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「よう、坊(ぼん)。何でそんなに泣いてんだ?」

泣きはらした顔を上げれば、浅黒い肌をした金髪の美青年の姿。
良く知る人の登場に、子供はぱっと顔を輝かせた。

「ちあきくん!」

嬉しくて手を伸ばせば、にっと唇を上げた彼は心得たとばかりに子供を抱き上げる。
彼の腕にすっぽりと納まった子供は、千秋の肩口に顔をつけるとぼろぼろとまた涙を零し始めた。

「どうしたんだよ、坊?お前が泣いてるのにかなでは何処に行ったんだ?」
「おかあはんはおかいもの」
「んじゃ、蓬生は?」
「おとんなんてしらん!」

ぷいっと顔を背ければ、またかよと呆れ交じりの微笑を浮かべる。
定期的に遊びに来る彼が、またかよと言うくらいに彼ら親子は下らない喧嘩を繰り返していた。
原因はいつも同じで、彼にとっての母親で父にとっての妻に当たる人物だ。
今度はどうしたと優しく促す声に、子供は勢いよく口を開いた。

「きいてよ、ちあきくん!おとんはおれとおかあはんはけっこんできひんっていうんや!おれはおかあはんとずっといっしょにいたいのに!」
「何だよ、今回はそんなんか。ま、でもいつか来ると思ってた話だな」
「ちあきくんはそんなこといわへんよね?おれとおかあはんはずっといっしょっていうてくれるよね!」

ぼろぼろと泣きながら訴える子供に暫し思案し、千秋はゆっくりと口を開いた。

「あんな、坊。母親と結婚は出来ないが、お前はずっと家族でかなでの大事な子供だ。それじゃ駄目なのか?」
「やって!おかあはんなだけやと、おとんがおかあはんをひとりじめしようとするもん!」
「───あの馬鹿、子供にこんなこと言わせるくらい独占しとるんかい」

呆れ交じりの吐息に、子供は勢いよく頷く。
その姿を見て千秋は悪戯を思いついたような顔でにっと笑った。

「それなら、俺がおとんになってやろうか?そしたら、お前もかなでも平等に可愛がってやるぞ」
「ほんま?」
「おう。かなでをお前にもちゃんと貸してやる」
「ほんまに、ほんま?」
「ほんまや。な、俺がおとんになる手伝いしてみるか?」
「───うん!!」


それがどれだけ重大な内容か気づかぬまま、子供は嬉しげにこくりと頷く。
リビングから泣いている子供を迎えに来た蓬生が、ありえない子供の発言に度肝を抜かれ、尚且つ要らぬ知恵を植えつけた千秋に怒るのはこのすぐ後。
意外に子煩悩な父親であることを、可愛がられる本人だけは未だに気づいていなかった。

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