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リズムを取り体を揺らしながら音に耳を澄ませる。
陽気な音と冷静な音。左右から流れるツインギター。
空気を揺らす勢いで正確なリズムを刻むドラム。
煌びやかに全てをかっさらうような早引きのキーボード。
そして暴走しがちな音を鎮める動きを見せるベース。
それはルキアが一人で奏でることが出来ない音楽で、自分たちだからこそ世界に向けて発信できる音楽。
すう、と胸いっぱいに息を吸い込むと、ルキアが持つ楽器を鳴らす。
高く低く響く歌声。
小さく華奢な体からは考えられない重量感を持つ声は、浪々とコンサート会場の隅々まで行き渡る。
熱狂的な歓声に紛れない彼らの音は、確かに世界にファンを持つアーティストの一員だった。
「いやぁ、お疲れ様です」
細い目を益々細くしてスポーツドリンクを配る市丸に礼をいい受け取ると乾いた喉を潤す。
熱狂的な雰囲気に呑まれ気づかなかったが、体は限界に来ていて脱水症になりかけてるのか頭がくらくらした。
眩暈を堪えて常温の飲み物を飲む。
本当はキンキンに冷えた飲み物が欲しかったが、脱水症状が出かけてる場合は危険だと市丸に禁止されているので我慢した。
額を押さえぼうっと床を見ていると、いきなり視界が暗くなる。
何事かと慌てて顔を上げれば、強引に顔が拭われそれがタオルであると気がついた。
「大丈夫か、ルキア」
「・・・何とか。お前は、恋次?」
「俺は余裕。お前とは体力のつき方が違う」
「はっ・・・私も持久力はあるのは知ってるだろう?」
「ま、な。じゃなきゃ毎日ピアノの練習に取り組めないもんな」
「ああ。お前のヴァイオリンと同じでな」
こつり、と額を合わせた恋次は、くつくつと喉を震わせた。
黒のバンダナにタンクトップとジーパンという至ってシンプルなステージ衣装のままの彼の首には、ルキアと同じ銘柄のタオルが巻かれている。
そう言えばこのメーカーのCMをしてたな、と思い出し律儀に使用する彼に笑った。
CMに起用されていても、そのメーカーを使わない人間も居るのに、恋次は生真面目だ。
だがその見た目に反した生真面目さが恋次の長所だと知っているルキアは、それに対してどうこう言うつもりはなかった。
初めてのフランスでのコンサートは、現地のファンと日本のファンが入り混じってのもので、野太い歓声と黄色い悲鳴が凄まじかった。
脳にはアドレナリンが噴出し、普段からは考えられないくらいテンションが上がった。
コンサート中はいつもそうだが、初のフランス遠征でいつもより気分が昂揚してたらしい。
その分終わってからの疲労感は半端なく、腕一本動かすのすら億劫だ。
だがそれは自分だけではない。
「うわ、マジで、死にそう」
「・・・僕も。きっつ」
「・・・・・・」
「ルキアさん、俺にもドリンク下さい。その、飲みかけでいいですっ」
「お前は無駄に元気余らしてんじゃねぇよ、コン!」
椅子に体を預け天井に向けた顔の上に冷えたタオルを乗せた一角が呟けば、それを皮切りに他の面々からも声が上がった。
ドラムは一番体力を使うので、一角の筋肉は未だに血管がぴくぴく動いている。
彼の隣に居る弓親も、細身であるが鍛えているのに、今にも倒れそうな様子で、斜め前に座る一護にいたっては声すら出せない状態だった。
そして肩を上下させながらも自分を失わないらしいコンの軽口に、恋次がぱしりと頭を叩く。
それが頭に響いたのか、唸り声を上げてコンは蹲った。
コントみたいな遣り取りを笑って見ていた市丸は、スケジュール帳を開くと予定を確認し小首を傾げた。
「この後は一応打ち上げになってるんですけど、出れそうですか?」
「パスしたいが、無理だろ?」
「そうですねぇ。繋がりを作っておきたいから、出て欲しいとこですね」
一角の言葉に対し曖昧な言い方で市丸は返す。
すまなさそうな顔が演技かどうか見分けはつかないが、言ってることは納得できるので一つため息を吐くと身を起こした。
「どちらにせよ、私と恋次は出席は確定してるだろう?」
「そうですね。あなた方が居れば通訳の必要はありませんし助かります」
「言っとくが、もう今日は演奏しねぇぞ。俺もルキアも無理だ」
「判ってます。それに会場にピアノはありませんし、君のヴァイオリンも持ってきてないです。ちなみに同じホテルに部屋を取ってありますから、そのまま眠れますよ」
「マスコミは?」
「入れてないです。チェックも終わってます」
「ルキアさんは俺と相部屋?」
「馬鹿なこと言ってんじゃないよ、このクソガキ。ルキアが君と相部屋なわけないでしょ。───ちゃんと部屋は人数分取ってあるの?」
「ええ。一応、警備員もつけてありますから、ファンも入れないようになってます」
「ああ、そりゃありがてぇな。いつぞやはファンに部屋まで押しかけられそうになって辟易した」
「一角さん、押し倒されそうになってましたもんね」
「うるせぇ!」
軽口まで叩ける程度に体が回復し、顔を見合わせて笑いあう。
昂揚していたテンションも先程よりは落ち着き、頭痛も治まってきた。
そうなると汗でべとつく体を早くなんとかしたくなり、回復を求めた体が食への欲求を募らせる。
重たい体を何とか起こせば、ルキアにつられ他の面々も懐いていた椅子から身を起こした。
「じゃ、そろそろ移動しましょうか。予め裏道は教えてもらってますし、そちらから出ましょう。SPの方も待ちくたびれているでしょうし」
「そうだね」
「あ、そうだ、ルキアさん、恋次君。車の中で学校のお話聞かせてくださいね。君達の学校、来月に文化祭があったでしょう」
何気ない市丸の発言に、ルキアと恋次は顔を見合わせる。
先週の頭にあった出来事を思い出し、二人して眉根を寄せれば訝しげに弓親が顔を覗きこんできた。
「厄介ごと?」
「・・・まぁ」
「ちょっとだけ」
流石に鋭い彼に、どうしたものかと困っていると、鮮やかに市丸が間に割り込んだ。
「まあまあ。積もる話は車の中で。さあ、行きましょう」
未だに何か言いたげにしている弓親の肩を一角が押せば、彼も渋々市丸に従った。
いつの間にか隣に来ていたコンが、ルキアの手を引き先導する。
繋がれた手に眉を跳ね上げた恋次が、チョップで二人の手を裂いた。
その所業に文句を言うコンの頭を一護が殴り、通路に騒々しい声が響く。
疲れ知らずな様子に、若いなあと苦笑すれば、君も十分に若いだろうと、即効で突っ込まれた。
陽気な音と冷静な音。左右から流れるツインギター。
空気を揺らす勢いで正確なリズムを刻むドラム。
煌びやかに全てをかっさらうような早引きのキーボード。
そして暴走しがちな音を鎮める動きを見せるベース。
それはルキアが一人で奏でることが出来ない音楽で、自分たちだからこそ世界に向けて発信できる音楽。
すう、と胸いっぱいに息を吸い込むと、ルキアが持つ楽器を鳴らす。
高く低く響く歌声。
小さく華奢な体からは考えられない重量感を持つ声は、浪々とコンサート会場の隅々まで行き渡る。
熱狂的な歓声に紛れない彼らの音は、確かに世界にファンを持つアーティストの一員だった。
「いやぁ、お疲れ様です」
細い目を益々細くしてスポーツドリンクを配る市丸に礼をいい受け取ると乾いた喉を潤す。
熱狂的な雰囲気に呑まれ気づかなかったが、体は限界に来ていて脱水症になりかけてるのか頭がくらくらした。
眩暈を堪えて常温の飲み物を飲む。
本当はキンキンに冷えた飲み物が欲しかったが、脱水症状が出かけてる場合は危険だと市丸に禁止されているので我慢した。
額を押さえぼうっと床を見ていると、いきなり視界が暗くなる。
何事かと慌てて顔を上げれば、強引に顔が拭われそれがタオルであると気がついた。
「大丈夫か、ルキア」
「・・・何とか。お前は、恋次?」
「俺は余裕。お前とは体力のつき方が違う」
「はっ・・・私も持久力はあるのは知ってるだろう?」
「ま、な。じゃなきゃ毎日ピアノの練習に取り組めないもんな」
「ああ。お前のヴァイオリンと同じでな」
こつり、と額を合わせた恋次は、くつくつと喉を震わせた。
黒のバンダナにタンクトップとジーパンという至ってシンプルなステージ衣装のままの彼の首には、ルキアと同じ銘柄のタオルが巻かれている。
そう言えばこのメーカーのCMをしてたな、と思い出し律儀に使用する彼に笑った。
CMに起用されていても、そのメーカーを使わない人間も居るのに、恋次は生真面目だ。
だがその見た目に反した生真面目さが恋次の長所だと知っているルキアは、それに対してどうこう言うつもりはなかった。
初めてのフランスでのコンサートは、現地のファンと日本のファンが入り混じってのもので、野太い歓声と黄色い悲鳴が凄まじかった。
脳にはアドレナリンが噴出し、普段からは考えられないくらいテンションが上がった。
コンサート中はいつもそうだが、初のフランス遠征でいつもより気分が昂揚してたらしい。
その分終わってからの疲労感は半端なく、腕一本動かすのすら億劫だ。
だがそれは自分だけではない。
「うわ、マジで、死にそう」
「・・・僕も。きっつ」
「・・・・・・」
「ルキアさん、俺にもドリンク下さい。その、飲みかけでいいですっ」
「お前は無駄に元気余らしてんじゃねぇよ、コン!」
椅子に体を預け天井に向けた顔の上に冷えたタオルを乗せた一角が呟けば、それを皮切りに他の面々からも声が上がった。
ドラムは一番体力を使うので、一角の筋肉は未だに血管がぴくぴく動いている。
彼の隣に居る弓親も、細身であるが鍛えているのに、今にも倒れそうな様子で、斜め前に座る一護にいたっては声すら出せない状態だった。
そして肩を上下させながらも自分を失わないらしいコンの軽口に、恋次がぱしりと頭を叩く。
それが頭に響いたのか、唸り声を上げてコンは蹲った。
コントみたいな遣り取りを笑って見ていた市丸は、スケジュール帳を開くと予定を確認し小首を傾げた。
「この後は一応打ち上げになってるんですけど、出れそうですか?」
「パスしたいが、無理だろ?」
「そうですねぇ。繋がりを作っておきたいから、出て欲しいとこですね」
一角の言葉に対し曖昧な言い方で市丸は返す。
すまなさそうな顔が演技かどうか見分けはつかないが、言ってることは納得できるので一つため息を吐くと身を起こした。
「どちらにせよ、私と恋次は出席は確定してるだろう?」
「そうですね。あなた方が居れば通訳の必要はありませんし助かります」
「言っとくが、もう今日は演奏しねぇぞ。俺もルキアも無理だ」
「判ってます。それに会場にピアノはありませんし、君のヴァイオリンも持ってきてないです。ちなみに同じホテルに部屋を取ってありますから、そのまま眠れますよ」
「マスコミは?」
「入れてないです。チェックも終わってます」
「ルキアさんは俺と相部屋?」
「馬鹿なこと言ってんじゃないよ、このクソガキ。ルキアが君と相部屋なわけないでしょ。───ちゃんと部屋は人数分取ってあるの?」
「ええ。一応、警備員もつけてありますから、ファンも入れないようになってます」
「ああ、そりゃありがてぇな。いつぞやはファンに部屋まで押しかけられそうになって辟易した」
「一角さん、押し倒されそうになってましたもんね」
「うるせぇ!」
軽口まで叩ける程度に体が回復し、顔を見合わせて笑いあう。
昂揚していたテンションも先程よりは落ち着き、頭痛も治まってきた。
そうなると汗でべとつく体を早くなんとかしたくなり、回復を求めた体が食への欲求を募らせる。
重たい体を何とか起こせば、ルキアにつられ他の面々も懐いていた椅子から身を起こした。
「じゃ、そろそろ移動しましょうか。予め裏道は教えてもらってますし、そちらから出ましょう。SPの方も待ちくたびれているでしょうし」
「そうだね」
「あ、そうだ、ルキアさん、恋次君。車の中で学校のお話聞かせてくださいね。君達の学校、来月に文化祭があったでしょう」
何気ない市丸の発言に、ルキアと恋次は顔を見合わせる。
先週の頭にあった出来事を思い出し、二人して眉根を寄せれば訝しげに弓親が顔を覗きこんできた。
「厄介ごと?」
「・・・まぁ」
「ちょっとだけ」
流石に鋭い彼に、どうしたものかと困っていると、鮮やかに市丸が間に割り込んだ。
「まあまあ。積もる話は車の中で。さあ、行きましょう」
未だに何か言いたげにしている弓親の肩を一角が押せば、彼も渋々市丸に従った。
いつの間にか隣に来ていたコンが、ルキアの手を引き先導する。
繋がれた手に眉を跳ね上げた恋次が、チョップで二人の手を裂いた。
その所業に文句を言うコンの頭を一護が殴り、通路に騒々しい声が響く。
疲れ知らずな様子に、若いなあと苦笑すれば、君も十分に若いだろうと、即効で突っ込まれた。
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