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「お姉ちゃん」
「何?」

ほわほわとした微笑みを浮かべる年上の女性は、全く年上には見えない愛らしい顔立ちをしている。
華奢で小さなかなでは女性である自分すら守ってあげたいと感じる庇護欲を掻き立てられる存在で、硬派でありながら庇護欲の塊のような兄の恋女房だ。
高校時代に運命的に知り合った彼らは、その後一度も別れることなくゴールインした。
お互い初めての彼氏彼女で、喧嘩も繰り返したと言っていたが、自分が知る限り遠距離恋愛でも一途な想いを昇華させた人たちだ。
この人たちのような運命の相手を見つけたい、と乙女心に願ってしまうほど理想的な恋人同士であり、現在は理想的な夫婦であった。
新婚家庭に頻繁に遊びに行っても邪険にされることはなく、どころか熱烈歓迎で美味しい手料理を振舞ってくれるかなでが大好きだった。
今では兄を抜きに二人で遊びに行くほどの関係だが、最近は少しばかり悩みも出来ている。

「かーのじょ」
「奢るから一緒に遊ばない?」

軽いノリの声に、眉間に皺を刻み込んだ。
馴れ馴れしく肩に手を置かれ、むっと唇を噛み締める。
体を振ってその手を避ければ馬鹿にするような口笛を吹かれ益々苛立った。

隣に居る義姉を見れば、眉を下げ掴まれた腕をどうすればいいかと困惑顔だ。
ナンパ男に遠慮する必要はないと口を酸っぱくして言ってるのに、彼女はいつも強く出れない。
人が絡まれていたら果敢にも挑むくせに、どうして自分ごとになるとここまで無防備なのだろうか。
かなでが自分を過小評価しているのは知っているが、自分が標的になりやすい可愛らしい容貌をしているのをいい加減に自覚して欲しかった。

「義姉さんに触らないで!」
「姉さん?へぇ、姉妹なんだ?似てないね」
「君はどっちかって言うと綺麗系でこっちの子は抱きしめたくなる可愛い系じゃない。姉妹でもこっちの子が年下に見えるのにねえ」
「そうそう。ちょっと鈍い感じがするし、大人しいし」
「義姉さん!やめてよ!」
「ひゅー、強気じゃん。いいね。一緒に遊ぼうよ」
「嫌よ!」

さっと周りを見渡してもこちらをちらちらと見る視線はあるのに、誰も助けの手を差し伸べてくれない。
厄介ごとに巻き込まれたくないのは判るが、ならせめて警察くらい呼んでくれてもいいだろうに。
ぎりぎりと唇を噛み締め苛立ちを堪えていると、不意に男たちの後ろから見知った姿を見つけた。

「あんたたち、今すぐその手を離しなさい。じゃないと後悔するから」
「後悔?お嬢さん二人でどう後悔させる気か教えてくれる?」
「お前も一緒に来いって言ってんだよ」
「ちょ、やめて!」

伸ばされた腕に身構えた瞬間、救世主はやってきた。
ぱしん、と乾いた音を響かせて伸びてきた腕を止めた男に、ほっと胸を撫で下ろす。
そのまま自分を庇うように前に立った男は、最高の兄の司郎だった。

「・・・人の妹に何してんだ」
「ヒっ!?」

低い声と、きっと傷の入った強面にびくりと体を竦ませた男は、伸ばした手を引っ込めようと腕を引く。
だが力を篭められているのかそれが果たせず、情けなく涙目になった。
ざまあみろ、と彼の後ろから舌を出すと、目を白黒させた男は一歩あとずさる。

「すすすすみません!妹さんでしたか」
「そうだ」
「すると、こちらも妹さんで?」

声を震わせてかなでの腕を掴んでいる男が彼女を指差すと、司郎は益々低い声で。

「そっちは俺の嫁だ」
「よ・・・よぉめぇ!?」

訳の判らない発音で言葉を繰り返した男は、火を掴んでいたように手を離した。

「俺の女と妹に何か用か?」
「ななななななななんでもありません!」
「なら二度と声はかけないで貰おうか」
「はい!当然です」

体を震わせたチャラ男は、司郎が腕を放すと同時に脱兎の勢いで駆け去った。
それを見送るとかなでの傍に近寄った司郎は、厳つい顔を心配そうに歪ませる。

「・・・大丈夫か」
「うん。私は大丈夫。でも・・・」
「お前は?」
「私も大丈夫だよ。義姉さんと違って腕を捕まれてたわけじゃないから。・・・義姉さんの腕赤くなってる」
「・・・・・・一発殴ってやれば良かった」
「もう、司郎君たら。冗談でもそんなこと言わないの。私は大丈夫って言ったでしょう?」

困ったように眉を下げたかなでは本気にしてないが、妹である自分にはわかる。
兄は紛れもなく本気だったと。
だが敢えてそれを口にする代わりに、大きな兄の腕に腕を絡めた。

「!?おい」
「いいじゃない。迎えに来てくれたってことは、兄さんも仕事が一区切りしたってことでしょう?一緒に買い物に行こう」
「だが、今こんな目にあったばかりだぞ」
「ふふ、慣れてるよ司郎君。私も久しぶりに一緒に買い物がしたいな」

慣れてるの言葉に眉を跳ね上げた司郎は、けれど次いで回されたかなでの腕に頬を染めて沈黙した。
何時までも初心な兄に、妹として微笑ましいばかりだ。
彼らの間にマンネリなんて言葉はないに違いない。

「私クレープ食べたいな」
「じゃあ、私も」
「・・・仕方ねぇな」

ため息一つで妥協した司郎に、彼を挟んで瞳を合わせたかなでと微笑みあった。


なんて愛しい休日。

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