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「うわー・・・久しぶりだな、日本!」


長旅で固まった体の凝りを解すように腕を伸ば息を吸う。
二年ぶりに踏んだ日本の土。覚えている景色に顔を綻ばし、円堂は笑う。

父に頼んで迎えに来てもらった車を途中で下車した円堂るは、ゆったりと歩を進めた。
降ろしてもらった場所は円堂が昔住んでいた土地、稲妻町。
賑やかな商店街は記憶するより少しだけ変化していたが雰囲気は何も変わらない。
パーカーを目深に被り、サングラスをかけた状態でゆったりと歩いてると、背後から呼びかけられた。


「・・・円堂?」


揺れる声は覚えているものより少しだけ低くなっただろうか。
振り返れば想像通りの姿があり、円堂は太陽を思わせる笑顔を浮かべた。
サングラス越しであるのに確かに自分を認識してくれた相手は、綺麗な顔を驚愕に染めている。
長い睫毛に縁取られた切れ長の瞳が瞬きを繰り返し、信じられないとばかりに首を振った。


「よ!久しぶり、ちろた」
「っ!?それはもう止めてくれと言ってるだろう!」


しゅたり、と顔の横に手を上げて小首を傾げれば、恥ずかしげに顔を赤くした彼、幼馴染の風丸はむっと唇を尖らせた。
これは怒ってるなぁと頬を指先でかくと、柳眉をきりきりと吊り上げた風丸は僅かにあった距離を詰める。


「お前、この二年間連絡一つしないで何をしていたんだ!?」
「あはは、ちょっと渡米してた。連絡できなくてごめんな。お前のことだから必要以上に心配しただろ」
「っ・・・この、馬鹿が!」


細い腕が伸びてきてぎゅうと遠慮のない力で抱きしめられた。
かたかたと震える体に思わず苦笑した。
昔は自分より小さかった体は、気がつけばもうほとんど変わらなくなっている。
一つ年下の幼馴染は、縋り付くように円堂に抱きついていた。


「俺が、どんな気持ちで・・・っ」
「うん。本当に、ごめんな」
「二年間も音信普通で、お前の家に押しかけようと何回迷ったと思ってる」
「うん、ごめん」
「お前の手紙の条件が鬼道の家に押しかけないことだと知っていても、それを破りたくなるほどに心配したんだぞ」
「ごめんな」
「『サッカーで俺たちは繋がってる』。お前の言葉を信じて、俺はサッカー部にまで入ったんだぞ!」
「え?お前陸上は?」
「仕方ないだろう!あんな状態でお前が音信不通になったんだ!」
「・・・そっか。本当に、ごめんな」


しがみ付く幼馴染の背をぽんぽんと叩く。
繊細な脆さを持つ風丸は、きっと言葉以上に心配してくれたに違いない。
あれほど走るのが好きだったのに、陸上ではなくサッカーを取らせてしまうほど心を痛めたのかと思うと、本当に心苦しい。


「円堂はずるい」
「うん」
「どれだけ責めたって最終的に俺が許すことを知ってる。だからずるい」
「うん───ごめん」
「・・・おかえり、まも姉」
「うん。ただいま」


昔の懐かしい呼び名に、くしゃりと笑う。
長くなった髪を乱暴に撫ぜれば、戸惑うように声をあげ、漸く風丸も昔と同じ笑顔を見せた。

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