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心に空白があるのに気がついた。
否、おせっかいな知人に無理やり気づかされた。
けれど心にある隙間に気がついても、どうして隙間があるかまでは判らない。
そして───何が、隙間になっているのかも。
ただ判るのは何かが足りなくて、その何かが自分にとって大切だっただろうことだけだ。

仕事を纏める手を止めると、恋次は一つため息を落とす。
副隊長の仕事はもう随分と慣れて、纏め終わり積んである書類は隊長の承認を待つものだけになった。
気が進まなくとも仕事は待ってくれない。
一日の終わりに近づいた時間、報告も兼ねて書類を手にしたまま隊長室に向かう。
数度のノックの後声を掛け入った部屋は、相変わらず片付いている。
埃一つないんじゃないかと思える室内には、背筋をピンと伸ばし仕事を進める白皙の美貌の青年があり、彼に釣られるよう背筋を伸ばすと歩を進めた。

「お疲れ様です、隊長」
「───ああ」
「これ、今日の分の書類です。宜しくお願いします」
「判った」

淡々と返事をし、温度を感じさせない眼差しを向けた白哉は、そこに置けと指先で机の端を指す。
それに逆らわず黙って書類を置き、いつも通りに頭を下げて退出しようとすると、珍しくも白哉から声が掛かり動きを止める。

「明後日、確か出勤だったな」
「はい。通常勤務っすけどそれが?」
「悪いが急用が入った。私はその日午後から休みを取りたいと思うが、大丈夫か」
「・・・朽木隊長が休み?珍しいっすね」
「そうだな。それで、大丈夫なのか?」
「あ、はい。大丈夫っす」

重ねられた問いに慌てて頷けば、よしと言わんばかりに頷いた彼は書類へ視線を戻した。
そんな白哉を眺めながらも驚きで心が埋まる。
恋次が知る限り彼は滅多なことでは仕事を休まない。
私用だろうが、貴族の会合か何かだろうか。
きっとそうに違いない。
何しろ白哉はあの朽木家の当主だ。
四大貴族として役割もあるのだろう。

「貴族も大変っすね」
「・・・何がだ」
「隊長が仕事を休むってんなら大した用事なんでしょう?貴族同士の何かがあるんじゃないんすか?」
「いや、今回は私用だ。だが、貴族同士のものであるというのははずれではない」
「じゃあ、何するんすか?」
「義妹が」
「義妹さん?」
「義妹に、正式な手続きで縁談が申し込まれた」
「え・・・?」

一瞬意味が飲み込めず、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。
白哉の義妹といったら、死神の中では有名な存在で、色々な噂が立つ人物だった。
目にしたのはただの一度だけ。
艶やかな黒髪に釣り上がり気味の紫紺の瞳。
透き通るような白い肌と、気品を感じさせる立ち振る舞いが印象的な美貌の少女。
朽木の飼い猫と一部の人間に揶揄され、流魂町出身のお仕着せ貴族と嘲笑される、孤高の少女。
彼女のことは良く知らないが、本人を見た恋次からしたら、そんな愚劣な噂が何一つ似合わない存在だった。
その少女が見合いをする。
どうしてここまで衝撃を受けるのか判らないが、息の仕方も忘れるほどに恋次はショックを受けていた。
死覇装の胸の部分を掴み、何とか笑みらしき表情を浮かべ口を開く。

「縁談って・・・確か、隊長の義妹さんは俺と同じくらいの年だったっすよね。まだ早くないですか?」
「何を言う。遅いくらいだ。だが、今までは本人の希望もあり、ほとんど断ってきたのだがな。今回は相手も本気のようだし、ルキアにも悪い話ではない」
「隊長が納得される相手なんですか?」
「ああ。家柄は我が朽木家には並ばぬが一応貴族であるし、人柄も良い。何よりあれのことを良く知った男だ。年は少々離れるが、その分想いも強い。ルキアを気に掛ける男としては申し分ないだろうな」

淡々としているが、白哉の口から零れるのは相手の男に対する賞賛に近かった。
目を見開いてそれを聞く恋次は、白哉は義妹を大事にしていると話も聞いていたので、相手は余程の人物なのだろうと察した。
身分が違っても良いと思われるほどの人格者であり実力者。
空回りする脳みそで誰かを搾り出そうとし、冷静な頭が何故それを知る必要があると突っ込む。
だが理性に反し心は落ち着かず忙しなく鼓動が撥ねた。

「相手は、どんな男なんすか?」
「お前も知っている。ルキアに縁談の申し込みをした男、それは」
「・・・・・・」
「十三番隊隊長、浮竹十四郎だ」
「っ」

その優しげな面立ちを思い出し、恋次はぐぅと喉の奥で悲鳴を殺した。

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