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【3日目】


獄寺はとても幸せだった。
いつもはつり上がり気味の切れ長の瞳をこれ以上ないくらいに垂れさせ、盛大に表情を崩しながら器用にボールをかき混ぜる。
ちゃっちゃっちゃっちゃとリズム良く混ぜる獄寺の足元には、オレンジ色に天空ライオンのアップリケがついた手作りエプロンをして必死に彼を真似る子供がいた。
大人サイズのものでは遣りにくかろうと、もてる伝を駆使して手に入れた子供用クッキングの手が切れない包丁や小さいサイズのボールに泡だて器。
頬や頭に生クリームをつける彼の、何と可愛らしいことか。
必死に手を動かしているのにほとんどの中身が床に零れ落ち、角が立つ気配が全くないのにきゅんきゅんしてしまう。
残り僅かになった生クリームを見て、獄寺は笑顔でそれを継ぎ足した。
ちなみに彼は賽の河原的発想はなく、あくまで好意のつもりである。
誰かその場に理性的な第三者がいたなら、一生クリーム出来ねぇよと突っ込んだだろうが、普段は回転が良すぎる脳を持つはずの彼にはその考えは全くない。
彼はただ、可愛らしい子供を長く見詰めていたいだけなのだから。
固まらない生クリームを長時間混ぜ続ける子供は、確かに人間ではないだろう。
だがそれは獄寺にとって些細な話だった。
自分が泡立てていた生地をケーキの型に流し込むと、空気を抜き予め余熱で温めてあったオーブンに手早く入れる。
そして一息ついてから彼自慢のエプロンに汚れがないのを確認し、そっとそれを外して丁寧に畳んだ。

「ウーノさん、いらっしゃい」
「・・・うん」

気がつけば全身生クリームだらけになった子供に向かい腕を広げれば、こくりと頷いた彼はボールと泡だて器を持ったまま近づいた。
他の誰であろうとこの格好で近づけば果たしているが、目の前の彼と彼のオリジナルは例外だ。
固まっていない生クリームと同様に蕩けた表情の獄寺は、自身のブランド物のTシャツが汚れるのも気にせずに子供の体を拭う。
ちなみにその際床の汚れは放置だ。
簡易キッチンのあるこの部屋は、獄寺ではなく山本のものだった。
獄寺の部屋は十代目グッズを置く隠し部屋を拡大しすぎて十分なスペースがなくなったため、もう何年も前にキッチンは取り去ってあった。
そして山本の部屋を利用するもう一つの利点は、片づけをしなくていいことだ。
唯一作れるチーズケーキを激しく料理した後、彼は一切片付けはしない。
現在も手際よくクリームを混ぜ型に流し込んだ手つきと裏腹に、彼自身の顔やキッチンの惨状は凄まじかったりする。
しかしながら本人はその惨状に慣れたものなので全く気にしない。
そして部屋の惨状も全く気にしない。

大人しく顔を拭かれる子供に胸をときめかせた獄寺は、ついに辛抱堪らず腕に掻き抱く。
全身からクリームの香がしたが、それがまた彼を煽った。

「ウーノさん、汚れちゃったから俺と一緒にお風呂に入りましょうね」
「・・・うん」
「それで風呂から上がったら二人で十代目のところに行きましょう。俺の十代目は、冷えたケーキも好きだけれど温かいのも好きなんです」
「わかった、隼人」

こくり、と頷く彼を抱き上げると、自室へ向かうべく早足で進む。
一見ごく普通の好青年に見える彼の脳裏は、綱吉とウーノのハーレムで一杯だった。
今日も彼はとても幸せだ。

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