場を離れた。
彼は確か風丸が集めた急場しのぎの助っ人だったはずなので、サッカー部に何の未練もないのだろう。
走り出した彼の居場所にゆったりと歩きだした彼女は不意に何か思い出したように振り替える。
そしてにっと楽しそうに笑った。


「な?お前はサッカーをしに戻っただろ」
「っ」
「俺の名前は円堂守。円堂って呼んでくれよ」


笑いを含んだ声で告げると、ウィンクをして今度こそゴールの前に陣取った。

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