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君が、嫌い
--お題サイト:確かに恋だったさまより--
★マフィアパロ★
■1.心惑わされるのは、(嫌い)【ユリウス】
毎日時計を修理する。
ねじを回し、部品を交換し、油をさして動かぬそれを直し続ける。
朝目が覚めて夜眠るまで、絶え間なくその時間は続く。
ごく稀に自分の部下が訪れ、回収した時計を持ち込む。
ごく稀にこの世界の勢力のどこかが、時計を持ち込み仕事を依頼に来る。
ごく稀に役もちと呼ばれる彼らが、気紛れに訪れ時計を壊す。
時間の狂ったこの世界、狂った住人は好き勝手に行動する。
時計屋であるユリウスの元に訪れるのは大体が狂った人物ばかりで、それは昔から変わらない。
チクタクチクタク時計は進む。
時折、ふと顔を上げ部屋を視線でひと撫でしてからまた時計に意識を向けた。
自分以外誰も居ないはずの部屋に、コーヒーの香がするわけがない。
■2.君なしの日々は、【エース】
「ユリウスがさ、寂しそうなんだ」
笑顔で告げれば、静かな眼差しを向けた彼女はただ一言、『そう』と口にした。
ユリウスはエースの特別だ。
彼はエースを理解してくれ、呆れつつも許容してくれる。
自分より不幸な人間がいるのは心が休まる。
そんな自分を歪んでいるわと嫌そうな顔で評価した少女は、もうどこにも居ない。
「もう会わないつもり?」
「ええ。───ボスの許しが出ない限りは、会わないわ」
「じゃあ二度と会う気はないんだね」
余裕ぶっているが、彼女の主帽子屋がとても狭量なのは知っている。
自分だけでなく、役持ちなら誰もが知っているだろう。
自分の囲いの中にアリスを繋いだ彼が、首輪もそこから伸びる鎖も決して手放さないだろう。
彼はアリスを手に入れた。
それは愛とか恋が絡むものじゃないだけに、彼女にとってもっと深い意味を持つ。
何しろ恋愛なんてごめんだと全てを面倒だと口にしていた彼女が差し出した、それ以外の全てなのだ。
帽子屋が欲したものとは違うだろうに、手にしたものを自由にするはずがない。
独占と執着。彼が抱いた感情は、何を基準にしたものだろう。
「俺も寂しくなるな」
「そう」
興味なさげに視線を反らしたアリスに、エースは笑みを深めた。
帽子屋にだって負けないくらいの執着欲は、どこへ向かえばいいのだろう。
彼女のハートを止めれば、空虚な心は埋まるのだろうか。
■3.沈黙の時間が、【ボリス】
空を見上げれば夜の黒。それに混じって星が輝き月が中天に上っている。
時間の狂ったこの世界で、夜はもう三時間帯連続で続いていた。
いつもはおしゃべりなチェシャ猫は、木の上に寝転び空を見上げる。
夜の時間は好きだ。
闇は心を落ち着かせ、遊び心を擽った。
けれど今日は何故か遊ぶ気分にならず、ぼうっと空を見上げている。
「アリス、何してるかな」
中立の立場のボリスは、帽子屋屋敷に遊びに行くのもしばしばだ。
遊園地に滞在しているので一応敵対勢力として数えられているが、門番の双子と友人だし、自称忠犬のウサギや屋敷の主にはペットとして見られている気がした。
「・・・会いたいな」
夜には感傷的になる。
きっと今頃屋敷の庭でお茶会をしているだろう少女を思えば思うほど寂しくなって、胸が苦しい。
「会いに行こうかな」
そう言えば、もう一月は顔を合わせていない。
屋敷に遊びに行っても、いっつもマフィアの仕事で留守にしているアリスは、夜の時間が続けば拘束されているはずだ。
「そうしよ!」
ぴん、と耳を立てたチェシャ猫は、どピンクの尻尾を揺らしドアを開けた。
■4.幸せそうな笑顔も、【ペーター】
「ねぇ、アリス。いつ僕を殺すんですか?」
綺麗な白い手を掴み、そっと頬に当ててペーターは問う。
傷一つないはずだったその掌は、いつの間にか潰れた肉刺で皮膚が硬くなっており、その柳眉を顰めた。
アリスがアリスである限り、彼女を嫌うことなどないが、それでも変わってしまった様子に苛立つ。
アリスは本来ならこんな苦労をするはずがなかった。
幸せになって欲しいからこちらの世界に連れてきたのに、どうしてこんな傷が出来るのか。
返す返すも腹立たしいのは彼女を部下として扱き使う帽子屋であり、同僚として扱うファミリーの面々だ。
城に来てくれれば自分の部屋でアリスが好きな何もかもを用意してもてなすのに、彼女は帽子屋から出たくないと言う。
それが彼女の意思であれば強く出れないのがペーターで、ならばと利用してもらっているが、それも満足いくほどではない。
何しろペーターの首は未だ繋がったままだし、属する勢力も健在だ。
もっと利用して欲しいというのに、遠慮がちな彼女がもどかしい。
「貴女が手を下してくださるなら、僕は逆らったりしないのに」
囁き指先に口付ける。昔ならそれも飛びのいて拒絶されたのだが、今は諾々と受け入れてくれた。
それが少し嬉しい。
「貴方に利用価値がなくなれば、望まなくても殺してあげるわ」
「そうしてください。ああ、でも貴女以外の誰かに殺されてあげる気はありませんから、それだけは覚えておいてくださいね」
優しい宣言に顔を綻ばせば、目を細めてアリスは笑った。
昔と違う笑顔だが、それでもペーターは満足だった。
■5.僕を見ない君が、【グレイ】
「久しぶりだな、アリス」
言葉どおり、本当に久しぶりに顔を見た友人にグレイは思わず声をかけた。
以前と同じルールの会合は、今回もまたナイトメアが司会だ。
しどろもどろの痛すぎるそれは毎回の悩みの種だが、一行に改善されない割りに何故人前に立ちたがるのか。
現在もどちらの上司が素敵か言い争っている。
自称ブラッドの犬のエリオットがブラッドを褒め称えるのは別に構わないが、自分で自分がどれ程尊敬された上司か訴えるナイトメアには呆れしか沸かない。
こちらに振られる相槌を躱しつつ、ブラッドの背後に控えていたアリスに声をかけたのだが。
「これはこれはクローバーの塔の苦労人の登場か」
「・・・帽子屋」
「女性を見るなりナンパか?それならうちの領土の子ではなく、自分のところのにするんだな。女に声をかけて恥を掻きたくないだろう?」
アリスとグレイの間に体を割り込ませたブラッドは、にこりと笑顔を浮かべた。
顔は笑っているくせに目は少しも笑っていない、随分と寒々しい笑顔に眉間に皺を刻む。
「俺はお前に挨拶したわけじゃない」
「悪いが、蜥蜴。アリスは私のものなんだ。私のものに私を通さず声をかけるなど、無礼だと思わないか」
「いつからアリスがお前のものになったと言うんだ、帽子屋。彼女をもの扱いするのはやめてもらおう。彼女は確固とした意思を持つ人間だ」
「そして私の血を分けたファミリーでもある。忠誠心が厚い幹部の一人だと、お前も知っているだろうに」
にい、と笑ったブラッドはアリスの肩を抱くと、見せ付けるように耳に唇を寄せた。
ざわり、と胸の奥から不快感が湧き上がり、思わず隠しているナイフへと手を伸ばす。
「アリス。蜥蜴の奴は君の扱いが不満だそうだが、君はどうだ?」
「今更よ、ブラッド。私は貴方が言うとおり貴方のものだもの。精々上手く使って頂戴」
「だそうだ。アリス直々に答えを聞けばお前も満足だろう。それでは私は失礼するよ。美味しい紅茶を飲みにいく約束をしているのでな。ああ、そうそう。そこできゃんきゃん喚いているウサギは好きにしてくれていい」
勝ち誇った笑みを浮かべるブラッドに、ナイフを投げつける。
すると間にアリスが割り込み、当たる寸前で双子が弾いた。
「お姉さんに手を出さないでよ」
「僕たちいい子にするって約束してるんだから、邪魔しないでよね蜥蜴さん」
子供っぽい口調で苛立ちを含んだ声を出した双子は、グレイを睨み付けた。
「置いていくわよ、ディー、ダム。折角私の奢りなのに、いいの?」
「駄目だよ!早く行こう、兄弟!」
「うん、そうだね兄弟。待ってよ、お姉さん!」
アリスの声にグレイから興味を失った双子は、さっさと踵を返した。
最後までこちらを見なかったなと、遠ざかる少女の背を見送る。
懐かしい笑顔はきっともう見れないのだろう。
--お題サイト:確かに恋だったさまより--
★マフィアパロ★
■1.心惑わされるのは、(嫌い)【ユリウス】
毎日時計を修理する。
ねじを回し、部品を交換し、油をさして動かぬそれを直し続ける。
朝目が覚めて夜眠るまで、絶え間なくその時間は続く。
ごく稀に自分の部下が訪れ、回収した時計を持ち込む。
ごく稀にこの世界の勢力のどこかが、時計を持ち込み仕事を依頼に来る。
ごく稀に役もちと呼ばれる彼らが、気紛れに訪れ時計を壊す。
時間の狂ったこの世界、狂った住人は好き勝手に行動する。
時計屋であるユリウスの元に訪れるのは大体が狂った人物ばかりで、それは昔から変わらない。
チクタクチクタク時計は進む。
時折、ふと顔を上げ部屋を視線でひと撫でしてからまた時計に意識を向けた。
自分以外誰も居ないはずの部屋に、コーヒーの香がするわけがない。
■2.君なしの日々は、【エース】
「ユリウスがさ、寂しそうなんだ」
笑顔で告げれば、静かな眼差しを向けた彼女はただ一言、『そう』と口にした。
ユリウスはエースの特別だ。
彼はエースを理解してくれ、呆れつつも許容してくれる。
自分より不幸な人間がいるのは心が休まる。
そんな自分を歪んでいるわと嫌そうな顔で評価した少女は、もうどこにも居ない。
「もう会わないつもり?」
「ええ。───ボスの許しが出ない限りは、会わないわ」
「じゃあ二度と会う気はないんだね」
余裕ぶっているが、彼女の主帽子屋がとても狭量なのは知っている。
自分だけでなく、役持ちなら誰もが知っているだろう。
自分の囲いの中にアリスを繋いだ彼が、首輪もそこから伸びる鎖も決して手放さないだろう。
彼はアリスを手に入れた。
それは愛とか恋が絡むものじゃないだけに、彼女にとってもっと深い意味を持つ。
何しろ恋愛なんてごめんだと全てを面倒だと口にしていた彼女が差し出した、それ以外の全てなのだ。
帽子屋が欲したものとは違うだろうに、手にしたものを自由にするはずがない。
独占と執着。彼が抱いた感情は、何を基準にしたものだろう。
「俺も寂しくなるな」
「そう」
興味なさげに視線を反らしたアリスに、エースは笑みを深めた。
帽子屋にだって負けないくらいの執着欲は、どこへ向かえばいいのだろう。
彼女のハートを止めれば、空虚な心は埋まるのだろうか。
■3.沈黙の時間が、【ボリス】
空を見上げれば夜の黒。それに混じって星が輝き月が中天に上っている。
時間の狂ったこの世界で、夜はもう三時間帯連続で続いていた。
いつもはおしゃべりなチェシャ猫は、木の上に寝転び空を見上げる。
夜の時間は好きだ。
闇は心を落ち着かせ、遊び心を擽った。
けれど今日は何故か遊ぶ気分にならず、ぼうっと空を見上げている。
「アリス、何してるかな」
中立の立場のボリスは、帽子屋屋敷に遊びに行くのもしばしばだ。
遊園地に滞在しているので一応敵対勢力として数えられているが、門番の双子と友人だし、自称忠犬のウサギや屋敷の主にはペットとして見られている気がした。
「・・・会いたいな」
夜には感傷的になる。
きっと今頃屋敷の庭でお茶会をしているだろう少女を思えば思うほど寂しくなって、胸が苦しい。
「会いに行こうかな」
そう言えば、もう一月は顔を合わせていない。
屋敷に遊びに行っても、いっつもマフィアの仕事で留守にしているアリスは、夜の時間が続けば拘束されているはずだ。
「そうしよ!」
ぴん、と耳を立てたチェシャ猫は、どピンクの尻尾を揺らしドアを開けた。
■4.幸せそうな笑顔も、【ペーター】
「ねぇ、アリス。いつ僕を殺すんですか?」
綺麗な白い手を掴み、そっと頬に当ててペーターは問う。
傷一つないはずだったその掌は、いつの間にか潰れた肉刺で皮膚が硬くなっており、その柳眉を顰めた。
アリスがアリスである限り、彼女を嫌うことなどないが、それでも変わってしまった様子に苛立つ。
アリスは本来ならこんな苦労をするはずがなかった。
幸せになって欲しいからこちらの世界に連れてきたのに、どうしてこんな傷が出来るのか。
返す返すも腹立たしいのは彼女を部下として扱き使う帽子屋であり、同僚として扱うファミリーの面々だ。
城に来てくれれば自分の部屋でアリスが好きな何もかもを用意してもてなすのに、彼女は帽子屋から出たくないと言う。
それが彼女の意思であれば強く出れないのがペーターで、ならばと利用してもらっているが、それも満足いくほどではない。
何しろペーターの首は未だ繋がったままだし、属する勢力も健在だ。
もっと利用して欲しいというのに、遠慮がちな彼女がもどかしい。
「貴女が手を下してくださるなら、僕は逆らったりしないのに」
囁き指先に口付ける。昔ならそれも飛びのいて拒絶されたのだが、今は諾々と受け入れてくれた。
それが少し嬉しい。
「貴方に利用価値がなくなれば、望まなくても殺してあげるわ」
「そうしてください。ああ、でも貴女以外の誰かに殺されてあげる気はありませんから、それだけは覚えておいてくださいね」
優しい宣言に顔を綻ばせば、目を細めてアリスは笑った。
昔と違う笑顔だが、それでもペーターは満足だった。
■5.僕を見ない君が、【グレイ】
「久しぶりだな、アリス」
言葉どおり、本当に久しぶりに顔を見た友人にグレイは思わず声をかけた。
以前と同じルールの会合は、今回もまたナイトメアが司会だ。
しどろもどろの痛すぎるそれは毎回の悩みの種だが、一行に改善されない割りに何故人前に立ちたがるのか。
現在もどちらの上司が素敵か言い争っている。
自称ブラッドの犬のエリオットがブラッドを褒め称えるのは別に構わないが、自分で自分がどれ程尊敬された上司か訴えるナイトメアには呆れしか沸かない。
こちらに振られる相槌を躱しつつ、ブラッドの背後に控えていたアリスに声をかけたのだが。
「これはこれはクローバーの塔の苦労人の登場か」
「・・・帽子屋」
「女性を見るなりナンパか?それならうちの領土の子ではなく、自分のところのにするんだな。女に声をかけて恥を掻きたくないだろう?」
アリスとグレイの間に体を割り込ませたブラッドは、にこりと笑顔を浮かべた。
顔は笑っているくせに目は少しも笑っていない、随分と寒々しい笑顔に眉間に皺を刻む。
「俺はお前に挨拶したわけじゃない」
「悪いが、蜥蜴。アリスは私のものなんだ。私のものに私を通さず声をかけるなど、無礼だと思わないか」
「いつからアリスがお前のものになったと言うんだ、帽子屋。彼女をもの扱いするのはやめてもらおう。彼女は確固とした意思を持つ人間だ」
「そして私の血を分けたファミリーでもある。忠誠心が厚い幹部の一人だと、お前も知っているだろうに」
にい、と笑ったブラッドはアリスの肩を抱くと、見せ付けるように耳に唇を寄せた。
ざわり、と胸の奥から不快感が湧き上がり、思わず隠しているナイフへと手を伸ばす。
「アリス。蜥蜴の奴は君の扱いが不満だそうだが、君はどうだ?」
「今更よ、ブラッド。私は貴方が言うとおり貴方のものだもの。精々上手く使って頂戴」
「だそうだ。アリス直々に答えを聞けばお前も満足だろう。それでは私は失礼するよ。美味しい紅茶を飲みにいく約束をしているのでな。ああ、そうそう。そこできゃんきゃん喚いているウサギは好きにしてくれていい」
勝ち誇った笑みを浮かべるブラッドに、ナイフを投げつける。
すると間にアリスが割り込み、当たる寸前で双子が弾いた。
「お姉さんに手を出さないでよ」
「僕たちいい子にするって約束してるんだから、邪魔しないでよね蜥蜴さん」
子供っぽい口調で苛立ちを含んだ声を出した双子は、グレイを睨み付けた。
「置いていくわよ、ディー、ダム。折角私の奢りなのに、いいの?」
「駄目だよ!早く行こう、兄弟!」
「うん、そうだね兄弟。待ってよ、お姉さん!」
アリスの声にグレイから興味を失った双子は、さっさと踵を返した。
最後までこちらを見なかったなと、遠ざかる少女の背を見送る。
懐かしい笑顔はきっともう見れないのだろう。
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