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自室に篭ったブラッドは、部屋から見える夜空に一つため息を吐く。
つい一年ほど前の自分が今の自分を見たのなら、鼻で笑っているだろう。
誰かに振り回される人生など考えたこともなく、誰かに執着する自分など想像したこともなかったのに。

先日購入したばかりの紅茶を一口口に含む。
味も香りも最高級品のはずなのに、いつものように紅茶に酔えないのはきっとあのネガティブな少女の顔が離れないからだ。
いつだってブラッドに対して胸を張っていた彼女が見せた脆さは、未だに記憶に新しい。

別に何か特別なことをしていたわけじゃない。
いつものように彼女を誘い、午後のお茶会としゃれ込んでいただけだ。
普通に話し普通に紅茶を飲み、普通に過ごしていたはずなのに、気がつけば彼女は泣いていた。
何が切欠だったか未だに判らない。
それでも何かが切欠で、ブラッドの向こうに『誰か』を見たアリスは涙腺を崩壊させた。
それが酷く苛立たしく───とても胸糞悪い。


「・・・どうして彼女なのだろうな」


答えのない問いかけ。
理由が判るのなら、ブラッドだって知りたい。
だが何故か判らないが惹きつけられるのだ。
心が、魂が、彼女が欲しいと訴える。

それはまるで呪いにも似た想い。
捕らえられ囚われ、そして執着を抱いた。
自分でも気付かなかったが、ブラッドは束縛したいタイプだったらしい。
アリスが他の何も見ないように目を塞ぎ、自分の領域でずっと暮らして欲しい。
笑うのも泣くのもブラッドに関して以外は赦せない。

これは恋なんて生易しい感情ではない。
だから可哀想だがアリスには諦めてもらうしかない。
どうしたってブラッドが諦める気はないのだから、この手に堕ちて来てもらうしかない。

静かに空を見上げていれば、ノックの後に腹心が姿を現した。


「ブラッド、頼まれてた調べもん終わったぜ」
「そうか」
「なぁ、ブラッド。アリス、大丈夫かな?あれから一度も顔見せてくんねえし、向こうに行っても会ってくれねぇ」
「さてな。だが待つのも飽きた。そろそろ行動に移す」
「ってことはアリスに会えるのか?」
「ああ、そうだ。アリスとてそろそろ私の『顔』が見たいだろうしな」


皮肉を込めて呟けば、エリオットは不思議そうな顔をしてウサギ耳を動かした。
何を調査させたか知っているだろうに、その理由までは教えていないのでブラッドがいらついている理由が判らないのだろう。
暫く瞬きを繰り返していたが、一つ頷くとからりとした笑顔を浮かべた。


「んじゃ、俺はアリスのためににんじんケーキを用意してもらってくるぜ!出発が決まったら教えてくれよ」
「ああ。私の分は用意しなくていいからな。お前とアリスの分を増やしなさい。いいか、くれぐれも私の分は必要ない」
「ブラッド・・・お前ってなんていい奴なんだ!大丈夫だ!遠慮しなくてもブラッドの分もきっちりと用意させるからな!」
「おい、エリオット!私はいらないと・・・ッ」


先走り気味なエリオットを静止しようと伸ばされた手は、虚しくも宙を掴むだけだった。

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