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「あ」
「え?」
唐突に声を上げた友人に、みよは目を瞬かせる。
何か面白いものでも見つけたのだろうか。
悪戯っぽい笑みを浮かべた冬姫は、ちょっと行って来るとみよに声を掛け走り出した。
廊下を走るなど学年主任に見つかれば注意される内容だが、タイミングよく彼はいない。
突拍子なく何をするのかと見物していれば、間もなく彼女の目的が何か判った。
「───桜井琥一」
自分の持つ頭の中の情報ノートを捲らなくとも誰か判る有名人物だ。
むしろ桜井兄弟と言えばこの学校で知らない人物の方が少ないだろう。
物騒な噂が付きまとい本人達もそれを否定しない。
それでも弟の方は朗らかな性格で男女ともに人気が高いが、今見つけた兄はそうではなかった筈だ。
一体何をするのだろうと最近出来たばかりの友人の動向を見守っていれば。
「とう!」
「おわ!!?」
気の抜ける掛け声と同時に飛び上がった冬姫のチョップが脳天に決まり、突然の衝撃に琥一は呆気なくバランスを崩した。
まさか学校内で、それも廊下の真ん中で強襲を受けると思っていなかっただろうに、彼は無様にこけることなく何とか耐えた。
そして殺気立った眼差しでギロリと振り返り自分の視線の先に何もないのに気づくと一つため息を吐き視線を下げた。
(───あぶない)
桜井琥一は危険な人。
何故唐突に友人が彼に攻撃を仕掛けたのか判らないが、彼は無邪気な悪戯を笑って流すタイプではない。
むしろ見知らぬ人間にいきなりあれをやられたら余程心が広い人物でも眉を顰めるだろう。
心が広くない人物であれば、言わずもがなである。
出来たばかりの友人を想い、恐怖に震える体を動かす。
頭の何処かが違和感を訴えたがそれを強引にねじ伏せた。
「バン・・・」
「おい、お前」
「っ!?」
琥一の手が冬姫の頭を掴む。
そのまま握りつぶされてしまうのではないかと身を硬くした時、みよの想像外のことが起こった。
「いきなり何しやがるんだ!」
「きゃー!」
悲鳴が上がる。
いや、それは悲鳴というより、奇声に近いかもしれない。
親に漸く構ってもらった子供が喜びで上げる声に近く、まさかと思いながら目を瞬かせた。
よくよく見てみれば琥一の掌は冬姫の頭を握っているのではなく、置いてあるだけで、わしゃわしゃと乱暴に振られる手の動きにあわせ華奢な少女の首は揺れているが痛めつけようとするものではなかった。
くしゃくしゃになる髪を押さえた冬姫の表情は見えないが、雰囲気はとても親しげで柔らかくすらある。
一体何が起こっているか判らない。
それはみよだけでなく、廊下で光景を眺めていた他の見物人にも共通する想いだろう。
「もう!酷いよ、琥一君!髪がぐしゃぐしゃ!」
「くくくっ・・・この俺にチョップしてこれだけで済んだんだ。ありがたく思え」
「レディーに対してする態度じゃないよ」
「そもそもチョップ自体がレディーのすることじゃねぇ」
テンポ良く繰り出される会話は、彼らの親密度を言外に語っている。
片や見た目も麗しく成績優秀な冬姫。
片や見た目は強面、近所の不良からも恐れられる琥一。
どうみても彼らに共通点はないのに、周りの視線すら気にしないでじゃれあう姿は仲の良い兄妹のようだ。
「んで、何か用だったのか?」
「あ、そうだ。さっきね、琉夏君からの伝言を受けたの」
「何て」
「今日の晩御飯、ホットケーキがいいって」
「───ふざけるなって伝えとけ」
「ええー」
「今日の帰り、サテンで奢るから」
「任せといて」
素早い変わり身だわ、と冬姫の単純さに内心で拍手を送る。
頷いた彼女の頭を最後にぽんぽんと撫でると、琥一は踵を返した。
「約束、忘れちゃだめだよ」
「リョーカイ」
ひらひらと手を振り去っていく琥一を見送ると、再びぱたぱたと駆け足でみよの元に戻ってきた冬姫は何もなかったようにお待たせと微笑んだ。
その笑顔はいつもと変わらず大変に魅力的であったが、今のみよにはそれ以上に魅力的なことがあった。
「ねぇ」
「ん?」
「桜井琥一とどういう関係なの?」
みよの情報ノートに新たな一ページが書き込まれるのは、もう確定していた。
「え?」
唐突に声を上げた友人に、みよは目を瞬かせる。
何か面白いものでも見つけたのだろうか。
悪戯っぽい笑みを浮かべた冬姫は、ちょっと行って来るとみよに声を掛け走り出した。
廊下を走るなど学年主任に見つかれば注意される内容だが、タイミングよく彼はいない。
突拍子なく何をするのかと見物していれば、間もなく彼女の目的が何か判った。
「───桜井琥一」
自分の持つ頭の中の情報ノートを捲らなくとも誰か判る有名人物だ。
むしろ桜井兄弟と言えばこの学校で知らない人物の方が少ないだろう。
物騒な噂が付きまとい本人達もそれを否定しない。
それでも弟の方は朗らかな性格で男女ともに人気が高いが、今見つけた兄はそうではなかった筈だ。
一体何をするのだろうと最近出来たばかりの友人の動向を見守っていれば。
「とう!」
「おわ!!?」
気の抜ける掛け声と同時に飛び上がった冬姫のチョップが脳天に決まり、突然の衝撃に琥一は呆気なくバランスを崩した。
まさか学校内で、それも廊下の真ん中で強襲を受けると思っていなかっただろうに、彼は無様にこけることなく何とか耐えた。
そして殺気立った眼差しでギロリと振り返り自分の視線の先に何もないのに気づくと一つため息を吐き視線を下げた。
(───あぶない)
桜井琥一は危険な人。
何故唐突に友人が彼に攻撃を仕掛けたのか判らないが、彼は無邪気な悪戯を笑って流すタイプではない。
むしろ見知らぬ人間にいきなりあれをやられたら余程心が広い人物でも眉を顰めるだろう。
心が広くない人物であれば、言わずもがなである。
出来たばかりの友人を想い、恐怖に震える体を動かす。
頭の何処かが違和感を訴えたがそれを強引にねじ伏せた。
「バン・・・」
「おい、お前」
「っ!?」
琥一の手が冬姫の頭を掴む。
そのまま握りつぶされてしまうのではないかと身を硬くした時、みよの想像外のことが起こった。
「いきなり何しやがるんだ!」
「きゃー!」
悲鳴が上がる。
いや、それは悲鳴というより、奇声に近いかもしれない。
親に漸く構ってもらった子供が喜びで上げる声に近く、まさかと思いながら目を瞬かせた。
よくよく見てみれば琥一の掌は冬姫の頭を握っているのではなく、置いてあるだけで、わしゃわしゃと乱暴に振られる手の動きにあわせ華奢な少女の首は揺れているが痛めつけようとするものではなかった。
くしゃくしゃになる髪を押さえた冬姫の表情は見えないが、雰囲気はとても親しげで柔らかくすらある。
一体何が起こっているか判らない。
それはみよだけでなく、廊下で光景を眺めていた他の見物人にも共通する想いだろう。
「もう!酷いよ、琥一君!髪がぐしゃぐしゃ!」
「くくくっ・・・この俺にチョップしてこれだけで済んだんだ。ありがたく思え」
「レディーに対してする態度じゃないよ」
「そもそもチョップ自体がレディーのすることじゃねぇ」
テンポ良く繰り出される会話は、彼らの親密度を言外に語っている。
片や見た目も麗しく成績優秀な冬姫。
片や見た目は強面、近所の不良からも恐れられる琥一。
どうみても彼らに共通点はないのに、周りの視線すら気にしないでじゃれあう姿は仲の良い兄妹のようだ。
「んで、何か用だったのか?」
「あ、そうだ。さっきね、琉夏君からの伝言を受けたの」
「何て」
「今日の晩御飯、ホットケーキがいいって」
「───ふざけるなって伝えとけ」
「ええー」
「今日の帰り、サテンで奢るから」
「任せといて」
素早い変わり身だわ、と冬姫の単純さに内心で拍手を送る。
頷いた彼女の頭を最後にぽんぽんと撫でると、琥一は踵を返した。
「約束、忘れちゃだめだよ」
「リョーカイ」
ひらひらと手を振り去っていく琥一を見送ると、再びぱたぱたと駆け足でみよの元に戻ってきた冬姫は何もなかったようにお待たせと微笑んだ。
その笑顔はいつもと変わらず大変に魅力的であったが、今のみよにはそれ以上に魅力的なことがあった。
「ねぇ」
「ん?」
「桜井琥一とどういう関係なの?」
みよの情報ノートに新たな一ページが書き込まれるのは、もう確定していた。
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(04/07)
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(03/30)
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(03/25)
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(03/24)
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(03/14)
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