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*ルフィたちが海賊王になった後の設定です。



海賊王。
そう呼ばれる男が率いる海賊団にはずば抜けた金額を持つ賞金首の幹部たちが勢ぞろいしている。
個性的で、強くて、勇敢で、信念を持っている。
誰もかもが一級品の腕を持ち、若くして名声と富を手に入れた。






「だからよ、ゾロのこれは病気だとおれ思うんだ」

右隣から聞こえた言葉に、ゾロはびしりと青筋を浮かべる。

「ごめん。おれ、まだ駄目に利く薬作れてないんだ」

左隣から聞こえた言葉に、真摯な響きを感じ取り一気に脱力感を覚えた。

「お前ら、おれを馬鹿にしてんのか?」

ぎりぎりと歯を食いしばりながら、やっとの思いで言葉を搾り出せば。

『至ってマジだ』

全く悪気なくそう告げる年下二人組みに、怒りすら萎え肩を落とした。


今現在ゾロとルフィとチョッパーは道に迷っていた。
それもこれも目の前の船長がいつもの如く食料を食いつくし、怒り狂ったコックと航海士によりついたばかりの島に蹴り飛ばされ、傍に居たゾロとチョッパーが巻き添えを食らったからだ。
何となくデジャヴを感じる気がするが、首を振って気を取り直す。
否、取り直そうとした。
だがそれは無情にも空気を読まない相棒の発言により、根っこから踏み潰される。

「おれさー、絶対にゾロは遭難して死ぬと思うんだよな。チョッパーはどう思う?」
「んー・・・いつもだったら戦って死ぬ気がするって言うけど、でも遭難してってのも否定できない」
「だろ?こいつの方向音痴ってさ、もう病的じゃん。本能が曲がってるってサンジが言ってたぞ。曲がった本能は医学で直せねぇのか?」
「ごめん、ルフィ。おれが知ってる医学じゃ無理だ。ごめんな、ゾロ」
「謝るんじゃねぇよ!おれは別に本能が曲がってるわけじゃねぇ!」
「んじゃどうしてこんなに方向音痴なんだ?そんでもって、どうしてそんなに自分が進む道に自信があるんだ?お前がこっちだって言うからついてってんのに、どうして海じゃなくて山の頂上に着くんだよ?」
「あ、ルフィあそこにサニー号が見えるぞ。おーい!みんなー!」
「ホントだ。おーい!」
「・・・・・・」

言いたいことだけ言ってゾロから興味を失ったらしい二人は、崖の上から両手を振って叫ぶ。
ここから声張り上げても聞こえるわけねぇだろと内心で突っ込みつつ、口にしたらまた火の粉が降りかかりそうで代わりにため息を落とす。
顔を俯けたら肩に乗せている虎もどきの尻尾が額から垂れ下がり、ちっと舌打した。
ちなみにチョッパーも両手に果物と、背に背負う篭に植物を一杯取っていて、ルフィはゾロに負けず劣らず大物のライオンもどきを持っている。
腐るといけないのでまだ生かしているが、また暴れだしたら面倒だと渋々年少組に声を掛けた。

「おい、さっさと行くぞ。日のある内に船に戻んなきゃいけねぇんだろうが」
「お、そうだったそうだった。んじゃ行くかチョッパー」
「おう、ルフィ」

あっさりと船から向き直った二人は顔を見合すと、同時にゾロに視線をやった。
そして歩き出そうとしていたゾロを制すると、邪気のない笑顔で告げた。

「おい、ゾロ。お前はどうせ迷子になるからいいや。チョッパー、匂い辿れるか?」
「うん。多分大丈夫。途中まで戻れれば、ナミたちの匂いも辿れると思う」
「ししし。なら良し!いやぁ、最初っからこうしてりゃ良かったなー。悪かったな、ゾロ」
「そうだな。すぐに気づかなくて、ごめんなゾロ」
「おれに謝るな!」

ぎりぎりと怒りを研ぎ澄ましても、ある意味鈍い彼らはまったく頓着しない。
どころかゾロに背を向けるとさっさと歩き出す。

「やっぱさ、これは世間には内緒にしといた方がいいよな。ウソップが言ってた。伝説は美しいままがいいって。だからゾロの壊滅的で魂に刻まれた本能の曲がってる方向音痴は、おれたちだけの秘密だぞチョッパー」
「うん、判った。最強の剣豪に憧れてる奴も多いもんな。ゾロの壊滅的で魂に刻まれた本能の曲がってる方向音痴はおれたちだけの秘密だ!おれ、頑張って駄目を治す薬を作るからな、ゾロ!」
「だから、おれはそんな薬いらねぇ!!」

世界最強と名高い剣豪ゾロに向かい、言いたい放題の海賊王とその船医に向かい全力で叫ぶ。
しかしながらその顔は怒りだけではない思いで紅潮し、普段の迫力は僅かに削がれていた。
そしてそんな彼に向かう二人の視線は善意に満ちて生暖かい。

「大丈夫だ、ゾロ。海賊王の名に掛けて、絶対に秘密は守る」
「そうだぞ。おれも海賊王の船医の名に掛けて、絶対に薬を作ってやるからな!」
「だから、余計なお世話だっつってんだろ!!」

糠に釘、暖簾に腕押し。
親切心ゆえの大きなおせっかいに、世界最強と名高い剣豪も、白旗を振らないで居るのはとても難しかった。

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