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■新八→神楽
「お前が残れ、神楽」
低い声に、眉がピクリと動いた。月光の下、自分の腹心を従えた男は隻眼の目をきらめかした。鮮やかな輝きは、悪戯をたくらむ子供のようで、けれど口元に浮かぶ笑みは、狡猾な大人のもの。
「じゃじゃ馬、お前があいつらの相手をするんだ」
囁かれた声は楽しそうだ。
「・・・晋助様」
高杉の横で、また子がおずおずと声をかけた。だが、ひと睨みで体を硬直させる。その様を見て、神楽は口を開いた。
「わかったアル」
酷く静かな同意に、彼女の意思は見つけられない。
彼女は、一人で立っていた。雨が降っていないのに。陽がさしている訳でもないのに。青い、傘を片手で差して。
逆光でどんな表情をしているのかは見えないけれど、雰囲気は最後に会った時と何も変わらない。
「──神楽」
悲痛な声で、銀髪の男が呟いた。その声は、新八の心と同じだ。刀を持つ手が震える。万事屋の仕事で、こんな所で彼女と鉢合わせると思っていなかった。
いや。
心のどこかでは知っていたのかもしれない。震える新八の肩を、隣にいた桂が叩いた。緊張が和らぐ訳ではなかったが、それでも少し落ち着いた。
「久しぶりアルな、銀ちゃん、新八。後、ついでにヅラ」
「ヅラではない。桂だ」
「どっちでもいいアルヨ、そんな些細な事」
「些細な事と言うなァ!これは、オレと言う存在を表す──」
「ハイハイー、ワカッタヨー」
「片言の言葉で流すなァァァァ!」
無表情に、桂が怒鳴る。憤る方向は相変わらず斜め上にかっとんでいて、まるで、昔に戻ったみたいだと錯覚しそうになる。3人で、毎日を過ごしていたあの頃に。
やる気のない、でもここぞと言う時には決める銀時に。口が達者で手も足もすぐにでる、でも顔だけは可愛い神楽。突っ込み役で、いつも右往左往していた新八。離れるなんて、想像していなかった。いや。していなかった訳ではない。いつか、3人ともばらばらになる事はわかっていた。けどそれは、神楽はエイリアンハンターになって、自分は道場を建て直して、銀時は──彼はきっと変わらず今のままで。離れても、関係は変わらないと思っていた。向かい合い、真剣を持って立ち向かうなど考えてもいなかった。
「まあ、お前の呼び名なんて私にはどうでもいいアル」
「酷い事を言うなァァァァ!」
叫んだ桂を完璧に無視した神楽は、傘を閉じると三人に向けた。桃色の髪は、一つで結い上げられて見慣れぬ髪型に目を瞬かせる。いつもは二つにして、その上に飾りをしていたはずなのに一つで纏め上げているだけで、覚えていた神楽は大人びて見えた。
まるで、知らない人のようだ。考え、ぶんぶんと頭を振った。
(違う。目の前にいるのは、神楽ちゃんだ。大食いで、口が悪くて、綺麗な目をしていて──そして、時々凄く寂しそうな目をしていた女の子)
そして、そんな目をした少女に笑ってもらいたくて、美味しいご飯を作ったり酢昆布を買ってあげたり。神楽が寂しそうな時は放っておけなくて、色々と手を尽くしたのに最後に美味しいところを銀髪に持っていかれたり。
それでも、神楽が笑ってくれれば、それで嬉しかった。
(なのにっ)
現状はどうだろう。笑ってもらいたかった少女に、刀を向けている。真剣を構えるのは初めてじゃないのに、切っ先は定まらずカタカタと揺れた。だが、そんな新八の葛藤など露知らず、神楽は傘を構える。そこには一分の隙も見当たらず、少女の本気が見えていた。
身に纏うのは赤ではなく、黒のチャイナドレス。赤の刺繍で花が刺繍されたそれは可愛らしいものではなく、艶やかで居てどこか毒々しい。枯れゆく直前なのか、花びらが下を向いている。神楽の趣味ではないだろう。直感で思った。だが、それは今の彼女に良く似合う。
「私、銀ちゃんたちをここで止めなければならないアル。三人まとめて掛かってくるヨロシ」
無表情に綺麗な青い目を向けた少女に、最初に気を取り直したのは桂だった。構える姿は様になり、歴戦の戦士というところだろう。
「ふん。今度はそう簡単にやられんぞ、リーダー」
「私も、今度は加減をしないアルよ、ヅラ」
「だから、私は桂だ」
そして、目を瞬かせると銀時と新八を見る。感情のうつらない瞳は酷く空虚だ。
「・・・銀ちゃんも、新八も構えるヨロシ。じゃないと、一瞬で吹っ飛ぶ羽目になるヨ?」
「──神楽、本気か?」
「当たり前ヨ。私は、いつでも本気アル」
「わかった」
ゆっくりと銀時が腰に手をやる。彼が持っているのも、木刀ではなく真剣だ。最近になって、近藤に渡されたものだ。いらないと渋る彼に、近藤はそれでも無理やりに刀を渡した。
『お前に何かあったら、お妙さんが悲しむ』
その言葉に、渋々と銀時は刀を手にした。きっと、頼み込む近藤の目が、本気だったからだろう。
「新八は、どうするネ?構えるなら、さっさとしろヨ」
「・・・・・」
先程から、刀は手にしている。抜き身のそれは、鈍く輝き、自分には重すぎた。震える手では、持ち上げ、彼女に向かい構えることは出来ない。それを見て取ったのか、神楽は肩を竦めると。
「行くアル」
一気に桂へと距離を詰めた。速い。すばらしいスピードは、目で追うのがやっとだ。アレが、神楽の実力。辛うじて刀で受けた桂にあわせ、銀時が神楽の背後から刀を振るった。それをすれすれで避ける。チャイナドレスの一部が切れ、暗闇に紛れた。だがそれを視線だけで見送った神楽はニンマリと笑う。
「ヅラ。お前、まだ怪我が治ってないアルな」
その言葉に、目を瞬かせた。桂が怪我をしたなんて話は聞いていない。無表情に体を動かす桂に、悪いところなんて見当たらなかった。動きは滑らかで健康体の新八よりも余程鋭い。
「その状態で、私に喧嘩を売った事だけは誉めてやるアル」
楽しそうに言いながら、神楽は傘を構えると軽快な音を響かせ発砲した。銀時と桂は一瞬足を止める。そしてその瞬間を狙い、銀時の背後を取った。慌てて振り返り、刀を構えた銀時に神楽はそっと囁いた。
「──また、私を斬るアルか?」
その言葉に、銀時の動きが止まる。凍りついたように、と言うのはまさしくこういうのをさすのだろう。冷や汗を流し、目を見開いて神楽を見つめる銀時ににこりと微笑むと神楽は遠慮なく傘を一閃させた。
「ぐはっ」
呻き声とともに、銀時の体は吹っ飛んだ。──新八に向け、一直線に。
「ええ!?マジィィィィ!?」
驚きながらも、刀を捨て銀時を受け止めるために構える。衝撃は一瞬だ。銀時の下敷きになり共に吹っ飛ぶ。勢いが止まった所で体を起こすと、桂の陰が倒れていくところだった。スローモーションのような出来事に、桂の名を叫ぶ。
「・・・弱いアルな。この前の方がまだましネ」
桂を吹き飛ばした傘を開き、神楽はクルクルとまわした。その仕草は無邪気で幼げ。覚えている頃と何も変わらないのに。
「新八」
名を呼ばれ、体を竦ませる。勝てるわけがないと、本能が叫んだ。だが、神楽は攻撃する様子もなく新八の方に向く。
「──早く、病院に連れて行くヨロシ」
一言呟き、その場から去った。新八は、結局最後までその場から動く事が出来なかった。
「──ちゃんと、やってきたか神楽?」
「・・・私を誰だと思ってるネ?」
「そうか。・・・折角、ここまで来るかと思って待ってたのによ」
そう呟いた高杉の背後には、攘夷志士が並んでいた。数にすると100人を超えているだろうか。それぞれが武器を構え狡猾な笑みを浮かべている。
「私が銀ちゃんたちをこんな所に来させるわけがないアル」
「ふうん?オレは来てもよかったぜ?銀時たちが強いって言っても、ここまでそろえりゃ始末できるしな」
「──お前、黙るヨロシ」
鋭く目を光らせると、神楽は傘を高杉に向けた。怒りを宿した瞳に、益々面白そうに高杉は頬を緩ませる。
「銀ちゃんたちに手を出すなら、お前でも許さないアル。・・・お前にやられるくらいなら、私がじきじきに手を下すネ」
「それで、あいつらに嫌われても?」
「もとより、覚悟の上アル」
「ふん・・・」
神楽の言葉に、高杉は鼻を鳴らした。
「次は、オレが出る。──嫌なら、見張ってる事だな」
「言われなくても、そうするネ」
殺気を隠さない神楽に、上機嫌に晋助は笑った。
「お前が残れ、神楽」
低い声に、眉がピクリと動いた。月光の下、自分の腹心を従えた男は隻眼の目をきらめかした。鮮やかな輝きは、悪戯をたくらむ子供のようで、けれど口元に浮かぶ笑みは、狡猾な大人のもの。
「じゃじゃ馬、お前があいつらの相手をするんだ」
囁かれた声は楽しそうだ。
「・・・晋助様」
高杉の横で、また子がおずおずと声をかけた。だが、ひと睨みで体を硬直させる。その様を見て、神楽は口を開いた。
「わかったアル」
酷く静かな同意に、彼女の意思は見つけられない。
彼女は、一人で立っていた。雨が降っていないのに。陽がさしている訳でもないのに。青い、傘を片手で差して。
逆光でどんな表情をしているのかは見えないけれど、雰囲気は最後に会った時と何も変わらない。
「──神楽」
悲痛な声で、銀髪の男が呟いた。その声は、新八の心と同じだ。刀を持つ手が震える。万事屋の仕事で、こんな所で彼女と鉢合わせると思っていなかった。
いや。
心のどこかでは知っていたのかもしれない。震える新八の肩を、隣にいた桂が叩いた。緊張が和らぐ訳ではなかったが、それでも少し落ち着いた。
「久しぶりアルな、銀ちゃん、新八。後、ついでにヅラ」
「ヅラではない。桂だ」
「どっちでもいいアルヨ、そんな些細な事」
「些細な事と言うなァ!これは、オレと言う存在を表す──」
「ハイハイー、ワカッタヨー」
「片言の言葉で流すなァァァァ!」
無表情に、桂が怒鳴る。憤る方向は相変わらず斜め上にかっとんでいて、まるで、昔に戻ったみたいだと錯覚しそうになる。3人で、毎日を過ごしていたあの頃に。
やる気のない、でもここぞと言う時には決める銀時に。口が達者で手も足もすぐにでる、でも顔だけは可愛い神楽。突っ込み役で、いつも右往左往していた新八。離れるなんて、想像していなかった。いや。していなかった訳ではない。いつか、3人ともばらばらになる事はわかっていた。けどそれは、神楽はエイリアンハンターになって、自分は道場を建て直して、銀時は──彼はきっと変わらず今のままで。離れても、関係は変わらないと思っていた。向かい合い、真剣を持って立ち向かうなど考えてもいなかった。
「まあ、お前の呼び名なんて私にはどうでもいいアル」
「酷い事を言うなァァァァ!」
叫んだ桂を完璧に無視した神楽は、傘を閉じると三人に向けた。桃色の髪は、一つで結い上げられて見慣れぬ髪型に目を瞬かせる。いつもは二つにして、その上に飾りをしていたはずなのに一つで纏め上げているだけで、覚えていた神楽は大人びて見えた。
まるで、知らない人のようだ。考え、ぶんぶんと頭を振った。
(違う。目の前にいるのは、神楽ちゃんだ。大食いで、口が悪くて、綺麗な目をしていて──そして、時々凄く寂しそうな目をしていた女の子)
そして、そんな目をした少女に笑ってもらいたくて、美味しいご飯を作ったり酢昆布を買ってあげたり。神楽が寂しそうな時は放っておけなくて、色々と手を尽くしたのに最後に美味しいところを銀髪に持っていかれたり。
それでも、神楽が笑ってくれれば、それで嬉しかった。
(なのにっ)
現状はどうだろう。笑ってもらいたかった少女に、刀を向けている。真剣を構えるのは初めてじゃないのに、切っ先は定まらずカタカタと揺れた。だが、そんな新八の葛藤など露知らず、神楽は傘を構える。そこには一分の隙も見当たらず、少女の本気が見えていた。
身に纏うのは赤ではなく、黒のチャイナドレス。赤の刺繍で花が刺繍されたそれは可愛らしいものではなく、艶やかで居てどこか毒々しい。枯れゆく直前なのか、花びらが下を向いている。神楽の趣味ではないだろう。直感で思った。だが、それは今の彼女に良く似合う。
「私、銀ちゃんたちをここで止めなければならないアル。三人まとめて掛かってくるヨロシ」
無表情に綺麗な青い目を向けた少女に、最初に気を取り直したのは桂だった。構える姿は様になり、歴戦の戦士というところだろう。
「ふん。今度はそう簡単にやられんぞ、リーダー」
「私も、今度は加減をしないアルよ、ヅラ」
「だから、私は桂だ」
そして、目を瞬かせると銀時と新八を見る。感情のうつらない瞳は酷く空虚だ。
「・・・銀ちゃんも、新八も構えるヨロシ。じゃないと、一瞬で吹っ飛ぶ羽目になるヨ?」
「──神楽、本気か?」
「当たり前ヨ。私は、いつでも本気アル」
「わかった」
ゆっくりと銀時が腰に手をやる。彼が持っているのも、木刀ではなく真剣だ。最近になって、近藤に渡されたものだ。いらないと渋る彼に、近藤はそれでも無理やりに刀を渡した。
『お前に何かあったら、お妙さんが悲しむ』
その言葉に、渋々と銀時は刀を手にした。きっと、頼み込む近藤の目が、本気だったからだろう。
「新八は、どうするネ?構えるなら、さっさとしろヨ」
「・・・・・」
先程から、刀は手にしている。抜き身のそれは、鈍く輝き、自分には重すぎた。震える手では、持ち上げ、彼女に向かい構えることは出来ない。それを見て取ったのか、神楽は肩を竦めると。
「行くアル」
一気に桂へと距離を詰めた。速い。すばらしいスピードは、目で追うのがやっとだ。アレが、神楽の実力。辛うじて刀で受けた桂にあわせ、銀時が神楽の背後から刀を振るった。それをすれすれで避ける。チャイナドレスの一部が切れ、暗闇に紛れた。だがそれを視線だけで見送った神楽はニンマリと笑う。
「ヅラ。お前、まだ怪我が治ってないアルな」
その言葉に、目を瞬かせた。桂が怪我をしたなんて話は聞いていない。無表情に体を動かす桂に、悪いところなんて見当たらなかった。動きは滑らかで健康体の新八よりも余程鋭い。
「その状態で、私に喧嘩を売った事だけは誉めてやるアル」
楽しそうに言いながら、神楽は傘を構えると軽快な音を響かせ発砲した。銀時と桂は一瞬足を止める。そしてその瞬間を狙い、銀時の背後を取った。慌てて振り返り、刀を構えた銀時に神楽はそっと囁いた。
「──また、私を斬るアルか?」
その言葉に、銀時の動きが止まる。凍りついたように、と言うのはまさしくこういうのをさすのだろう。冷や汗を流し、目を見開いて神楽を見つめる銀時ににこりと微笑むと神楽は遠慮なく傘を一閃させた。
「ぐはっ」
呻き声とともに、銀時の体は吹っ飛んだ。──新八に向け、一直線に。
「ええ!?マジィィィィ!?」
驚きながらも、刀を捨て銀時を受け止めるために構える。衝撃は一瞬だ。銀時の下敷きになり共に吹っ飛ぶ。勢いが止まった所で体を起こすと、桂の陰が倒れていくところだった。スローモーションのような出来事に、桂の名を叫ぶ。
「・・・弱いアルな。この前の方がまだましネ」
桂を吹き飛ばした傘を開き、神楽はクルクルとまわした。その仕草は無邪気で幼げ。覚えている頃と何も変わらないのに。
「新八」
名を呼ばれ、体を竦ませる。勝てるわけがないと、本能が叫んだ。だが、神楽は攻撃する様子もなく新八の方に向く。
「──早く、病院に連れて行くヨロシ」
一言呟き、その場から去った。新八は、結局最後までその場から動く事が出来なかった。
「──ちゃんと、やってきたか神楽?」
「・・・私を誰だと思ってるネ?」
「そうか。・・・折角、ここまで来るかと思って待ってたのによ」
そう呟いた高杉の背後には、攘夷志士が並んでいた。数にすると100人を超えているだろうか。それぞれが武器を構え狡猾な笑みを浮かべている。
「私が銀ちゃんたちをこんな所に来させるわけがないアル」
「ふうん?オレは来てもよかったぜ?銀時たちが強いって言っても、ここまでそろえりゃ始末できるしな」
「──お前、黙るヨロシ」
鋭く目を光らせると、神楽は傘を高杉に向けた。怒りを宿した瞳に、益々面白そうに高杉は頬を緩ませる。
「銀ちゃんたちに手を出すなら、お前でも許さないアル。・・・お前にやられるくらいなら、私がじきじきに手を下すネ」
「それで、あいつらに嫌われても?」
「もとより、覚悟の上アル」
「ふん・・・」
神楽の言葉に、高杉は鼻を鳴らした。
「次は、オレが出る。──嫌なら、見張ってる事だな」
「言われなくても、そうするネ」
殺気を隠さない神楽に、上機嫌に晋助は笑った。
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