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『サッカーしようぜ、有人』
そうして笑った人を、有人はとても尊敬していた。
勉強もスポーツも何でも出来て、いつだって有人の手を引いてくれる優しい姉。
栗色の長い髪を緩く一つに結んで同色の瞳を細めて笑う人だった。
両親を亡くし施設で妹と過ごしていたところを影山に見出され、そのサッカーの才能を伸ばしてくれたのも彼女だ。
溢れんばかりのサッカーへの情熱と、一つしか違わないとは思えないくらいの圧倒的な実力差。
彼女は有人の憧れで、目指していた姿だった。
朗らかで明るくて優しくて、まるで太陽のように両親も妹も失った有人に暖かな全てをくれた人。
好きだった。
───本当に、好きだったのだ。
きっとその想いは、有人の初恋だったのだろう。
傍に居るときは近すぎて気づかなかった。
けれど、失った今になり、気づきたくなんてなかった。
「何故ですか、姉さん」
持ち主のいなくなった部屋に向かい、有人は呟く。
勉強中に利用した机も、よく一緒にお茶をしたソファも、寂しい時に共に眠ってくれたベッドも、壁に掛けられたサッカーボールも、全部全部色を失くした。
「どうして・・・俺を捨てたんですか。何故何も言わずに居なくなったんですか・・・っ」
こみ上げる涙に声が詰まる。
いつもならここで『なーに泣いてんだよ!有人は仕方ねぇなあ』と女性らしからぬ口調で笑いながら頭を撫でてくれたのに。
乱暴な手つきでも優しさが感じられる温もりがすぐに与えられたのに。
寂しい。寂しくて寂しくて、消えてしまいたい。
「ここは寒いです。あなたが居ないだけで、とても冷たい部屋になった」
掠れた声でもう居ない人に囁きかける。
判るのは捨てられたという事実だけ。
悔しい、哀しい、苦しい、切ない。
あれだけ無条件に慕ったのに、どうして捨てられてしまったのか。
ぐっと奥歯を噛み締め拳を握る。
「さよなら」
幸せだった過去に蓋をしよう。そうしなければ悲しみに押しつぶされて、彼女のいない世界で生きてなんかいけないから。
滲む視界から消えていく場所。
柔らかな春の日差しを思わせるそこは、有人にとって特別な空間だったのに。
そうして笑った人を、有人はとても尊敬していた。
勉強もスポーツも何でも出来て、いつだって有人の手を引いてくれる優しい姉。
栗色の長い髪を緩く一つに結んで同色の瞳を細めて笑う人だった。
両親を亡くし施設で妹と過ごしていたところを影山に見出され、そのサッカーの才能を伸ばしてくれたのも彼女だ。
溢れんばかりのサッカーへの情熱と、一つしか違わないとは思えないくらいの圧倒的な実力差。
彼女は有人の憧れで、目指していた姿だった。
朗らかで明るくて優しくて、まるで太陽のように両親も妹も失った有人に暖かな全てをくれた人。
好きだった。
───本当に、好きだったのだ。
きっとその想いは、有人の初恋だったのだろう。
傍に居るときは近すぎて気づかなかった。
けれど、失った今になり、気づきたくなんてなかった。
「何故ですか、姉さん」
持ち主のいなくなった部屋に向かい、有人は呟く。
勉強中に利用した机も、よく一緒にお茶をしたソファも、寂しい時に共に眠ってくれたベッドも、壁に掛けられたサッカーボールも、全部全部色を失くした。
「どうして・・・俺を捨てたんですか。何故何も言わずに居なくなったんですか・・・っ」
こみ上げる涙に声が詰まる。
いつもならここで『なーに泣いてんだよ!有人は仕方ねぇなあ』と女性らしからぬ口調で笑いながら頭を撫でてくれたのに。
乱暴な手つきでも優しさが感じられる温もりがすぐに与えられたのに。
寂しい。寂しくて寂しくて、消えてしまいたい。
「ここは寒いです。あなたが居ないだけで、とても冷たい部屋になった」
掠れた声でもう居ない人に囁きかける。
判るのは捨てられたという事実だけ。
悔しい、哀しい、苦しい、切ない。
あれだけ無条件に慕ったのに、どうして捨てられてしまったのか。
ぐっと奥歯を噛み締め拳を握る。
「さよなら」
幸せだった過去に蓋をしよう。そうしなければ悲しみに押しつぶされて、彼女のいない世界で生きてなんかいけないから。
滲む視界から消えていく場所。
柔らかな春の日差しを思わせるそこは、有人にとって特別な空間だったのに。
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